NHK『カーネーション』第132回

糸子が初めて心斎橋百貨店へ出かけたのが第25回(月曜)で、制服の納品が終わったのが第29回(金曜)であったというスピーディーでワクワクした展開だったのが懐かしい一方で、今週月曜にあほぼん吉岡が登場し、今日すでに金曜になってしまった事実と照らし合わせると、なんだかいろいろ本当にがっかりするよなぁと思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第132回目の放送を見ましたよ。

* * *

第23週「まどわせないで」

あれだけ糸子(夏木マリ)に怒鳴られたにも関わらず、またしても吉岡(茂山逸平)と河瀬(川岡大次郎)がやって来た。糸子はこれで最後という気持ちで、話だけは聞いてやることにした。

吉岡は「オハライトコ・プロジェクト」というプレタポルテ(高級既製服)計画を携えてきた。吉岡が大量に誤発注した高級生地を使って、糸子がデザインした洋服を中高年女性向けに販売しようというのだ。吉岡は自分の顧客への売り込みを担当するという。吉岡は呉服屋なので、ツテは全て和服関連である。けれども、和服を買い求める客だからこそ、目の肥えた女性が多く、きっと成功するに違いないと力説した。

話を聞いた糸子は少し態度を軟化させた。けれども、すぐに結論は出せないといって、今日のところはふたりを帰した。糸子の本心としては、既製服は作りたくないのだ。糸子は生涯オーダーメイドだけをやっていきたいと思っている。しかし、あほの吉岡が一生懸命考えてきたアイディアを無駄にするのも不憫だと思い、悩むのだった。

その矢先、澄子(三林京子)が車椅子の母(新海なつ)を連れて来店した。病気で太ったことを気にして、採寸を嫌がる母親である。糸子は約束通り巻尺を使わず、目測だけで採寸を終えた。最初は嫌がっていた母親も、帰る頃には機嫌を良くなった。糸子は、洋服を通じて彼女を喜ばせることができて嬉しかった。
そして、自分がやりたい事は、やはりオーダーメイドであるという思いを強くした。吉岡を救いたい気持ちとの板挟みが一層強くなった。

クリスマス・イブの日、服装こそジャージのままだったが、里香(小島藤子)はお下げ髪にしてどこかへ出かけた。
夜遅くになって、小さなケーキの箱を持って帰宅した。中には小さなケーキが1つだけ入っていた。里香からのプレゼントに喜ぶ糸子だったが、ケーキが1つしかない事を不審に思った。里香に尋ねると、自分はもう食べてきたからいらないのだという。

実は里香は、神山(榎田貴斗)とデート(デート?デートなのか!?)をしてきたのだ。不良少女と喧嘩していた里香を救ったのが神山であり、それから彼は何かと里香に声をかけるようになった。クリスマス・イブも誘われ、まんざらでもない里香はそれに応じたのだ。

里香からの初めてのプレゼントに感激した糸子は、親しい人々の写真立ての前にケーキを飾り、彼らに報告と感謝をした。
いよいよ食べようとした矢先、オートバイに乗った不良少女達が店の前に集まった。オートバイの爆音をあげ、店のショーケースを破壊した。最後には「東京へ帰れ!」という罵声を浴びせて去っていった。

神山に恋をしている不良少女(足立悠美加)がいるのだ。里香が神山と親しくしていることへの報復であった。

驚いた糸子は、一口も食べないうちにケーキを落として壊してしまった。しかし、それを丁寧に集めて皿に盛り、食べ始めた。里香はそれを止めたが、糸子は応じなかった。
逆に糸子は、里香に向かって決断の時であると宣告した。東京へ帰るか、ジャージを脱ぐか決めろと言うのだった。

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第131回

今朝は5時過ぎに目が覚め、眠り直そうにも眠れなかったので、とりとめのない考え事を始めたら「自分が政治家になったとしたらどんなタイプだろう?」というテーマについて考察することとなり、「小賢しい要領の良さと特異なキャラクターでちゃっかり入閣を果たすが、大臣就任3日目くらいに舌禍事件で失脚する」という結論に達し、自分で自分をそう評価していることに悲しくなり、ますます目が冴えて眠れなくなってしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第131回目の放送を見ましたよ。

* * *

第23週「まどわせないで」

誤って100反もの布地を仕入れてしまった呉服屋のドラ息子・吉岡(茂山逸平)が、友人の河瀬譲(川岡大次郎)を伴って再びやって来た。糸子(夏木マリ)が戦時中に河瀬の曽祖父を助けた時のエピソードをよく研究して、自分で解決策を見つけろと言われたからだ。

