ポタリング: 自転車で散歩する意

吉田戦車の『吉田自転車』を読んでいて知ったのだが、「ポタリング(pottering)」という言葉があるらしい。

goo辞書の記述にによれば:

〔potter・putter(ぶらつくなどの意)から〕
自転車で散歩すること。目的地を定めたり走行計画を立てたりすることなく,気分や体調に合わせて気の向くままに走ることをいう。

とはいえ、某知人夫婦も使っている「ちゃりんぽ」という表現がかわゆくて好きなのだが。

『これも経済学だ!』中島隆信

日常的で身近な例をミクロ経済学の視点(特に、インセンティブの概念を強調する)から説明する本が、近頃たくさんでいているし、僕もたくさん読んだ。
『ヤバい経済学』だの、『まっとうな経済学』だの、『こんなに使える経済学』だの。

最近、中島隆信の『これも経済学だ!』というのを見つけた。
「どんだけ雨後の筍なんだろう。柳の下にはそんなにたくさんのドジョウがいるだろうか。ていうか、もう食傷気味じゃね?」
などと思いつつ、まぁとりあえず、比較検討の意味でも読んでみることにした。

ところが、最初のネガティブな印象とは裏腹に、読んでみたらフツーに面白い。

取り上げられている “日常的で身近な例” は主に3つの分野。
1. 伝統文化 (大相撲、将棋、落語などなど)
2. 宗教 (檀家制度と新興宗教の適応戦略の違いなど)
3. 弱者救済 (特に、身体障害者)

基本的な視点は、競争市場と独占市場との対比で世の中を見る視点。

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『あしながおじさん』(谷川俊太郎訳)

有名な『あしながおじさん』をはじめて読んだ。
こりゃ面白い。

小中学校の女子が読む、子供向けおとぎ話だろうと勝手に思い込んでいた自分を叱りたい。
抑圧された社会に生きていた少女が、女性の権利も尊重すべきだという近代社会の中で自我を形成し自立していく物語だと思って読めば、そのテーマは現代でも通じる(通じるってことは、今の世の中が女性にとって理想的ではないということなのだが)。
もしくは、そんなに小難しいことを考えなくても、少女のカワユいプチ・ロマンスものとして、ホンワカと読める。

この作品のスタイルも特徴的で面白い。
主人公の女の子が、あしながおじさんに書いた手紙という形式になっている。大学入学から卒業までの、およそ4年間にわたる手紙によって全てのストーリーが語られている。

そもそも、主人公が手紙を書くことになった理由は、あしながおじさんにそう言われたからだ。
孤児院で育った主人公は、とある篤志家に文章の才能を認められる。そこで、その篤志家は、学費を全て負担して彼女を大学に行かせることにする。ただし、奨学金の条件として、主人公は篤志家に対して、毎月の様子を手紙で報告する必要がある。
その手紙が、小説『あしながおじさん』そのものになっているというわけだ。

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やらなくてもいいチャレンジ: セックスはなぜ楽しいか

ジャレド・ダイアモンドの『セックスはなぜ楽しいか』という本がある。
ヒトの性行動の謎について、進化生物学の観点から至極マジメにアプローチする本。
マジメなんだけれど、随所にジョークが散りばめていて退屈しない文章。
翻訳もこなれていて、すごく読みやすい。

翻訳は、長谷川寿一
あるとき、僕は長谷川先生の集中講義を受けていたのだが、彼はこの本についてこんなことを言っていた。
この本は “長谷川のピンク本” と呼ばれています。私は、自分で書いた本は全て親にプレゼントしているのですが・・・、さすがにこの本だけは躊躇しました

翻訳者本人が揶揄するこの本。もう何年も前に入手していたのだが、そのタイトルのどぎつさに僕もなんとなく敬遠していた。中身がマトモなことはわかっていたのだけれど。

ほとんどの生物は繁殖期にしか交尾しないのに、なんで人間は年がら年中セックスしたがるのか。
ほとんどの生物は死ぬまで子供を生むことができるのに、なんで人間の女性は閉経してしまうのか。
ほとんどの哺乳類のオスは乳腺や乳首を持っていて、条件さえそろえば授乳することができるはず(ヒトも同様)なのに、なんでメスしか授乳しないのか。

などなど、言われて気づく、性にまつわる不思議な話の謎解きをする、楽しい本。
もっと早く読めばよかった。

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『イン・ザ・プール』 奥田英朗

松村邦洋沢尻エリカを使って連続ドラマを作れといわれたら、どうするか?

