NHK『ゲゲゲの女房』第96回

 原作者・武良布枝の故郷である島根県安来市がドラマにあやかって観光に力を入れるのは分かるが(松下奈緒レトロ美人効果…愛のマル秘スポットで夫婦円満?)、まったく縁の無い北海道石狩市の図書館が「ガロ」の特別展示を始めたという記事を北海道新聞のサイトで見つけて(「ゲゲゲの女房」で注目 人気漫画雑誌 「ガロ」創刊号から展示)、あまりに傍若無人な便乗記事っぷりに腰を抜かした当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第96回めの放送を見ましたよ。

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「来るべき時が来た」

 『テレビくん』が第6回雄玄社マンガ賞を受賞した。電話を受け取り、だんだんと実感が湧いてきて、興奮し始める茂(向井理)。しかし、布美枝(松下奈緒)は茂が拍子抜けするほど落ち着き払っている。茂の努力を考えれば受賞して当然だから驚くに値しないと言うのだ。「おめでとうございます」と深く頭を下げること以外、オーバーな表現をすることは一切なかった。

 一方で、関係者の歓喜ぶりは異常であった。茂の両親(風間杜夫、竹下景子)は電話を受け取るやいなや、受話器を放り投げて万歳を唱えた。酒屋を営む布美枝の父(大杉漣)は最高級の酒を贈ろうとするが、茂は下戸であると妻にたしなめられて困惑つつ(古手川祐子)、婿の大成功と布美枝の幸せを心から喜ぶのだった。茂の良き理解者の一人、戌井(梶原善)は吉報を妻(馬渕英俚可)に伝えようとするが、感極まってしまい言葉が出ず、泣き出してしまう。村井家と同じか、それ以上に貧しい戌井家であったが、妻はウィスキーを奮発して祝杯をあげようと提案するのだった。

 仕事部屋の戸棚の中には、相変わらず貧乏神(片桐仁)がいた。しかし、貧乏神は身体が小さくなり、弱りきっていた。茂に見つけられると、慌てて家の外に逃げ出してしまった。そして、ぽんと消えてなくなった。
 ついに、貧乏神を打ち倒した。

 昭和40年12月。
 茂は10年ぶりに背広を新調することができた。悪戦苦闘しながら、布美枝が初めて茂のネクタイを結んでやった。嫁入り前、片腕の茂のためにと教えてもらったこと(第18回)がやっと役に立つ時が来たのだ。授賞式に向かう茂の姿を惚れぼれと眺めながら送り出すと、今夜のご馳走作りを始めた。

 受賞会場では、戌井、深沢(村上弘明)、その秘書・加納(桜田聖子)、浦木(杉浦太陽)、そして雄玄者の豊川(眞島秀和)ら、茂の関係者が初めて一同に会した。加納に惚れている浦木は深沢に嫉妬心を抱くが、胡散臭い風貌の彼は誰からも相手にされないのだった。

 茂の受賞スピーチは、堂々としていて誰が聞いても非の打ち所のないものだった。式典の後、取材陣に囲まれたが、豊川が全てを引き受け、連載中の『墓場の鬼太郎』を巧妙に宣伝してくれた。その後も、バーなどに連れまわされる茂であった。

 なかなか帰ってこない茂を、家でじっと待つ布美枝。そろそろ待つのを諦めようかとした時、茂が帰ってきた。連れていかれた先は酒ばかりで食べ物がなく腹ペコだといって、布美枝の料理を喜んで食べ始める。野菜でカサを増した餃子やふかし芋など、貧乏時代と変わらないメニューをむしろ喜ぶ茂。
 食事を済ませると、茂は慢心することなく、早速次の原稿にとりかかるのだった。

 仕事部屋の襖を見つめながら、布美枝は過去のことを思い返していた。先行きの不安を抱えながらも、命を削るように熱心に漫画を描いていた茂の姿を思い出す。一人でうれし涙を流す布美枝。茂の前では強がっていたが、もちろんこれ以上に嬉しいことはなかったのだ。

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NHK『ゲゲゲの女房』第95回

 万城目学(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞; 今年の直木賞にもノミネートされたが受賞は逃した)のエッセイ集『ザ・万歩計』を読んでいて、「万歩計」は山佐時計計器株式会社の登録商標だと知った(普通名詞は「歩数計」)当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第95回めの放送を見ましたよ。