糸子が河瀬の曽祖父を助けたのは、彼は元来まっとうな商売人であったのだが、戦争という不可抗力で大量の在庫を抱えてしまったからだ。また、当時は今ほど洋服が売れる時代でもなかったので、知恵を絞るやりがいもあった。それに対して、吉岡はいい加減なお坊ちゃまだ。ほんの思いつきで反物の買い付けに出かけ、自分のミスで大量の在庫を抱えた。その上、現代は豊かな時代で、特に工夫をしなくても物が売れる。そんな恵まれた状況であるにもかかわらず、糸子に頼ろうとする吉岡の態度が気に入らなかった。

吉岡は、自分のアイディアだと言って、紫と朱色の反物を自慢げに取り出した。元々白かった布を染めたのだという。しかし、染めた後にどうするか全く考えておらず、またしても糸子に頼ろうとした。それが糸子の逆鱗に触れ、ふたりはほうほうの体で逃げ出してしまった。

街で不良少女と喧嘩をし、負けて怪我をして帰ってきた里香(小島藤子)はそのまま塞ぎ込んでしまった。部屋に閉じこもって寝てばかりいる。泣いたり悔しがったりすれば良いのだが、一切口を開こうとしないことが糸子には心配だった。
里香の母親である優子(新山千春)には知らせることができないと思った糸子は、直子(川崎亜沙美)に電話で相談した。負けん気が強く、粗野で豪快な性格の直子は、放っておけばよいと取り合わなかった。しかし、そう言われても糸子はどうしても放っておく気にはなれなかった。

ちょうど、吉岡が珍しい金箔入りのカステラを持ってきていたので、糸子はそれを持って里香の部屋を覗いた。伏せてばかりいる里香であったが、勧められるままにカステラを一口かじった。相変わらず塞ぎこんだままであったが、糸子は里香の心が少し緩んだことを見て取った。
そこで、自分一人で我慢しなくて良いのだと優しく諭した。痛いことや辛いことがあったら、人に話せばいいのだ、黙っていてはいけないと語った。それでもなお里香は黙ったままであったが、涙が一筋流れた。変化の兆しだった。

その夜、里香の部屋の窓に紙飛行機がぶつけられた。喧嘩していた里香を助けてくれた神山(榎田貴斗)が夜遊びの誘いに来たのだ。しかし、朝早くから祖母の手伝いをしなくてはならないと言って、里香はそれを断った。神山はそれ以上何も言わず去っていった。
翌朝、ついに部屋を出た里香は、朝食の支度を手伝った。相変わらずほとんど何もしゃべらな里香であったが、糸子は里香の変化を感じ取った。

糸子は自宅で食事会を開いた。妻に先立たれた男たちを集めて、定期的にこのような食事会を開いているのだ。男は一人で食事をすべきではないというのが糸子の持論だからだ。
そして糸子は、男やもめの食事会を開く度に周防のことを思い出していた。妻に先立たれて長崎に帰ってしまった周防が今も生きているかどうかはわからない。しかし、もし生きているなら、彼にもこういった楽しい場所があればいいのにと願わずにはいられなかった。

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第130回

今後、辰巳琢郎江波杏子が出演予定(どんな役柄かはリンク先を参照)だという情報をキャッチした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第130回目の放送を見ましたよ。

* * *

第23週「まどわせないで」

呉服屋の若旦那・吉岡(茂山逸平)が糸子(夏木マリ)に泣きついた。彼は父を見返してやろうと思い、中国まで買い付けに行ったという。そして、首尾よく上等で珍しい布地を見つけたので、1反だけ仕入れて、小物を作って販売するつもりだった。ところが、吉岡が言うには、相手が聞き間違えて100反も売りつけられたという。おかげで父にはこっぴどく叱られ、全て売りさばかないと勘当されてしまうという。そこで、糸子の知恵を借りたいというのだ。
糸子は吉岡に協力するのをきっぱりと断った。糸子が戦時中に金糸入り生地を大量に売りさばいた時のことを河瀬譲(川岡大次郎)からよく聞いて、それを参考に自分で対策を考えろと言いつけて追い返してしまった。

清川澄子(三林京子)が店にやってきた。澄子は、母の喜寿のお祝いのためにドレスを作ることを計画している。昔からおしゃれ好きだった母なのできっと喜ぶに違いないと思っていたのだ。しかし、母が頑なにドレスはいらないと言い出したという。
その話を聞いて、糸子は採寸を嫌がっているのだろうと見抜いた。澄子の母を昔から知っている糸子は、彼女の体型の変化も知っていた。昔はスラっと痩せていたのに、病気を患ってから急激に太ってしまった。女はただでさえ自分の体のサイズを測られるのが嫌なのに、太ってしまったらなおさらだと言うのだ。50年も仕事をしている自分に任せておけば、巻尺で体を測らずとも、見ただけでぴったりとしたドレスを作ることができると言い、母を連れてくるように言って帰した。