『精神科医・伊良部一郎』がぴったりではないかと思う。

第1話「イン・ザ・プール」はゲスト出演として筧俊夫を起用しよう。
主婦向け月刊誌の編集者である和夫(筧俊夫)は、原因不明の体調不良で伊良部総合病院にかかっていた。
内科の医師は様々な検査をするも、原因は分からない。
若い医師はついに、精神科での診察を勧める。

和夫は人気のない階段を下りて地階に向かう。
そこには「精神科」と書かれた古ぼけたドアがある。
おそるおそるドアをノックすると、中から
いらっしゃ~い
と甲高い声が聞こえてきた。

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どんな状況でバナナケースだよ

ならファミリーのジャスコで発見。

バナナケース (ソフト)

バナナが1本だけ入る、ソフトケース。
バナナをわざわざケースに入れて携帯したいと思う状況がよく分からない。
普通にビニール袋に入れて持ち歩いてはいけないのだろうか。
房ごと、数本持ち歩いてはいけないのだろうか。

ていうか、僕らのお父さんくらいの世代の人々が小さい頃なら、バナナがご馳走だという時代もあっただろうが、今は平成だよ。

不思議な製品もあるもんだなぁ、と他の棚も見てまわったところ・・・
#アマゾンで売られてるのもびっくりだ。

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『川井チャンのF単〈4th〉F1中継によくでる用語』 川井一仁(監修)

昨日、F1の2008年シーズンが開幕したそうで。

特にそれにちなんだわけではないが、本屋で『川井ちゃんのF単〈4th〉F1中継によくでる用語』という本を見つけて、衝動買い。

白黒印刷ではあるが、約300ページにわたって F1 用語がびっしりと説明されている(一部、写真なども付いてる)。
F1中継を見ていて分からない言葉が出てきたら、ちょっとぐぐればたいていの言葉はわかってしまう時代ではあるという指摘は正しい。
しかし、パラパラと眺めながら、「おお、そういう言葉もあるのか!」と新しい発見があるのがとても楽しい。例えば、「フライング・フィン」という言葉はwikipediaにも載っているが、本書を手にしなければそんな単語を見聞きすることもなかっただろうと思う。

用語は全部でいくつ掲載されているのか知らないが、とにかく「川井一仁」だってちゃんと出てる。
#でも、元妻が鈴木保奈美であることは書かれていない。

川井一仁 『川井ちゃんのF単』より

用語集も良いできなのだけれど、僕は巻頭カラーで紹介されているF1の裏事情が楽しかった。
デザイナーがマシンを設計するところから始まって、実車の作成や手作業でのカラーリング風景などが全てカラー写真で紹介されている。チームの年間運営費の概算だとか、スタッフの役割だとかも解説されていて、いろいろ楽しい。

あと、本書は2006年8月出版だが、この年のF1のレギュレーションブックが付録でついてた。

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有川浩『阪急電車』

近鉄電車で『阪急電車』を読む
※写真は、近鉄電車で阪急電車を読む、ヤヤコシイ木公

有川浩の『阪急電車』を読み終えた。
昨年末に井坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を読んで、「きっと今後1年で一番面白い小説だろうなぁ」と思っていたのだが、その考えが改められた。
現在の alm-ore イチオシ小説は文句なく有川浩の『阪急電車』だ。

阪急今津線という、超マイナー路線を舞台に繰り広げられる、「ちょっぴりホロリとする人情話」のオムニバス。
各駅停車の列車は、1駅ごとに乗客を入れ替え進んでいく。入れ替わる乗客たちが繰り広げる、一期一会の人情の妙。

僕だけなのかもしれんが、とにかくいちいち(一駅ごとに)泣かされる。

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『山瀬まみのおいしく暮らそっ』の目次

山瀬まみのおいしく暮らそっ

先ほど、当blogではおなじみのサービス・ドライバー “すずちゃん” (♀、推定27歳)が届けてくれました。
そして、いつものごとく、僕は油断して寝癖で毛玉だらけのスェット上下。
さらに悪いことに、上がグレーで、下が黒。色があってない。
こんな汚い格好で、我らが山瀬様の本を見てよいものかどうか思案するも、とりあえずパラパラと眺める。

