「墨東綺譚」永井荷風

「墨」の字は,本当は「シ墨」という字.

この文字列を始めてみたのは,中学校からの帰宅途中に電信柱に張られた映画の宣伝ポスターだったと思う.
言葉の意味は全然わかんなかったけれど,なんとなく綺麗な言葉だなぁと,子供ながらに思った.
しかし,映画は見なかった.ポスターを見ると,なんか艶かしいおねぇちゃんと古めかしいオッサンが写っており,退屈そうに思ったから.あと,裕福な中学生ではなかったので,お小遣いの使い道には慎重で,海のものとも山のものともわからない映画にお金を払う気はさらさらなかった.

高校生になった時,なんとはなしにテレビを見ていたら,オッサンと若いおねぇさんの濡れ場(懐かしい言葉だなぁ)を延々と写す映画をやっていた.
そこは,若い男の子だったし,ついつい見てしまった.^^;
確かに,エッチはエッチな映画だったんだけれど,女優さんの裸の白い肌がすごく綺麗だと思った.見ているうちに,美術館にある裸婦画を眺めているような気分になってきて,エッチな気分はどっかに置き忘れてしまった.
タイトルもわからずに見てたんだけれど,放映終了後の解説で「墨東綺譚」だと知った.
奇妙な形で,中学生の時に見たポスターの作品に再開したわけだ.

墨東綺譚大学生になった時,きっかけは忘れたけれど,映画「墨東綺譚」のことを思い出した.
あまりメジャーな作品でもないので,レンタルビデオ屋で探すのに苦労した.
なんとか発見して,レンタルしてみたんだけれど,なんだかつまんなかった.
ヒロイン,スミ子役の墨田ユキの演技はなんだかイモっぽいし.
「俺,高校生の時,何をあんなに感動してみていたんだろう?」と,ちょっと落ち込んだり.

でもって,今日調べたら,一応DVDで「墨東綺譚」は出てるみたい.

いや,映画の話をしたいんじゃなくて.^^;
本当は,「今日は,永井荷風の原作の方を読みました」って話が書きたかったわけで.
もちろん,Junk Cafe で,いつものごとく飯食いながら読んでたんだけど.

どうもこの小説は,私小説っぽいよね.
主人公にはなにやら名前がついていたけれど,どうやら永井荷風自身の体験が元になってるようで.
中年で,それなりに資産があって独り者の文筆家が,毎夜売春宿に出かけていって,そこの女性とおしゃべりして帰ってくるっつーような話.
主人公は,「隣の家のラジオがうるさくて,仕事になんねーんだよ.夜が更けて,ラジオが静まるまで時間をつぶして,その後仕事すんだよ.文句あるかよ?」ともっともらしい自己弁護をして通っているわけだけれど.
でも,要するにアンタ,なんとなく人恋しくなっちゃって,通ってたんでしょ?素直にそう言えばいいのに,と思いながら読んでた.

ちなみに,主人公が色々考え込んじゃって,数日間通うのをやめるシーンがある.
辛抱たまらなくなって,もう一回通い始めるんだけれど,その時,売春宿の女性に
「いつも来ている人が急にこなくなると,すごく心配になる」
と文句を言われちゃったりする.

今日,Junk Cafe で飯食ってた時,「俺も Junk Cafe で,そろそろこれくらいの常連になれただろうか?」とちょっと考えてみたり.

で,話は唐突に,Junk Cafe でのできごとに.
なんか,今日はいつもよりも混んでいた.入店すると,満席だったり.
どうせ本を読むつもりだったから,多少待たされても全然苦じゃなかったんだけれど,Junk Cafe ナンバーワンの女の子が接客に付いたので,どうせなら少しおしゃべりしちゃえ!と思って「うーん,ずいぶん待つの?」,「いいえ,団体さんがそろそろ出ると思いますから,わりとすぐだと思いますよ」,「どーすっかなぁ・・・(彼女の目を見る)」,「すぐですよ(にっこり)」,「待ちます」みたいな,些細かつ楽しい刹那を過ごしたり.

帰りも帰りとて,レジで支払いをしていると,わざわざ厨房からおにぃちゃんが出てきてくれて「今日は,お待たせしてすんませんでした」と言ってくれたり.
レジのおねぇちゃん(入店の時に話した女の子じゃない方.いつもお店で会う方)も「また来てくださいね(にっこり)」と言ってくれちゃったり.
僕が常連だと思ってこう言ってくれたのか,待たせたお客さんには全員に対して言っているのかは定かではないけれど,悪い気はしなかった.
Junk Cafe への高感度,激しくアップ.

川上弘美

先日まで山本文緒にお熱だった当方ですが,ここ数日は川上弘美に夢中だったり.
つーか,「生身のおねーちゃんだけじゃなく,女性作家にまで節操もなくお熱になっちゃうのね」という心の声が聞こえてきたような,こないような.