里香(小島藤子)のことが心配な優子(新山千春)からは、早く東京に帰してくれとしつこく電話がかかってくる。里香の人生にとって大事な時期なので、いつまでも学校を休ませておく訳にはいかないというのだ。それに、優子には里香が不良になる理由がさっぱりわからないと愚痴をこぼした。親の愛情が足りないと子供がグレるという話はよく聞くが、自分はちゃんと愛情を注いでいるという。優子自身は糸子から愛情のある子育てをされたとは思っていない。そんな自分ですら不良にならなかったのに、どうして里香が反抗的なのか理解出来ないというのだ。
糸子は優子の話をほとんど聞き流した。そして、あまり性急に更生させる必要もないと主張した。本人の心境に変化が表れるまでほうっておくのが一番だと言って電話を切った。

それでも、糸子は里香を完全に放任していたわけではなかった。家や店の掃除など、簡単な手伝いをさせた。
古い人々の写真を拭いている時、里香は泰蔵(須賀貴匡)の写真に目を留めた。彼が、里香の不良仲間の先輩に似ているというのだ。糸子は、どんな男よりも泰蔵の方がカッコいいと言い返した。生前の泰蔵はだんじりの大工方をこなす男の中の男であり、子供たちにも優しかったと言うのだ。そんな泰蔵が戦死したと聞いて、里香は少し複雑な気持ちになった。

里香は化粧こそ派手だが、ジャージ以外の服は着ようとしない。糸子は里香がジャージを着続けるうちは、ガミガミ言っても仕方がないと思っている。彼女が違う服を着るのを黙って待っている。
たとえ言葉がなくても、着る物はその人の言いたいことを表している。ジャージを着ているということは、「気安く話しかけないでほしい」というサインだ。だから糸子は深入りしないようにしている。

一方で、ジャージを着ることは、「自分は不良だ」、「ケンカはいつでも買う」ということを周囲に言いふらしていることになる。そのため、岸和田のスケバンたちと3対1の喧嘩になり、ボロボロに負けてしまった。通りすがりの男子高校生・神山(榎田貴斗)に背負われて帰ってきた。
神山は「警察が来た!」と叫んだという。そうすると、優勢な方が逃げていくことを知っていたのだ。糸子は神山の賢い機転を褒めると共に、里香を助けてくれたことに感謝した。

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第129回

週刊アスキー2011年12月20日号の大槻ケンヂみうらじゅんの対談の中で(これに先立つふたりの対談はwebで読める。大笑い必至)、仕事場にやって来た編集者の前で原稿を書くことを「実演!」などと表していたのだが、それと同じように、泊まりがけでやってきた静岡県の宿が相部屋なので、本まとめ記事(のメモを取る様子)も同宿の人の前で実演せざるを得なかった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第129回目の放送を見ましたよ。

* * *

第23週「まどわせないで」

東京で直子(川崎亜沙美)のファッションショーが行われる。糸子(夏木マリ)は身の回りの世話係と称して里香(小島藤子)を連れていくことにした。
里香は優子(新山千春)の次女だが、東京での生活に嫌気がして、数日前から糸子のところに転がりこできたのだ。里香は、どさくさに紛れて優子のところへ送り返されるのではないかと警戒した。しかし、糸子はそんなことはしないという。その代わり、夜ふかしばかりして、日中はダラダラしている里香に腹を立て、ごはん分くらいは働けと言うのだった。

しぶしぶながら、里香は東京について来た。直子の華やかなファッションショーの舞台裏に案内してもらっても、ふてくされて隅の方に佇んでいるだけだった。けれども、いざファッションショーが始まると、仏頂面ではあったが、興味を示してモニタ画面を見つめた。

直子のファッションショーは大成功だった。直子だけではなく、多くの売れっ子デザイナーが群雄割拠する時代となった。デザイナーズ・ブランドの洋服がブームとなり、若者たちの間で大人気だ。糸子は、日本中の人々がお洒落を楽しめる時代になったことを感慨深く思う。

しかし、これだけ自由におしゃれができる時代なのに、里香はどういうわけか毎日ジャージ姿だ。直子のファッションショーに顔を出すにあたっても、普段着のジャージでやってきた。糸子には里香の気持ちがわからなかった。
一方、直子はそんな里香を見て愉快になった。自分が初めて東京に出てきた時に学校の制服ばかり着ていてバカにされていたことを引き合いに出しつつ、ジャージを着続けるつもりなら意地を通せと応援するのだった。

