NHK『カーネーション』第91回

研究会の懇親会で、「この人の1日は朝ドラで始まり、お料理で終わります。そしてそれ以外のことは何もしていません」などと紹介されてムカついたものの、それを否定するだけの材料も持ち合わせていなかった不名誉な当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第91回目の放送を見ましたよ。

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第16週「揺れる心」

北村商会の開店は4月15日と決まった。
北村(ほっしゃん。)の店は薄利多売の方針だ。そのためには開店までに大量の在庫を準備し、開店後も絶対に品切れを起こさないこととが重要だ。腕のいい縫い子を5人ほど雇い、フル稼働で既製婦人服の生産が始まった。
糸子(尾野真千子)は、とにかく生地を大量に集めておくことが重要だと北村に伝えた。以前は何かと糸子に食い下がる北村だったが、糸子の家に行って以来、素直に糸子の意見を聞いてくれるようになった。そして、周防(綾野剛)と共に毎晩工場に泊まりこんで仕事を続けていた。

そんな二人を見て、糸子は自分も精一杯協力することを決めた。この事業を絶対に失敗させるわけにはいかないと強く思った。

そんな忙しい日々であったが、泉州繊維商業組合の月会合には3人揃って出かけた。
組合長の三浦(近藤正臣)は北村商会に大いに期待を寄せた。北村商会こそ新しい時代の象徴だというのだ。戦争で焼けてしまったものは取り戻せないが、新しいものはいくらでも作り出すことができる。北村商会にその先陣を切って欲しいというのだ。

その言葉に北村は男泣きした。

糸子は思った。
北村の家には女が一人もいなかったという。戦争で何があったのか?
周防は長崎から大阪に逃げてきたという。戦争で何があったのか?
三浦は大切な物が焼かれてしまったという。戦争で何があったのか?
彼らが心に何を抱えているのか、糸子には何もわからなかった。しかし、彼らの心の裡を思いやるうちに、自分の心の中にも何か変化が起きていることに気づいた。

暗い家路で、糸子は自分の心の変化が何なのかはっきりと分かった。
糸子は恋しいのだ。

父・善作(小林薫)が好きだった。しかし、戦争中に死んだ。
幼なじみの勘助(尾上寛之)をかわいく思っていた。しかし、戦争で死んだ。
年上の泰蔵(須賀貴匡)に憧れていた。やはり、戦争で死んだ。
夫の勝(駿河太郎)を大事に思っていた。しかし。

大切な人々をなくし、糸子の心には穴が開いていた。その穴に、すっと周防が入り込んできたのだ。だから周防が恋しいのだ。恋しくてたまらないのだ。糸子は夜空を見上げて黙って涙を流した。

けれども糸子は、北村商会の開店までは自分の恋心をしまっておくことにした。周防のことを考えずに、仕事に集中することにした。
その代わり、北村商会が無事に開店したら、自分にひとつだけ褒美をやることにしようと決めた。悔いが残らないよう、自分の気持に決着を付けることとした。

それからは決めた通り、がむしゃらに働いた。
そして、開店の日の朝を迎えた。

糸子は北村商会の服を身につけ、かつてなかったほど入念に化粧をした。
工場に行くと、周防が一人で寝ていた。
途中で手折った桜の花を開店祝いとして周防に差し出した
周防は、糸子の洋服姿を褒めてくれた。

店が始まると、もう糸子が工場に来ることもない。
糸子は最後の別れの挨拶をした。

その言葉は、周防のことが好きだったという愛の告白だった。
それだけ告げると、糸子は工場を飛び出した。

しかし、糸子が出ていくよりも早く、周防がその腕を掴んだ。
糸子を引き寄せ、周防は糸子を抱きしめた。
そして、自分もずっと好きだったと返答した。

工場の外では、北村がその声を聞いていた。

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NHK『カーネーション』第90回

昨日のまとめ記事において、二日目に周防に会った糸子の顔が赤くなっていたことについて、本ブログでは「周防に会って上気した」旨を書きましたが、実際には「糸子は正気を取り戻すため、自分で自分の頬を叩いた。そのために赤くなった」が正しいようです、とお詫びして訂正する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第90回目の放送を見ましたよ。

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第16週「揺れる心」

周防(綾野剛)が、糸子(尾野真千子)に会えると思って工場監督の仕事を引き受けたと言った。仕事の帰り道、糸子は放心状態で帰宅した。
家に入る前、井戸で水の水で顔を洗った。そして、周防は女としての糸子に会いたかったわけではない、職人として認めてくれているだけだと自分に言い聞かせ、自らを落ち着かせた。