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「来るべき時が来た」

 茂(向井理)の『墓場の鬼太郎』は、月一読み切り連載として8月と9月に「週刊少年ランド」に掲載された。しかし、2回とも読者アンケートで最下位となってしまった。浦木(杉浦太陽)は絶体絶命の危機だと騒ぎ立て、子ども受けのする安易な路線変更を提案する。
 そこへ、「ゼタ」を出版する嵐星社の秘書・加納(桜田聖子)が激励に訪れ、個性を貫けという深沢社長(村上弘明)の言葉を伝えた。浦木は、美人で聡明な加納に一目惚れした。

 「週間少年ランド」の編集会議は紛糾していた。市場2位でトップを狙っている時期にあり、茂の漫画のように雑誌の足を引っ張る不人気漫画は即座に打ち切るべきだという意見が大勢だった。しかし、若き編集長である豊川は、茂の漫画に運命を託すつもりであった。常識を打ち破る斬新な紙面づくりをしなくては、トップを獲得するのは難しいと考えるからだ。もちろん、茂の漫画の真価を見ぬいてのことだ。彼は編集長権限で、「墓場の鬼太郎」の週刊連載化を決めてしまった。

 そのことをまだ知らない茂は、自分の進むべき道を迷い始めてしまった。しかし、自分が良いと思う作品を作るしかないと自身を奮い立たせ、原稿にとりかかるのだった。

 月刊連載の3回目が発表された直後、豊川が茂を訪ねた。彼は読者からの手紙を携えていた。束を見た瞬間、貸本時代に苦情の手紙を大量に受け取った記憶がよみがえり、落胆する茂だった。しかし、その予想に反して、手紙はいずれも好意的なものだった。熱烈なファンの付いた漫画は大成すると信じる豊川は、それらの手紙を根拠に茂も大ヒットすると確信している。
 豊川は「墓場の鬼太郎」を週刊連載化すると伝えた。週刊化にあたっては、読者の興味を次回に引っ張る仕掛けが必要だが、茂は紙芝居作家時代の経験が活かすことができると胸をはる。砂かけばばあや一反木綿、ねずみ男など、仲間となる妖怪の構想を披露し、鬼太郎が仲間と力をあわせて大きな戦いに巻き込まれていくというストーリーを展開することに決まった。

 昭和40年11月。
 茂は質屋にやって来た。無理をしてテレビを買っていったことを心配していた主人(徳井優)は、茂がとうとう食い詰めたのかと心配顔である。ところが、彼の予想に反して、茂は鼻息荒く、これまでの質札を全て叩きつける。そして、質入していた品物を全て引き上げて行った。

 ついに村井家は極貧生活を脱したのだ。
 引き上げてきた品々を広げ、感慨にふける茂と布美枝。布美枝が母から貰った着物もきれいなまま残っていた。預けた品物が早く帰ってくるようにと、布美枝が忍ばせておいたオマジナイの札もそのままだった(59回; オマジナイの意味について調べたのはこちら)。

 その時、黒電話が鳴り響いた。茂がビクビクしながら受けると、豊川からの吉報だった。「テレビくん」が今年の漫画賞を受賞することが決まったという。にわかには信じられず、呆然とする茂と布美枝であった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第94回

 昨日、当方の職場のエライ人のアリガタイお話を拝聴していたところ、「人は得意なことをやってこそ能力が発揮される。『ゲゲゲの女房』の水木しげるは、SF物の依頼を断固として引き受けなかった。その後、自分の得意なジャンルで勝負したのです」などという話が出て、「あのエライ人が見てるんだったら、社内で『ゲゲゲの女房』はオーソライズされたってことだな、俺の毎朝の作業も無駄じゃないってことだな」と勝手に解釈した当方が、「だけど、所長に当blogの存在は告げ口しないでね、お願いだから」と懇願しつつ、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第94回めの放送を見ましたよ。

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「来るべき時が来た」

 大手出版社の週刊漫画誌「少年ランド」に鬼太郎を描く事になり、茂(向井理)は編集者・豊川(眞島秀和)が帰るのを見送ろうともせず、机に向かった。
 「テレビくん」の原稿料は、口座振込みで支払われるという。弱小出版社との付き合いでは手渡しだったので、大手出版社の秩序正しいやり方に布美枝は思わず興奮してしまった。また豊川は、電話を引くよう頼んだで帰っていった。調布にある茂の家まで、毎回通って原稿依頼や打ち合わせをするのは大変なのだ。