糸子と里香は、東京に3日間滞在した。糸子は里香を優子に引き合わせない代わりに、里香を毎日あちこち連れ出した。夜ふかしできないほど観光したおかげで、里香の生活リズムは昼型に戻った。岸和田に帰ると、ピタリと夜ふかしをやめてしまった。

最近、オハラ洋装店では洋服だけではなく、和服の勉強会を開いたりもしている。
その勉強会へ、生地問屋の跡取り息子の河瀬譲(川岡大次郎)が顔を出した。彼の一家と糸子には長い付き合いがある。戦争中、金糸入り布地の使用が禁じられた。金糸入り生地を大量に抱えて困っていた河瀬の曽祖父を助けたのが糸子だった(第52回)。その時の縁が今でも続いているのだ。
河瀬譲は、友人で京都の呉服屋の若旦那・吉岡(茂山逸平)を連れてきた。しかし、糸子にはどっちも頼りないドラ息子に見え、できえれば付き合いたくないと思うのだった。挨拶もほどほどに相手にしなかった。

後日、吉岡が一人でオハラ洋装店にやって来た。初対面で冷たくされたのにも関わらずやって来る度胸と懲りない態度を面白がり、糸子は少しだけ話を聞くことにした。吉岡は糸子に反物を見せた。白地に白糸で刺繍された生地は美しく、糸子は一目で気に入ってしまった。
その様子を見るやいなや、吉岡は床に土下座を始めた。間違えて100反も仕入れてしまったので、助けて欲しいというのだ。戦時中に金糸入り生地100反を引き受けた時のことを思い出し、糸子は呆れてしまった。

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第128回

今夜は泊まりがけの出張で某オジサンと相部屋であり、明日のまとめ記事はどうしようかなぁと思いつつ、おずおずと事情を説明したらその人から「あ、ボクも毎日見てるよ。明日の朝は一緒に見よう!」と言われてしまい、すっかり朝のまとめ仕事の段取りがついて安心した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第128回目の放送を見ましたよ。

* * *

第23週「まどわせないで」

1985年(昭和60年)10月。
糸子(夏木マリ)は72歳になっていた。オハラ洋装店や住居は改装されてすっかり現代風になったが、今でも岸和田の商店街に住んで商売をしている。
糸子は歳をとり、親しい人々のほとんどに先立たれた。彼らが死んだからといって、落ち込んだり、付き合い方が変わるのは避けたいと常々思っている。家の片隅に友人たちの写真を飾り、彼らが生きていた時と同じように語りかける。たとえ返事がなくても、それが糸子の日課だ。

糸子や店が年月を重ねたのと同じように、オハラ洋装店にやってくる客も老人ばかりになった。彼女らは年に1-2度しか服を作らないが、だからこそ1回あたりを豊かで気持ちのいい時間にしたいと願っている。気心の知れた従業員をふたり(竹内都子小笹将継)だけ雇って、ゆったりと商売をしている。

店がのんびりしているからといって、糸子の生活がスローになったかというとそうではない。むしろ、店以外のことで忙殺されていた。それぞれ独立した娘たちが、いまだにあれやこれやと糸子を頼ってくるのだ。頻繁に電話がかかってきて、糸子はその対応に忙しい。

ロンドンに渡った聡子(安田美沙子)は10年前に現地で自分のブランドを興した。それが成功し、今でもロンドンで暮らしている。糸子は聡子から電話がかかってくるたびに肝を冷やすが、なにぶん遠くに住んでいるので手も足も出ない。だからかえってあきらめも付く。

直子(川崎亜沙美)は7年前にパリコレで成功を収め、今や世界中を飛び回る売れっ子デザイナーになっている。けれども、細々とした事務作業を自分で片付けることができず、いまでも糸子を頼ってくる。電話がかかってくるたびに、糸子は呆れつつも面倒を見てやる。

一番頻繁に電話をかけてくるのは優子(新山千春)だ。
彼女のブランド「ユウコオハラ」は、全国に30店舗を展開するほどの一流ブランドになった。社長兼デザイナーの優子はとにかく忙しい毎日だ。ビジネス上の付き合いのパーティーにもたくさん呼ばれるのだが、その全てに出席することはできない。そこで、糸子に代理を頼むことがしばしばだ。

さらに、優子は次女・里香(小島藤子)のことに頭を悩ませている。
15歳になった里香は、夜な夜な家を抜けだしては悪い友だちと付き合っているようだ。苦労して入学させたミッションスクールにもほとんど通わなくなってしまった。
もっと悪いことに、里香は東京の家を出て、ぷいと岸和田に来てしまった。2日前から糸子の家に寝泊まりしている。里香にきちんと教育を受けさせたいと思っている優子は、説得して東京に送り返すよう糸子に頼んだ。しかし、糸子は賑やかになっただの、子供は歩いて話ができれば上出来だなどといって、のん気に構えている。