次に工場へ出向いた時、糸子はドアの前で何度も自分の頬を叩いた。そうやって周防への思いを追い出し、自分を落ち着かせようとしたのだ。工場でその音に気づいた周防がドアを開けた。変なところを見られてしまった糸子は、その場を取り繕った。

工場に入ると周防が試作品を完成させていた。
同色のブラウスとスカートを合わせて着るとワンピースのように見えるデザインであった。同じ型の色違いのスカートを合わせてもお洒落に見える。できの良さに糸子は大喜びした。スカートに大量に付けられたギャザーも今風で決まっていた。
ただし、問題はギャザーや丈の長さを確保するために大量の生地を必要とすることだった。

遅れてやって来た北村(ほっしゃん。)は、やはり生地の使用料に文句を言った。予定価格に対して原価が高すぎるというのだ。このままではほとんど儲けが出ない。かと言って、価格を上げれば売れなくなってしまって元も子もない。
北村は、ギャザーを減らして、丈も短くすることを強硬に指示した。

糸子は猛烈に反発した。今の流行は丈が長くてギャザーの多いものである。そのデザインを否定してしまったら、どんなに安くても売れるはずがないというのだ。それに、開店直後は大いに無理をして客に奉仕し、良い店だと評判を打ち立てることが重要だと主張した。
糸子と北村は完全に対立し、睨み合った。

埒があかないと思った糸子は北村の襟首を掴み、オハラ洋裁店に引きずっていった。店の一日を見学させて、婦人服商売について勉強しろというのだ。

店での糸子は、客のことを第一に考えていた。
太っているのが目立つのでベルトの無い洋服が欲しいと言っている客には、太いベルトを使えばかえって腰回りの太さが目立たなくなると提案し、客を納得させていた。逆に痩せている客が、以前に作った洋服を着ると貧相に見えると相談に来た。彼女にはすぐに洋服を持ってくることを指示し、胸のボリュームが増すように手直しすることを約束した。
その日は、サエ(黒谷友香)も新しい洋服を作りに来た。彼女は生地代がいくらかかってもよいから、ギャザーのたっぷりはいったフワリとしたスカートが欲しいと騒ぎ立てた。糸子は、その様子を北村にこれ見よがしに見せつけた。

そうして、1日が終わった。
糸子は北村に感想を尋ねるが、彼の答えは糸子をがっかりさせるものだった。北村は、女はアホだ、中身が不細工なのを棚にあげて、洋服にばかり文句を言う、女相手の商売がバカバカしくなったなどとまくし立てた。糸子は呆れてものが言えなくなり、北村に協力する気も失せた。

その時、夕食の準備ができたと言って千代(麻生祐未)が声をかけた。北村にも食事を食べさせるつもりで準備をしたという。糸子と関係の悪くなった北村は一刻も早く家に帰りたかった。糸子も北村を追い返したかった。
しかし、千代と昌子(玄覺悠子)が強引に北村を食卓に座らせた。

あんなに嫌がっていた北村であったが、酒が入ると上機嫌になった。糸子は相変わらずむっつりしているが、他の女たちと北村はすっかり打ち解けてしまった。
千代も北村の飲みっぷりを気に入った。善作(小林薫)が酒飲みだったことを思い出し、男が家で酒を飲んでくれるのが嬉しいと言うのだった。

そして千代は、驚くべきことを言い出した。
独身の北村に対して、糸子との再婚を考えてはくれまいかと言うのだ。さすがに糸子も北村も異口同音にそれを否定した。話はそこまでになったが、千代は残念がった。

それでも北村は気を悪くすることがなかった。むしろ、ますます愉快に饒舌になるのだった。
北村の育った家は、父と男兄弟6人で女は一人もいなかったという。糸子の家は女ばかりで、北村にしてみれば異国のようで楽しいという。そして、酔っ払った北村は、家に女がいるのは良いものだといって涙ぐむのだった。

翌朝、北村は気づくと糸子の店で雑魚寝していた。
台所からは女たちが朝食の準備をしている音が聞こえてきた。ただし、北村を起こさないようにと、気を使っている様子がわかった。幸せな朝の音を心地よく聞きながら、北村はいつまでも寝たふりをしていた。

そして、ふたりはそろって工場に出かけた。
二日酔いで調子が悪い北村は、女も洋服もわからない。全てを糸子に任せると小さな声で言った。それだけ言うと、すぐに帰ってしまった。