 成功のきっかけを掴み、布美枝は有頂天になった。

 布美枝は、深沢(村上弘明)の事務所へ「ゼタ」用の原稿を届けに来た。大手雑誌の仕事が決まったことを報告すると、深沢は大喜びしてくれた。深沢は時代が変わったという手応えを感じていた。すでに漫画は子供だましの二流文化ではない。最近は、大学生も「ゼタ」を熱心に読むようになっている。そこへ、茂の作品が大手出版社を経由して広く世に伝播するのは望ましいことだと、心の底から喜んだ。

 深沢の美人秘書・加納(桜田聖子)だけは、茂の状態を面白くないと感じた。布美枝が帰ったのち、即座に深沢に不満を述べる。「墓場鬼太郎」は、以前に深沢の会社が手がけて出版していたシリーズだ。それが大手出版社に横取りされたように感じるのだ。「ゼタ」では新人賞を設けて新進作家の発掘を行っているが、自分たちが見つけた才能を金の力で大手に引きぬかれてしまう状況を招きかねないと警戒しているのだ。
 しかし、深沢はそんなことは意に介していなかった。奥深いストーリーと斬新な表現の漫画を世に出すことが自分の願いであり、それが実現するなら、自分の会社だろうと他社だろうと関係ないと言い切る度量を持っているのだ。

 通帳を記帳した布美枝は、桁違いの金が振り込まれているのを見つけて、処理間違いが起きていると思った。大手出版社の原稿料は、それほど破格だったのだ。たった32ページの原稿で、貸本1冊を丸々描いた以上の原稿料が支払われるのだから、驚くのも無理がない。
 布美枝は茂に相談して、家に電話を設置することを決めた。

 早速、豊川から原稿依頼の電話連絡が来た。鬼太郎を本誌「少年ランド」で連載することが正式に決まったのだ。

 そうこうしているうちに、「テレビくん」の掲載された雑誌が発売された。すぐに戌井(梶原善)と浦木(杉浦太陽)がやって来て、それぞれ感想を述べる。戌井ができを褒めるのに対して、浦木は冷ややかな反応を示す。古臭い絵柄でオドロオドロしい物が子供に受けるはずがないと言うのだ。この調子では鬼太郎の連載も失敗するから方向転換しろと言い出す浦木。それを聞いた戌井は怒り出し、いつの子供たちも怖いものや不思議なものを好む。それに、日本は明るく豊かな時代に変わりつつあるからこそ、その反動で暗い物語が受け入れられる余地があると主張する。
 戌井もまた、茂の漫画の大ファンなのである。自分の出版社の仕事は後回しにしても良いから、大手の連載に注力しろとまで言うのだった。

 時が流れ、鬼太郎はすでに2回分の連載が発表された。しかし、期待に反して人気はどん底であった。編集会議で茂の漫画は酷評された。編集長の豊川でさえ、編集部員たりの士気低下を抑えることはできなくなっていた。
 同社に出入している浦木は、鬼太郎が窮地に立たされているという噂を布美枝に伝えた。読者アンケートで3回連続最下位になると、連載は打ち切りになるのだ。そうでなくても、すでに2回とも人気が低迷しているので、3回目の原稿は難癖を付けられてボツになる可能性が高いと知らせるのだった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第93回

 明日の木曜日は、3週間ぶりにサラリーマンNEOの放送が行われるので、今から楽しみにしている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第93回めの放送を見ましたよ。

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「来るべき時が来た」

 茂(向井理)は、「テレビくん」の主人公の顔が奇怪すぎて、かわいらしさが足りない点が失敗だと気づいた。編集者の豊川(眞島秀和)も、摩訶不思議な世界にかわいい顔の子どもが飛び込むというギャップが、人気の契機になるだろうと賛成した。

 構想がまとまり、いよいよ原稿作成にとりかかる茂。しかし、主人公の顔がなかなか決まらない。その上、放送局の様子など、茂はテレビのことを何も知らなくて作業は難航した。

 梅雨で蒸し暑い中、懸命に描き続ける茂のために、布美枝は何か安くて精のつくものを食べさせてやろうと、町の乾物屋に相談に行く。テレビを買ってしまった直後なので、うなぎや干しアワビといった高級食料は買うわけには行かない。餃子なら、野菜でカサを増やして満腹になるし、ニンニクで精もつくとアドバイスをもらった。