優子は、里香が夜遊びしないように気をつけてくれというが、夜はぐっすり眠っている糸子には注意のしようがなかった。実際、昨日の夜も里香は派手な格好で夜遊びし、明け方に帰宅したのだが糸子は何も気づいていなかった。
ただし、糸子も里香の姿を見てまともでないことは理解していなかった。けれども、岸和田の空気やだんじりに触れれば、自然と更生すると気長に考えていた。

糸子は、昔とはすっかり様変わりしてしまった商店街を歩いた。昔はあんなに元気に走りまわった道なのに、今はゆっくりとしか歩けない。
それでも、だんじりの速さだけは今も昔も変わらない。そのことが嬉しくもあり、切なくもあった。

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第127回

週明け5日(月)は本まとめ記事の更新が遅れる予定だが、その理由は当方が早朝から移動するためであり、ヒロインが尾野真千子から夏木マリに交代することへのボイコットではないことを先に明言しておく当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第127回目の放送を見ましたよ。

* * *

第22週「悔いなき青春」

1973年(昭和48年)9月14日。だんじり祭の日。
だんじり祭りがテレビで取り上げられたことで、全国からの観光客が殺到した。岸和田は未だかつてない混雑と賑わいになった。その熱気に取り込まれ、小原家も朝から大忙しだった。次々と新旧の親しい人々が訪れ、日の高いうちから宴会が始まった。
客への対応に大忙しの糸子(尾野真千子)であったが、少しも苦にならないどころか、人が集まることをとても喜び、楽しんだ。往来に面した2階の窓から、いつもと同じようにだんじりが行くのを見物し、大きな声援を送った。

ところが、ふと気づくと千代(麻生祐未)の姿が消えていた。近頃、特に痴呆のひどくなった千代のことが心配になり、糸子らは慌てて近所を探しまわった。程なく、松田(六角精児)が見つけて無事に連れ帰ってきた。
千代は、善作(小林薫)の姿が見えないと言って探しに行ったのだという。家に大勢の客が来ているのに、善作がいないと困ると言うのだ。千代は善作が死んだことすらわからなくなっていたのだ。糸子は怒鳴りながら善作が死んだことを思い出させようとするが、松田によればそれは逆効果だという。善作は近所に挨拶に行っただけだからすぐに帰ってくるなどと話を合わせた。やっと落ち着いた千代は、おとなしく家に戻った。

日が沈み、糸子は北村(ほっしゃん。)とふたり、2階で酒を飲んだ。
その場で、糸子は東京行きを断った。
北村は、糸子が周防(綾野剛)の住む長崎に行くつもりなのではないかと疑ったが、糸子はそれをきっぱり否定した。

糸子は、自分の生きる場所は岸和田のこの家だと考えていた。極楽も地獄も、全て往来に面したこの窓から見てきた。自分の宝物は全てこの家にあるのだという。
北村は食ってかかった。自分達は随分と歳をとった。これから先は、多くのものを失っていく。親しい人々も次々に死んでいく。岸和田に留まることは、そういった喪失感を一人で耐えていくことにほかならない。それがどんなに辛いことかを話し、なんとか糸子を説得しようと試みた。
しかし、糸子の考えは変わらなかった。むしろ、弱気な北村のことを笑い飛ばすのだった。

糸子には、北村の言う喪失感を理解することができなかった。人が死んだからといって、自分は何も失わないし、変わらない。この地で自分の宝物を抱えて生きていくつもりだと言い切った。

1階に降りると、溢れんばかりの人々が集まって宴会の真っ最中だった。誰もが笑顔で楽しそうだった。
静かに座っていた千代は、人垣の向こうにやっと善作を見つけた。善作は賑やかな人の輪から一歩引いて、静かに盃を傾けていた。くいっと酒を煽ると、ニヤリと笑った。
千代が慌てて横に座ると、善作は空になった盃を差し出した。千代は徳利を持つ手の形を作り、何も持たないまま酒を注いだ。善作は美味そうにその酒を飲んだ。千代は善作の飲みっぷりを嬉しそうに眺めた。

夜がふけ、客も引き上げた後、糸子は善作に買ってもらったミシンを愛おしく撫でた。そして、2階の窓から静かになった夜の街をいつまでも眺め続けた。

1985年(昭和60年)10月。
優子の次女・里香(小島藤子)が朝帰りした。里香はまっすぐに祖母の部屋に入ると、声をかけて起こした。
72歳になり、歳をとったとはいえ、糸子(夏木マリ)はまだまだ元気だった。ぱっと目を覚ますと、自分でさっさと布団をあげてしまった