突然しおらしくなった北村を見て、周防は不思議がった。
糸子は、千代が北村の毒気を抜いたとだけ説明した。周防はますます訳がわからなかった。

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NHK『カーネーション』第89回

芥川賞にはあまり興味関心がなく、円城塔氏が受賞したと聞いてもピンと来なかったし、彼の著作をひとつも読んだことはなかったのだが、2008年に書かれた「ポスドクからポストポスドクへ」(日本物理学会誌)というエッセイを読んだところ、人を喰ったような文体と内容であるにもかかわらず、心を打たれ、胸が苦しくなってしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第89回目の放送を見ましたよ。

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第16週「揺れる心」

糸子(尾野真千子)は北村(ほっしゃん。)の婦人既製服工場を手伝うことになった。糸子の役割は、洋服のデザインを行い、現場監督に作り方を指導することである。

今日は、初めて工場に出向き、監督と顔合せをする予定だ。千代(麻生祐未)や昌子(玄覺悠子)と朝食を摂りながら、監督と馬が合えばいいのだがなどとおしゃべりをしてから出かけた。

工場は心斎橋のはずれにある。約束の時間のはずなのに糸子以外誰も来ていなかった。壁掛け時計もネジが巻かれず止まったままで、いい加減な職場のように思われた。
ただし、工場の真ん中に置かれたミシンだけは立派なものだった。糸子はそれを見て嬉しくなった。

工場の規律を引き締めようと、糸子は踏み台を探してきて時計のネジを巻いていた。その時、背後で扉の開く音が聞こえた。誰が来たのだろうかと振り返ると、そこに立っていたのは周防(綾野剛)だった。
周防のことを好きになりかけ、彼とは二度と会うまいと思っていた糸子である。2年間も彼を避けて暮らしてきたのに、突然の再会に糸子は気が動転してしまった。

すぐに北村も姿を現した。
ふたりが初対面だと思いこんでいる北村は、互いを紹介しようとした。しかし、すぐに糸子がそれを遮り、以前に仕事を手伝ってくれたことを逆に紹介した。どうやら、周防は糸子が来ることを知っていながら、北村には黙っていたようだ。

3人が打ち解けると、早速仕事の話になった。
北村は、以前に糸子が作った水玉のワンピースを量産して売りたいと述べた。しかし、その言葉に糸子は怒り出した。あのワンピースは2年前のデザインであり、今ではすっかり流行遅れなのだ。流行に鈍感な北村に腹を立てた糸子は、持参したスクラップブックを広げ、北村と周防に婦人服の歴史と流行についてレクチャーした。
糸子のあまりの剣幕に、北村は恐れをなした。全てを糸子と周防に任せることにして、ほうほうの体で逃げ出した。

北村の態度で頭に来ていた糸子であったが、周防とふたりっきりになると急に怒りを沈め、そわそわと落ち着かなくなってしまった。それでも、洋服のデザインについてふたりで検討を始めた。

最近はパリのデザイナーのディオールが流行の最先端で、世界中から注目を浴びている。周防も気に入り、それを取り入れたいと思った。しかし、糸子によれば幾つか問題があるという。ディオールのデザインを再現するためには豊かに膨らんだスカート部分などに大量の布が必要だが、今の日本ではそれだけの生地が手に入らない。仮に入手できたとしても、販売価格が高騰して事業が失敗するというのだ。

しかし、なんとか雰囲気だけを取り入れることで方針が決まった。早速、糸子がその場でデザイン画を描き始めた。
スケッチをする糸子のそばに、周防が顔を寄せてきた。彼は熱心に仕事に取り組んでいるだけらしいのだが、彼への恋心が芽生えている糸子は気が気ではなかった。
そうして1日目の仕事は終わった。

翌日、再び千代や昌子と朝食を共にし、工場での仕事を聞かれた。監督の人なりを聞かれても多くは語らず、勘の良い人物が来たと答えるだけだった。千代も昌子も周防と面識があるのだが、どういうわけか彼が監督であることを言い出せなかった。なぜかそのことを隠していたかったのだ。
けれども、隠しているのもどこかか具合がおかしい。おずおずと、さりげなく、周防のことを話した。すると、ふたりは懐かしさに大喜びした。
糸子は周防のことを隠そうとした自分の心を恥じた。平常心で仕事をするよう自分自身に言い聞かせ、工場へ出かけて行った。