おめでとう昨日は,「おめでとう」を本屋で購入.本日読む.
「天上大風」という話が面白かった.
主人公の女性のすっとぼけぶりが,ツボにはまりまくり.こういう,世間ずれした思考パターンの人いいよね.
元夫に「別れてくれ」って言われて,まぁ,言いなりになって別れちゃうんだけれど,後々になって「『別れてくれ』の”くれ”という言い方の,命令調かつ懇願調で,しかも親愛がこもっている様に腹が立ってきた」みたいな感じで.そこなんですか?アナタが気に入らないのは?^^;
若いツバメに預金通帳とハンコを持ち逃げされて,2万数千円で給料日まで20日を過ごすことになっても「返すって言ってたから,気にしてない」みたいにノーテンキだし.

なんだか,川上弘美の書く女性って,好きだな.ほわぁんとしていて頭のネジが吹っ飛んでそうなんだけれど,根は頑固でしっかりしているようなところ.

そうそう,彼女の記述する女性が魅力的なだけではなくて,いろいろ出てくる擬態語が勉強になる,国語が苦手だった当方としては.勉強になる上,ひじょうにやわらかい感じで情景が目に浮かんでくる.
(例示しようと思ったけれど,該当箇所を探すのが面倒だからやめた)

蛇を踏むハマったついでに,今日は図書館で「蛇を踏む」を借りてきちゃいました.
今週はJunk Cafeで,コーヒーをすすりながら川上弘美を読みふける木公が観察できるかと.

『センセイの鞄』川上弘美

世の中には2つのタイプの人間しかいない.○○と××だ

カッコつけ野郎が,よく使うフレーズですな.

たとえば
世の中には2つのタイプの人間しかいない.努力するヤツと努力しないヤツだ
とか
世の中には2つのタイプの人間しかいない.女に貢がせるオトコと女に貢ぐオトコだ
とか
世の中には2つのタイプの人間しかいない.ニュータイプとオールドタイプだ.私,シャア・アズナブルは,人類の革新を信じている
などなど.

そのノリで,ちょっと唱えておこう.
世の中には2つのタイプの人間しかいない.自身に満ち溢れたヤツ自信のないヤツ

皆さん,ご自身はどちらですか?

当方,前者でございます.
最近「モテて,モテて,困っております.体が持ちません」な状態です.
今日も今日とて,東京某所で某女の子とお茶したり.お茶の席で,このせりふをぶっこいてみたり.
しかし,それに対する某女の子の返事が,
へぇ~,そうなんですか.腰がガクガクでまともに立っていられないとか,そういう状態ですか?
とのこと.
おいおい,それは,夕方のオフィス街の喫茶店で,かわいい女の子が言うせりふですか?こっちの方が恥ずかしくなってしまいました・・・.

つーか,声を大にして言うけれど,
腰なんて使ってねーし!
もし使ってたら,アナタも今頃は無事じゃすまねーっつーの!

まったく,「木公と書いて紳士と読む」と一部で噂されているような,自分で勝手に思い込んでいるような,かわいい子羊の俺様を捕まえて・・・.

つーか,ごめんなさい.
本当は,当方「自身のないヤツ」です.
正直に言うと,お茶に誘うまではいいけど,「じゃあ,しっぽりとホテルにでもしけこみますか?」と言いたくても,絶対に応じてもらえるわけがないと思ってしまい,そのせいで嫌われちゃったらいやだなぁと自信がなくて,そういうことが言えない訳で.チキン野郎なわけで.ハイ.
そんな人生です,僕の人生なんて.

それは,まぁ,どーでもよくて.
センセイの鞄今日は,川上弘美著「センセイの鞄」を読んでみました.

いきさつは,某女の子が読書感想文を書いていたからです.
「いつも,ビジネス系のおカタイお話ばっかり書いてるのに,どないしてん?つーか,そんな雰囲気のblogにわざわざ書いたくらいだから,よっぽど面白かったんだろうなぁ」
と思って,読み始めたわけです.

まぁ,なんつーか,ほんとーに色気のねー話っつーか,年増女と偏屈じじぃの恋愛話.
センセイ(じじぃの方)は,もと教え子の年増女に言い寄られるんだけれど,知らん振りをしたり,はぐらかしたり,ずーっとそんな展開.
あー,もー,じれったい!
俺が許可する,ジジィでもいいから,やっちゃえっつーの!
そんなことを心の中で叫ばずにいられません.

しかし,イライラさせられながらも,グイグイと引き込まれて,途中で止めるに止められなくなるお話でした.

つーか,要するに,このジジィ「自信のないヤツ」なんだな.
自分の老い先短いことを悟っているし,一度結婚生活に失敗していることを気に病んでいるようだし,生物学的な「男」としてきちんと恋愛ができないのではないかと心配しているし.
そんなもんで,もと教え子と男女の仲になることに踏み出せないでいるんだな.

そういう自信のなさっつーのがあって,「紳士的」に接することが最大の愛情だと彼は思ってたんだろうな,きっと.
そういうの,俺的に「アリ」
えー話やないか.

ちなみに,一番印象に残っているのは,ある小島に二人っきりで旅行に行くところ.
現地で,亡くなった妻の墓参りだということがわかって,女性は憤慨するわけだ.まったく,センセイは女心がわかっていない,と思った.
しかし,そうすることでケジメを付けようとしたこと,そしてそのことを相手に理解して欲しかったというセンセイの気持ちは,僕的には「よくわかる」
いいじゃないですか.