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第126回

昨日は、少なくとも山瀬まみよりは胸が大きいと見積もられている女性と一緒に静岡でエビをたっぷりご馳走になり、二次会ではビールやラムを飲んでぐでぐでになったわけだが、いくら飲み過ぎと寝不足でしんどくても「カーネーション見にゃならんから起きろ」という声と共に朝の始まる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第126回目の放送を見ましたよ。

* * *

第22週「悔いなき青春」

1973年(昭和48年)3月。
聡子(安田美沙子)は、家族や近所の親しい人々に見送られてロンドンへ旅立って行った。

糸子(尾野真千子)は空港まで聡子を見送った帰りに、心斎橋の優子(新山千春)を訪ねた。優子は、聡子が姉たちよりも先に海外へ飛び出して行ったことをしきりに感心していた。

糸子は、優子の東京行きや離婚することについて穏やかに訪ねた。優子は静かにそれらを肯定した。糸子は、そんな大事な事を北村から聞かされるまで親に黙っていたこと注意した。心配を掛けたくなかったという優子に対して、子の心配することが親の仕事だと言って再び注意した。

優子は、糸子も一緒に東京へ行くよう誘った。東京は経済や文化の中心であり、アパレル業界で成功しようと思ったら東京に拠点を置く必要があるというのが優子の考えだ。優子は自分の店の本店を東京に構え、全国に支店を展開する計画だという。5年以内に50店舗を作り、売上を30倍にしてみせるという。

熱心に語る優子であったが、糸子には少しも面白いと思えるところがなかった。東京行きが気に入らないのではなく、自分が本当にやりたい事が何なのかを見失いかけていたのだ。岸和田で仕事を続けることと、東京に進出することのうち、どちらがより面白いのか全く判断できなくなっていた。

その夜、八重子(田丸麻紀)が訪ねてきて、珍しく糸子と酒を飲んだ。八重子は自分の美容院を閉じることを決めたという。近頃では立ち仕事が辛くなってきたし、子供にも心配されているという。これまで働き詰めの生活だったので、「働かない」という新しい生活を始めるのにも労力が必要だと思われる。それだけの力が残っているうちに店をやめるというのが八重子の決断だった。

一方で、八重子は糸子のことを応援した。今や、オハラ洋装店は岸和田一の名店なのだから、長く店を続けて欲しいというのだ。
糸子は、北村(ほっしゃん。)や優子に東京行きを誘われていることを話した。店をたたむとなると、昌子(玄覺悠子)らの仕事もなくなってしまう。それを気兼ねする心境もあった。
台所で聞き耳を立てていた昌子は、自分達のことは気にする必要はないと言って糸子を後押しした。悪い話ではないし、糸子の自由にするのが何よりだというのが昌子の正直な気持ちだった。

糸子は自分の迷える胸のうちを話だした。
糸子はアパレル業界が戦争ゲームのようになっているのが気に入らないのだ。戦争と同じように周りは敵ばかりで、敵に負けないように頭がのぼせておかしな事を信じたりやったりする。最新モードを追いかけるばかりで、去年の流行服が今年は誰からも顧みられなくなる。そういったことは、糸子には少しも面白い思えないというのだ。

糸子は、自分に洋裁を教えてくれた根岸(財前直見)の言葉(第23回)を引用した。
「本当に良い服は、人に品格と誇りを与えてくれる。人は品格と誇りを持って、初めて希望が持てる。」
ところが、自分はその言葉を忘れかけていた。流行の服は一時的に希望を与えてくれるかもしれないが、すぐに別の服がその希望を奪い去ってしまう。そんなイタチごっこのようなことに自分も加担してきたと反省するのだった。

糸子の弱音を聞いて、珍しく八重子が怒り出した。彼女は何も言わずに突然立ち上がると、あっけにとられる糸子らを無視し、ぷいっと大股で家に帰ってしまった。

10分後、八重子が小走りで戻ってきた。そして、風呂敷包みを糸子に差し出した。
中には、安岡美容室の新装開店の際に糸子が作った制服(第86回)が入っていた。それと一緒に、玉枝(濱田マリ)や奈津(栗山千明)と一緒に撮った写真も収められていた。

安岡美容室の改装直前、安岡一家はどん底の状態だった。けれども、糸子が作ってくれた制服のおかげで八重子らは希望と誇りを取り戻した。黄ばんだ制服を指し、それのおかげで生きてくることができたと言って八重子は涙を流した。

糸子は昔の自分にひっぱたかれたような衝撃を受けた。

* * *

続きを読む

NHK『カーネーション』第125回

今日は逆旧ドリカム状態(現代風に、もしくは厚木に住む者として言うならば逆いきものがかり状態の方がしっくりくる)でデート(デート?デートなのか!?)をする予定であり、自分はなんと果報者なのだろうかと思えば、「尾野真千子、高橋一生と同棲…2年前から交際」(サンスポ)という記事を読んだところで少しも堪えることはない、ていうか、山瀬まみだって中上雅巳と3年近く同棲をしていた(しかも、全く報道されなかった)のだから今さら何が起きても驚かない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第125回目の放送を見ましたよ。