 その時、町に古紙回収トラックがやって来た。そこで、あることを思いついて、井戸端会議仲間から古雑誌を大量に貰い受けた。さらに家に帰る途中には、喫茶店などめぼしいところを回って、さらに古雑誌をかき集めた。自転車のカゴと荷台に載り切らないほどに大量の古雑誌が集まった。

 夕食時、布美枝はおそるおそる茂に声をかける。テレビを知らない茂のために、雑誌からテレビに関する記事を集めておいたと言って差し出した。仕事に口出したり、自分の無知を指摘されると茂が怒鳴りだすことを知っているので、布美枝は萎縮しているのだ。
 しかし、食いしん坊の茂が目の前の大量の餃子を後回しにするほど、それらの切り抜きに熱中してしまった。すぐに、より多くの記事を集めてスクラップブックにまとめるよう命じた。その言い方は素っ気無かったが、布美枝には茂が喜んでいることがよくわかった。嬉々としてスクラップブックつくりに没頭した。

 「テレビくん」の主人公の最終スケッチも完成した。ほっぺたが丸くてかわいらしい姿に、布美枝も愉快な気持ちになった。
 そのスケッチを布美枝が一人で見ていると、何もしていないのにテレビのスイッチが入った。食料品のCMが流れる中、テレビくんが自由自在に動き回り、商品を勝手に食べ始める。驚いて見ていると、彼はテレビを飛び出して布美枝の目の前にやってくるのだった。
 そんな幻覚を見ることができるほど、テレビくんのラフスケッチは活き活きとしていて、見るもののイメージを膨らませるものだったのだ。

 梅雨の終盤。豊川が原稿を受け取りにやって来た。難しい表情で、寡黙に読み続ける豊川の横で、茂と布美枝は不安で落ち着かなかった。一通り目を通し終えると、豊川は感情をあえて抑えつけながら好評価を告げた。うやうやしく頭を下げると、原稿を受け取った。茂らがほっとしたところで、豊川は自身の感情の堰を切った。
 豊川は、テレビくんの秘密を唯一知る少年の位置づけが絶妙だという。その少年は貧乏の中で苦労しながら生きている。貧乏で苦しいからこそ夢の世界に憧れる。それを普遍的なテーマとして描きたい茂の意図を豊川は完全に理解したのだ。

 さらにその場で、豊川は次の原稿の依頼を行った。いよいよ、本誌『週刊少年ランド』へ漫画を掲載したいという。最初は読み切り16ページで始めるという。ただし、またしても条件が付いた。奇抜でインパクトのある戦闘シーンのある漫画にして欲しいというのだ。

 一瞬考えを巡らせた茂は、『墓場鬼太郎』を描きたいと答えた。豊川は手を叩いて喜んだ。彼は古くからの茂漫画のファンで、鬼太郎のこともよく知っていたのだ。茂が言い出さなくても、自分から願い出るつもりだったという。トントン拍子で話は進み始めた。

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NHKかんさい特集「天王寺ブロードウェー」に平愛梨

 映画『20世紀少年』で、ヒロイン・遠藤カンナ役に抜擢された女優・平愛梨が、NHKの単発ドラマ「天王寺ブロードウェー」で主演を務めることがわかった。
 同ドラマは、2010年7月30日(金) 20:00 より、NHKの関西地方でのみ放送される(かんさい特集)。

 天王寺ブロードウェー

大阪・下町の檀家さんに愛されて300年。由緒あるこのお寺の唯一の悩み・・・それは「跡継ぎ」がいないこと。
ブロードウェーのミュージカル・スターを夢見る一人娘・楠楓(くすのきかえで)(=・平愛梨)は、お寺を継ぐことに一切興味なし。
しかもあろうことか、アメリカからボーイフレンド・マイケル(=ジェロ)を連れてきたりする。

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NHK『ゲゲゲの女房』第92回

 つかこうへい(つかこうへんさん死去・・・早過ぎる62歳: サンスポ)といえば『蒲田行進曲』を思い出し、本ドラマでも共演する風間杜夫(ヒロインの義父役)と松坂慶子(ヒロインの良き相談相手役)が主要キャストで共演していた(「蒲田行進曲トリオも衝撃: スポニチ)ことを思い出す当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第92回めの放送を見ましたよ。