前著『山瀬まみのおウチが好き。毎日が好き。』と同じ路線。
ESSEの連載をまとめたもので、料理のレシピやホームメイド雑貨の紹介など。
前著との比較で最大の特徴は、今回は料理レシピの紙幅が著しく増えている。
全体の7割り方が食い物系。確かに、タイトルもそれにあったものになっている。

前著はざっと見たところレシピはページ数にして3分の1程度。
しかも、器の話題と抱き合わせのため、情報としてはもっと少なくなる。
それに対して、今回は季節に合わせたお薦めレシピとして確固とした記事になっているし、ものによっては作り方の手順(ダシのとり方とか、コーヒーの入れ方とか)が写真で説明されていて、料理初心者にもちょっと優しい。
#なお、山瀬レシピ集なら『山瀬ごはん亭のおいしい12ケ月』をイチオシする。

その分、生活雑貨系はものすごくマイナーな扱い。

山瀬写真を見ることが最大の目的の当方にとっては、いかにカワユイ山瀬写真があるかが評価のポイント。
レシピだと料理の写真がメインになってしまい、被写体としての山瀬まみは脇に追いやられてしまう。
生活雑貨系だと、実際に使っているところの写真として、山瀬まみが大写しになる傾向にある。
そんなわけで、生活雑貨系が少ない本書、当方にとってはちょっと悲しい。ぐすん。

それでも、p.33 の写真に超萌えている僕がいる。
ノースリーブの服とホットパンツをはいて、床にだら~っと座って、簡単に分けただけの前髪をさくらんぼのヘアピンで留めてある。
そして、コップを持っておやつタイムというコンセプトの写真。

「どこの幼稚園児よ?」と突っ込みつつも、すんげぇカワユくて、5分くらい眺めている当方がいる。
眼福なり。

あと、足を骨折してギプスをはめてる写真とか、スタッフ一覧に夫の中上雅巳がいたりとかする。

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告白の手紙 (『影響力の武器』より)

親愛なるパパとママ

 大学に入学してから、ぐずぐずして全然手紙を書かずにいてごめんなさい。今日は、今まであったことをみんなお知らせしますけど、これから先はちゃんと座って読んでね。座らなくちゃ読み進んじゃ駄目よ、いい?

 さて、私はいま、とってもうまくやっています。ここに来て間もないころ、私がいる寮で火事がありました。そのとき、窓から飛び降りて、脳震盪を起こし、頭蓋骨を骨折したんだけれど、今はとても良くなっているの。病院には二週間しか入っていなかったんだけど、今は大体普通に頭が働くし、頭痛も日に一回くらいになっています。運がいいことに、寮から火が出て私が飛び降りたところを、向いのガソリンスタンドにいた人が見ていて、消防署に電話してくれたの。その彼、病院に何度か見舞いに来てくれたわ。寮が焼け落ちちゃって住むところもないから、彼の親切に甘えて、彼の部屋で一緒に生活することにしたの。その部屋、地下室なんだけど、結構気がきいてるのよ。彼は、とても素晴らしい男性。私たち、結婚するつもりでいます。まだ式の日取りは決めていないけれど、お腹があまり目立たないうちに済ませたいと思っています。

 そうなの、ママ、パパ・・・私、妊娠しているの。孫が生まれて、おじいちゃんとおばあちゃんになるの楽しみにしてくれるでしょ。きっと、私が子どものときと同じように、赤ちゃんを可愛がってくれますよね。結婚が遅れているのは、彼が伝染病をもっていたことで、結婚前の血液検査をパスしなくて、おまけに私も不注意でその病気を貰っちゃったからなの。でも、家族の一員として暖かく迎えてくれますよね。彼って優しいし、あまり学はないんだけど野心があるわ。人種も宗教も私たちと違うけど、寛大なパパとママのことだからそんなこと気にしないわよね。

 さて、と・・・今まであったこと書いてきたけど、よく聞いてね。寮の火事なんてウソ。だから脳震盪も起こしてないし骨折もしていません。入院もしていませんし、妊娠もしていません。もちろん結婚もまだだし、病気もなし。ボーイフレンドだっていません。ただね、歴史の成績が “可” で、化学は “不可” ということになりそうなの。いろんな出来事から見て、この点数がどんな意味をもっているか、よく考えてね。

愛しの娘、シャロンより

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