* * *

第22週「悔いなき青春」

大晦日に、聡子(安田美沙子)が家族の前でロンドンへ行くことを宣言した。糸子(尾野真千子)はすぐにそれを許可した。優子(新山千春)と直子(川崎亜沙美)に責め立てられ、小さく縮こまっている聡子のことがかわいそうで仕方がなかったのだ。
思ってもいないのに、つい勢いでロンドン行きを許可してしまったというのが本音だった。

年が明けて、1973年(昭和48年)1月。
糸子はすぐに昌子(玄覺悠子)と松田(六角精児)に報告した。年末までは聡子に店を譲ることで話がまとまっていたのに、急に反故になってしまったことにふたりは驚いた。
聡子までいなくなったらオハラ洋装店の跡取りが完全になくなる。店をどうするつもりかと聞かれ、糸子は自分が最後まで店を続けると話した。そして、自分の手で店をたたむ覚悟であることを告げた。
みんなの前では強がっている糸子だったが、自分の店が一代限りでなくなってしまうことは心苦しかった。

繊維商業組合の三浦組合長(近藤正臣)にも事の次第を報告に向かった。新年の挨拶もそこそこに、跡取りが無くなったことを話そうとするのだが、三浦は気もそぞろでまともに聞いてくれない。

なんと、つい数分前まで、事務所に周防(綾野剛)がいたのだという。周防は岸和田を去る挨拶に来ていたのだという。子供は全員独立し、妻にも先立たれた。一人ぼっちになった周防は、生まれ故郷の長崎に帰りたくなったのだという。長崎の田舎に一軒家を買い、畑をやりながらゆっくりと暮らすつもりなのだという。
その話を聞いているうちに、糸子は泣き出してしまった。周防の心境を思いやると悲しくて仕方がなかった。家族と離れ、歳をとってから見ず知らずの人間関係の中で、新しい生活を一人で組み立てることの寂しさを思うといたたまれない気持ちになったのだ。三浦は、人のいい周防のことだからきっとうまくやれる、むしろ近所のおばさんたちがおせっかいを焼きに来るだろうと軽口を言うのだが、糸子はさめざめと泣き続けるのだった。

北村(ほっしゃん。)は聡子に会って、彼女のロンドン行きについて詳しく話を聞いた。何かと頼りない聡子が一人で異国に行って暮らしていけるのだろうかと心配でならないのだ。けれども、聡子は全てを楽観的に捉えていた。あてはないけれどロンドンに行き、まずは語学学校に通いながら仕事を見つけるのだという。犬がどこでも暮らしていけるのと同じように、自分も大丈夫だなどと子供じみたことまで言い出す始末だった。北村はもうそれ以上何も言えなくなってしまった。

北村は話題を変えて、糸子の好きな花を聡子に尋ねた。

早速、赤いカーネーションをたくさん持って、北村は糸子に会いに来た。家族が寝静まった後、北村と糸子はゆっくりと静かに酒を飲み交わした。北村の様子がいつもと違うことに気づいた糸子は、話をするよう促した。

北村は優子の話を始めた。
優子の心斎橋出店については北村が融資した。融資の際、北村は冗談半分で、優子が成功したら独占契約を結びたいと言っていた。実際に優子の店は太繁盛し、その時の約束を優子が履行したのだ。北村と優子は東京に進出することを決めたという。

娘のことながら、その話は糸子には初耳だった。暮れに優子が帰省した時も何も言っていなかった。
優子が東京に行くと知って、糸子は優子の家族の事が心配になった。優子の夫(内田滋)は大阪で働いているはずだし、どうするのかと思った。そういえば、暮れに夫が顔を出さなかったことも思い出した。
北村によれば、優子の夫婦仲は冷え切っているという。優子本人は、離婚したがっているという。

そこまで話を聞いて、糸子は北村が花を持って話に来た訳を理解した。優子と北村が不倫をしており、その報告と謝罪に来たのだろうと思った。ふたりは大阪から逃げるように東京へ行きたがっているのだ。

もちろん、それは糸子の早合点だ。
北村は冷静に不倫を否定した。むしろ、小さな頃から知っている優子と男女関係になるなど考えられないと怒った。言われてみれば確かにその通りで、糸子も自分の勘違いがおかしくて吹き出してしまった。