今日は周防のほうが先に工場へ来ていた。周防の顔を見ると、家を出るときの気合もどこかへ抜けてしまった。気合を入れるため、自分で自分の頬を叩いたら赤くなった。顔の赤いことで、体調でも悪いのかと周防に心配されてしまった。それでますます恥ずかしくなった。
周防はできる男なので、仕事のパートナーとしてはやりやすかった。だがしかし、秘めた恋心が仕事の妨害をした。周防は仕事のやりにくい相手となった。

雑談をしながら、糸子は周防にこの仕事を引き受けた理由を聞いてみた。
周防はやはり紳士服テイラーの仕事を希望していたという。実際、紳士服の需要はうなぎ登りで、求人も多いという。しかし、客の殺到によってむしろテイラーらしい仕事ができなくなっているというのだ。大量の注文をさばくために、結局は工場で大量生産のような状態になっている。そのような仕事をするなら、北村の工場で働いても同じだというのだ。婦人服の勉強をすることは自分の強みにもなるだろうし、何より北村の支払う給料も良かったというのだ。

そして最後に、糸子が指導に来ると聞き、再会できると思ったことも大きな理由の一つだと付け足した。
その一言に糸子はフリーズした。

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NHK『カーネーション』第88回

2011年1月に書かれたという「私とAL-Mail-出会いと別れ」(明間民央)を読んで、懐かしく思うと同時にしんみりしてしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第88回目の放送を見ましたよ。

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第16週「揺れる心」

糸子(尾野真千子)は三浦(近藤正臣)に呼び出され、北村(ほっしゃん。)に手を貸して欲しいと頼まれた。

北村は計画を説明し始めた。
今の日本では洋服は全てオーダーメイドである。しかし、それは旧来の呉服屋と同じ商売で古臭い。客の多様な好みに合わせるため、多くの材料の在庫を持たなければならず無駄も多い。
北村は、これからの時代は既製服の時代だと力説した。アメリカではすでに一般的になっており、すぐに日本も同じ状況になるだろうと予想される。しかも、無駄が出ない分、効率よく儲けることができるのだという。

ただし、北村の説明は付け焼刃だった。具体的な計画については組合長の三浦が説明した。心斎橋のはずれに、小さな店と工場をすでに準備したという。あとは商品さえ揃えば開店できるという。そこで、糸子には商品づくりを担当して欲しいというのだ。

糸子が自分の店で忙しいことはわかっている。そこで、糸子は服のデザインと型作りだけで良いこととする。工場には別途監督を立てるので、実際の縫製作業についてはその者に任せるという計画だった。それだけの手間で、糸子の取り分は売上の1割だという。
悪い話ではなかったが、糸子はどうも気が進まなかった。返事を保留して帰った。

糸子は、既製服商売が自分のやりたい仕事と真逆であることが気に入らなかった。糸子は一人ひとりを飾り立てる洋服を作りたい。それなのに、既製服はどこの誰が着るかもわからず、製品に情が無いと思うのだ。

けれども、昌子(玄覺悠子)と松田(六角精児)は北村の計画に大いに賛成した。デザインだけで売上の1割という破格の条件は、オハラ洋装店にとって願ってもないことだった。八重子(田丸麻紀)のパーマ機購入や美容室の改装費、奈津(栗山千明)の借金の連帯保証人など、糸子が大盤振る舞いをしてしまったことが店の経営に少なからず影響を与えていたのだ。
しかし、そこまで言われても、糸子はまだ乗り気になれなかった。

ところで最近、糸子は娘たち(野田琴乃二宮星、杉本湖凛)を習い事に通わせている。ピアノや習字、絵に日本舞踊など、1日の休みもなく習い事をさせている。手の付けられない娘たちを家から追いだそうという魂胆なのである。おかげで、店には平穏が戻った。

しかし、ある時を境に糸子はその作戦を後悔した。
ピアノ教室の帰り道、娘たちは楽器店で素敵なピアノが売られているのを見た。それをきっかけに、ピアノが欲しくてたまらなくなったのだ。家に帰ってくるやいなや、3人で声を合わせてピアノをねだった。常に糸子について歩いてピアノをせがむ。習い事をさせたせいで、かえって娘たちがやかましくなる結果となった。

松田と昌子の説得や、ピアノ購入資金などの理由から、糸子は既製服店を手伝うことを決めた。組合事務所に出かけ、今後の計画について話し合いをすることになった。

2年ぶりに組合事務所に来ることになった糸子はビクビクしていた。周防(綾野剛)に会うと自分の恋心に歯止めが効かなくなることを自覚しているからだ。周防は三浦のカバン持ちをしていた。だから糸子は、三浦や組合と距離を置いていたのだ。
しかし、それは糸子の杞憂だった。2年の間に周防はどこかに職を見つけたようだ。組合の周囲に周防の姿は見えなかった。