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「来るべき時が来た」

 戌井(梶原善)の貸本出版社への原稿を徹夜で仕上げ、休む間もなく茂(向井理)は大手出版社の豊川(眞島秀和)から依頼された仕事の構想を練り始めた。自由な作品を描いて良い代わりに、豊川からは「テレビよりも面白いもの」という条件が突きつけられている。ここで期待に応えられないと、二度とチャンスは与えられない。プレッシャーと無理難題を前に、茂の思考は停滞していた。

 原稿を届け終えた布美枝(松下奈緒)が帰宅すると、茂はもらってきたばかりの原稿料を渡すように言いつけた。その上、生活費のためにとっておいた現金も全て奪い取り、何も言わずに慌てて家を出て行った。

 茂が向かった先は質屋だった。有り金全てをカウンターに叩きつけ、中古の白黒テレビを購入した。蒸し暑い中、片腕の茂はテレビを一人で運ぶことはできない。そこへ偶然、茂の家に行く途中だった浦木(杉浦太陽)に出くわし、彼を使役して家までテレビを運んだ。

 ただ働きさせられた浦木は機嫌が悪い。一度断ったのに、大手出版社が二度目の依頼をしてきたのは、彼らの腹いせではないかと勝手な想像をまくし立てる。無理難題を押し付けることで茂を苦しめ、その挙句、原稿をボツにして仕返しをするつもりなのだと言うのだ。自分は広告代理店を始め、その会社にも出入しているからよくわかるという。あまりにやかましいので家から追い出されたが、浦木は心の底から半信半疑なのであった。

 茂は、テレビを知るために、一歩も動くことなくテレビに見入っている。
 藍子(篠川桃音)も不思議そうにテレビを眺める。その姿を見た布美枝は、子どもはテレビの中に小さな世界があると信じているのかもしれないと、何気ない感想を行った。ふと何かが心に引っかかった茂であるが、まだ漠然としていて掴めない。

 夜遅く、家族が寝静まっても、まだ茂はテレビを見続けていた。
 CMのラーメンを見ていて、自分もあんなものが食べたいとぼんやりしていた。すると、自分がテレビの中に入り込んで、宣伝されているラーメンをうまそうに食べる幻覚が見えた。
 その瞬間、茂の頭の中で瞬く間に構想が膨らみ、「テレビくん」というタイトルの物語ができあがった。ついに腰をあげた茂は、仕事机に座り込んで、スラスラとラフスケッチを始めるのだった。

 「テレビくん」は、現実の世界とテレビの中の世界を自由に行き来することのできる子どもが主人公の物語である。テレビを経由して、どこへでも行けるし、好きなものを手に入れることができる。それが現実の世界に大騒動を巻き起こすというあらすじができあがった。茂自身、大きな手応えを感じた。

 約束の日に、豊川がやって来た。「テレビくん」の構想を見せられ、豊川はヒット間違いなしだと太鼓判を押した。子ども達の夢をそのまま写しとったかのような漫画なので、人気が出るに違いないと予測したのだ。

 しかし、どんどんと乗り気になる豊川と半比例するように、茂の顔色が徐々に曇ってきた。「テレビくん」の絵柄に納得がいかなくなってきたのだ。
 ぼんやりと藍子を眺め、彼女の丸くて愛らしい姿を見て、やっと何かがひらめいた。

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勝手に観光協会と宇都宮餃子

 ここ2年くらいの間に当方の車に乗ったことのある人ならご存知だろうが、当方の車では勝手に観光協会がヘビーローテーションである。飽きることなく、ひたすら再生され続けている。

 勝手に観光協会とは、みうらじゅん安斎肇のユニットで、呼ばれてもいないのに全国の観光地に出かけ、頼まれてもいないのにご当地キャラやポスターを作るというプロジェクトである。
 彼らの視察のクライマックスは、勝手にご当地ソングをつくり、夜更けに旅館の客室で録音するところである。全国都道府県のご当地ソングが作られており、CDで販売されている。
 そのCDが僕の車の中でエンドレスに流れているのである。

 ほぼ全ての歌を覚えてしまった。
 通信カラオケに、勝手に観光協会の歌が収録されていることも知っている。しばらくカラオケなんて行っていないが、誰かに誘われたらホイホイと付いていく。そして、頼まれもしないのに全都道府県48曲(北海道は2曲ある)を北から順番にエンドレスで歌ってしまいそうである。顰蹙を買うだろうが。

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『うなぎの丸かじり』とアメリカンドックのまるかじり

 昼に、東海林さだおの『うなぎの丸かじり』を読んでいた。
 「丸かじりシリーズ」は、20年以上も週刊朝日に連載されている食べ物エッセイである。特に、B級C級グルメが多いので嫌味がなくて、僕は大ファンなのである。