北村は居住まいをただした。そして、自分と一緒に東京へ行くことを提案した。それは、北村なりの求婚の一環だった。けれども、勘の悪い糸子は、何をしに行くのか、旅行か?などと的はずれな反応しか示さなかった。

はっきりと本心を伝えられない北村は、東京の新会社の副社長になって欲しいとしか言えなかった。糸子は渋った。どうしても一緒に上京したい北村は、即座に社長就任でも良いという条件を出した。
糸子は完全に仕事の話だと思い込んでいる。北村の申し出に感謝しつつも、考える時間が欲しいと答えるのだった。

* * *

続きを読む

NHK『スタジオパークからこんにちは』 ゲスト尾野真千子

NHK『カーネーション』第124回

関東地方は未明から降雪に見舞われ、車の運転は危険だし、バスを利用して交通混雑に加担する必要もあるまいという判断、さらに、出社しなければできない作業もない(雪を見越して昨日のうちに片付けた)ので会社を休ませてもらうことにしたわけであり、本日13:05からのNHK『スタジオパークからこんにちは』のゲストが尾野真千子であることは単なる偶然であり、それを見るために休むのではないと言い訳する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第124回目の放送を見ましたよ。

* * *

第22週「悔いなき青春」

余命半年と宣告された玉枝(濱田マリ)であったが、結局それから1年8ヶ月も生き長らえた。その間、玉枝は死ぬことが怖くないと言い続けた。早くに亡くした夫や、戦争で亡くした二人の息子(須賀貴匡尾上寛之)があの世で待っていてくれると思えば、何も恐れることはないというのだ。自分の死を自然に受け入れることができて、むしろ入院前よりも元気になったほどだった。同じように夫(小林薫)を亡くしている千代(麻生祐未)は、玉枝に強く同意した。

対して糸子(尾野真千子)は、彼女らの言っていることの真意が理解できなかった。けれども、老婆たちが達者なことは嬉しくて、頼もしいことだった。
しかし、1972年(昭和47年)9月のある朝、ついに玉枝はこの世を去った。八重子(田丸麻紀)は、介護から解放された安堵と、実の親以上に付き合いの長かった玉枝の死去に放心状態になってしまった。駆けつけた糸子は、八重子をねぎらうように何も言わずに肩を抱いた。

その年の冬頃には、聡子(安田美沙子)は周りからも認められるほどの実力者になっていた。糸子の下で働くのと並行して、優子(新山千春)や直子(川崎亜沙美)の店へも頻繁に手伝いに行っていた。今でも主な仕事は姉の店の売れ残りを岸和田で売るというものだったが、多くの経験を積むことでデザインや経営のノウハウも蓄積していた。

聡子本人は相変わらずのん気な態度で仕事をしていたが、昌子(玄覺悠子)や松田(六角精児)によれば、周囲の適切な手助けさえあれば、もう店を任せても安心だという。その意見を受け入れ、いよいよ糸子も聡子に店を譲ることを決めた。

年の瀬になり、糸子は聡子に代替わりのことを切り出した。大仰に言い過ぎると失敗すると考えた糸子は、ふたりでクリスマスケーキを食べている時に、何でもない風にさり気なく話し始めた。すると、聡子はケーキに夢中なままで生返事しかしない。不安になった糸子は、もう一度はっきりと聡子に意思の確認をした。それでもやはり暖簾に腕押しであった。けれども、それはいつもの聡子の態度であり、役割さえ与えてやれば立派に全うするのが聡子の性分なので、あまり気にしないことにした。
聡子が代替わりを承諾したものと見なし、年明けから聡子を店主とすることで準備を進めていった。

大晦日に優子と直子が帰省した。糸子は家族が全員揃ったところで、改めて聡子へ店を譲ることを発表した。上の姉たちはその考えに大賛成だった。しかし、聡子は紅白歌合戦に熱中していて、話に加わろうとしなかった。

そして突然、聡子は素っ頓狂なことを言い出した。ロンドンに行くつもりだというのだ。身寄りのない土地で、誰に頼ることもなく、一から自分の好きなことをやりたいという。それには家族一同驚いた。

いつも反対のことばかり言う優子と直子も珍しく意見が一致した。英語もできない聡子がロンドンで生活できるはずがない、ただでさえ頼りない聡子が異国で一人で暮らしていけるわけがないなどと猛反対した。姉たちの売れ残りを売るのが不満なら、それはもうやらせない。岸和田で自分の好きなようにデザインした服を売ればよいと言いくるめようとした。

しかし、聡子の決意は固かった。
厳しい表情で成り行きを見守っていた糸子は、一言恫喝して優子と直子を黙らせた。そして、聡子のロンドン行きを認めた。厳しい表情を崩すことなく、好きにすればいいと聡子に告げるのだった。

* * *

続きを読む