当方,初老の男性にはほど遠い年齢ですが,こんな感想を抱きました.

どくしょのたのしみ

プライベートなメールを「投稿記事」にしてしまうシリーズ第2弾

–投稿者: 「木公クン,本読まないよねー」呼ばわりするオンナ さん–
ね、ね、69おもしろかったでしょ?
読後に世界が、ぐぐっと広がってくるでしょ?
村上春樹、深いでしょ?魂に訴えかけてくるでしょ?

そーなんだよ、それが読書の楽しみってやつなんだよ。

あとはねえ、そうだなあ木公くんにあうのは
原田宗典
とか
中島らもなんかもいいかな。

でもね

もうちょっと、してから教えようと思ったんだけど
ほんとは、もうちょっといろいろ読んでから読んで欲しいのだけど

舞城王太郎

なんというか、荒唐無稽でジャンプの原作みたいで文体も読みやすくて
こいつぁ、すげえよ。
今回の芥川賞候補が「好き好き大好き超愛してる。
あたしが読んだのは
阿修羅ガール」三島賞受賞作
煙か土か食い物メフィスト賞受賞作
熊の場所

さしずめ「熊の場所」あたりがおすすめか。

情緒とかあんま、ないのですが、たたみかけるような強引な展開が心地よい。
でも、なんか幸せ信じて豊かに強く生きなきゃだめだ、ってなメッセージが根底に流れているのです。
きらっと希望にゃのー。
————————

へーい,夏休みの宿題よろしく,読書感想文でも書いてみま~す.
#そのうちね.

村上龍『69』

フクちゃんはそんな男で,どげんしたら女ひっかけられると?と聞くと,いつも同じことを教えてくれた.
高望みはいけん.
(村上龍『69(シクスティナイン)』)

けだし名文.

東京→京都の移動でずーっと読んでいた.

そもそも,知人であるところの女性から,
木公クン,本読まなさそうだよねー.人生楽しまないと嘘って書いてある本だよ.絶対お勧め.読め読め
と,何度かシツコク言われたので,重い腰を上げ,空き時間に駒場のローソンで思わず発見したので購入.
そういや,某先生からも「木公はほんとに本読まないよな~」と呆れられたことがあったなぁ.わかる人にだけわかる,このオカシサよ.

つーか,「うるせー,黙れ」と内心思ってしまったことを激しく後悔するくらい,読む価値のある1冊だった.

最近,alm-ore を読み始めてくれた別の知人女性は「女の子,妄想,ガンダム,クルマしかネタがないですねー」と,褒めているのか,ケナしているのか微妙なコメントを寄せてくださいましたが,『69(シクスティナイン)』は「女の子,妄想,長崎,’69」しかネタがない.
’69には,僕はまだ受精卵すら存在していなかったけれど,「ああ,わかるなぁ.この馬鹿な青春のパワー」って感じで,楽しく一気に読めました.

主人公の矢崎剣介の頭の中には「女の子」しかないし,「口だけは達者」だし.村上龍もかなり楽しんでこの作品を書いていたようで,ストーリーから逸脱した文章がいきなりあらわれたかと思うと「・・・と言うのは嘘で,実は・・・」みたいなフレーズが随所に出てくる.この,読者をからかった展開って,まさしくalm-oreの目指している路線じゃん.
なんだか,他人事だとは思えない小説だった.

ただ僕と主人公には,一部に大きな隔たりがあった.
主人公は,体制に唾吐き,言ったことはやり遂げる有言実行な男だ.
僕は,体制に守られてぬくぬくするのが大好きで,口だけの有言不実行な男だ.
どっかのアホみたいに,何でもかんでも噛み付けばいいとは決して思わないけれど,自分の意思をきちんともって反体制的な生き方をするのは良いなと思った.

いやいや,そんな小難しいこと抜きにして,「青春って馬鹿だねー.男の子の生きる原動力って,女の子だよねー.あとはロックだよねー」と,頭を空っぽにして読むのに最適かと.

絶賛 絶版発売中?

ウィンドウズでインターネットメール ―AL‐Mailパーフェクトガイド Windows95対応.これこそ,数年前に執筆に参加した本.

在庫は3冊あります
おそらく,現在は絶版と思われるわけで.しかし,うちにはまだ3冊在庫がありました.ネタも古いし,古本屋に持っていったら一体いくらで引き取ってもらえるか,非常に気になるところですが,それをやってしまったら著者としておしまいな気がして,やる勇気がありません.

3冊のうち1冊は,自分用で,サイン入りです.サイン入りといっても,自分のサインが入っているわけではなく,当時よく行っていた飲み屋「きよはし」のママのサインが大きく入っています.そして,右下に,申し訳なさそうに,共著者のサインが4人分入っています.
共著者が全国に散らばっていたために,一度も全員が一箇所に集まったことがありません.自分で全国行脚して,全員のサインを集める予定だったのですが,志半ばです.
きーままのサイン


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