 今月文庫化された『うなぎの丸かじり』には、柿ピーを買ってきて柿の種とピーナツがそれぞれ何個ずつ入っているかこまめに数える話などが書かれている。2つに分離したピーナツはそれぞれ 0.5個とカウントし、割れてしまった柿の種も可能な限り復元(著者は「土器の復元のよう」と書いている)して数えたそうだ。出荷時の柿ピー比率は、メーカーが最適で美味しい柿の種とピーナツの比率を示していると考えられるのだ。メーカー名はイニシャルしか示されていなかったが、3社の製品を調べて結果が提示されている。・・・バカバカしい。
 バカバカしいが、柿ピーが食べたくなる。

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NHK『ゲゲゲの女房』第91回

 朝マックでホットケーキセットを頼んだらフォークがついておらず、ワンセグを見ながら慌ててレジカウンターに戻った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第91回めの放送を見ましたよ。

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「来るべき時が来た」

 梅雨の初め、豊川(眞島秀和)が再び訪ねてきた。どんなジャンルでも良い、茂(向井理)が描きたい作品を32ページ、読み切りで「別冊少年ランド」に掲載するという。その代わり、テレビよりも面白いものを描き、テレビに夢中になっている子供たちを漫画雑誌に取り戻して欲しいと注文が付いた。
 それは、豊川から茂に対する挑戦状であり、試金石でもあった。自由に作品を作れるということは、逆に言えば作家本人の真の実力が試されることである。ここで失敗してしまうと、茂に後はない。それを理解した上で、茂は引き受けることにした。5日後に構想を提案することで話がまとまった。

 茂の仕事部屋を観察した豊川は、精巧な戦艦模型や漫画資料として保管されている大量のスクラップブックに舌を巻く。さらに、茂の描きかけの原稿を見て、緻密で高密度の絵に圧倒された。それは、当時の印刷技術では再現できないほどの細かさだった。茂自身も無駄になることは理解しながらも、自分のやり方なのでやめるつもりはないと言う。

 豊川は、社内では前代未聞の若さで編集長に抜擢され、翌月からその任に就くことになっていた。とはいえ、漫画雑誌編集部は社内でも冷遇されている。自分が編集長に就任したあかつきには、雑誌を大胆に改革し、売上トップを目指すと野望を抱いている。茂の仕事ぶりを間近に見た豊川は、茂の漫画こそが新機軸の中心となる確信を得たのだった。

 布美枝(松下奈緒)は、戌井(梶原善)の貸本出版社へ原稿を届けるついでに、茂に与えられたチャンスの報告をした。自分のことのように喜ぶ戌井であったが、一方で楽観できないことも告げた。豊川からの依頼が茂に与えられた試練であることに布美枝は気付いていなかったのだ。戌井にそのことを説明され、急に不安になる布美枝であった。

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ビッグイシュー・クエスト

ビッグイシュー日本版 146号 ホームレスの自立支援を目的とした雑誌に「ビッグイシュー日本版」がある。大都市にお住まいの人なら、街角にポツンと立った人が有名人の顔写真が表紙になった雑誌を売っているのを見たことがあると思う。
 ホームレス販売員は、1冊 140円で雑誌を仕入れる。それを定価300円で販売し、利ざやの160円を全て自分のものにすることができる。ホームレスの人に対して一方的な施しをするのではなく、彼ら自身が働いて利益を得ることで自立を助けようという目的のもとに発行されている。

 この雑誌は書店では売られていない。書店で売ると、ホームレスが得るはずの利益が失われてしまうからだ。編集部は、定期購読をきっぱりと断るほどスジを通している。全国主要都市の路上販売所でしか手に入らない。僕も定期的に読みたいと思っているのだが、近所(奈良市内)では販売されていないので叶わない。たまに京都や大阪に出かけ、気づいたときに買うという程度である。そんな感じで、細々と応援していた。

 先日、ビッグイシュー日本代表・佐野章二の回顧録「ビッグイシューの挑戦」が出版されたと知った。講談社から出版され、通常の本屋や amazon.co.jp でも買える。しかし、雑誌と同様にホームレスの路上販売員から買うことも可能だと知った(朝日の書評)。利益はちゃんと販売員の取り分になるという。ならば、彼らから買おうと思い、大阪市内に出かけてきた。

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