周防がいないことがわかって、糸子は気が大きくなった。仕事のパートナーとなる北村とは遠慮なく言いたいことを何でも言った。糸子は北村のことを「じゃがいも」、木村は糸子のことを「さといも」と言って口論を始めるのだった。

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NHK『カーネーション』第87回

今夜19時より日テレ系列で放送の『火曜サプライズ』では、鈴木砂羽が渋谷の隠れ家的グルメを巡るらしいよとお知らせする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第87回目の放送を見ましたよ。

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第16週「揺れる心」

1948年(昭和23年)になった。糸子(尾野真千子)は35歳になった。
戦争が終わってからというもの、祝い事と不幸がめまぐるしくやって来た。
末の妹・光子(杉岡詩織)は1年前に、神戸のイトコ・勇(渡辺大知)は一月前に結婚した。空襲で焼けてしまった神戸の祖父宅は立派な家が再建された。一方で、糸子をかわいがってくれていた祖父・清三郎(宝田明)は前の冬に亡くなっていた。
糸子は、最近特に月日の流れを速く感じ、感慨にふけるのだった。けれども、ぼんやりしている暇は少しもなかった。店は空前の大繁盛で、ミシンや縫い子を増やして休みなく働いているにもかかわらず、注文待ちが少しも減らないのだ。それでも、敗戦から立ち上がり、女性たちがお洒落を楽しめるようになっていることは、糸子の喜びでもあった。

その上、娘たちのおてんばぶりにも苦労させられた。
午前中こそ、彼女らは幼稚園や小学校に行くので静かなものだが、昼過ぎに家に帰って来ると、もう手がつけられない。長女・優子(野田琴乃)と次女・直子(二宮星)は四六時中取っ組み合いの喧嘩ばかりしている。それを仲裁するのは糸子の役目だが、小学生で力もついて来たふたりを止めるのは一苦労だ。それに比べれば、幼稚園児の聡子(杉本湖凛)はおとなしいものだが、上のふたりは聡子の面倒を見ないので、結局糸子が仕事を中断して相手をしなくてはならない。

そんなある日、泉州繊維商業組合の組合長・三浦(近藤正臣)が糸子に会いたがっているという報せを受けた。
一度だけ会合に顔を出したことと、臨時職人として周防(綾野剛)を紹介してもらったこと以外は、この2年間に一度も連絡を取っていなかったので糸子は気まずい思いをした。今さら合わせる顔がないと躊躇する糸子であったが、店の経理担当で業界に顔の効く松田(六角精児)の強い勧めで渋々会いに行くことにした。

呼び出された料理店の座敷には、北村(ほっしゃん。)も同席していた。
三浦は糸子が疎遠になった理由を訪ねた。糸子を責めるではなく、ソリの合わない人間がいるのではないかと優しく訊いてくれた。三浦は、糸子が北村に強引に酒を勧められて酔い潰されてしまったことを知っているのだ。糸子はそれを否定した。商売敵がいるから遠慮しているのでもないと説明した。

糸子は、自分の周防に対する気持ちがバレていないことに安心した。そして、素知らぬ振りをして通した。

すると三浦は過去の詮索を打ち切り、本題に入った。
同席している北村のために手を貸して欲しいというのだ。

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NHK『カーネーション』第86回

今週の『カシャッと一句!フォト575』に篠原ともえが出演していることを嬉しく思う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第86回目の放送を見ましたよ。

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第16週「揺れる心」

1946年(昭和21年)。
大繁盛というわけではないが、安岡髪結い店のパーマは好評だった。玉枝(濱田マリ)はあいかわらず二階の寝室に引き篭もったままだったが、八重子(田丸麻紀)はそんな悩みを表に出すこともなく、客(山本真由美)との関係も良好だった。

突然、黒い和服を来た奈津(栗山千明)が安岡家に訪ねてきた。泰蔵(須賀貴匡)と勘助(尾上寛之)のために線香をあげたいというのだ。八重子が玉枝を呼びに行っている間ひとりになった奈津は、初恋相手である泰蔵の遺影をじっと見つめて涙ぐんだ。

八重子は無駄だと思いつつも、玉枝に奈津の来訪を告げた。すると意外なことに、玉枝は奈津に会うという。驚きながらも、八重子が手を貸して階段を降ろした。
しかし、いざ奈津と玉枝が対面しても、ふたりはぎくしゃくしていて、ほとんど何もしゃべらなかった。傍らの八重子も居心地が悪かった。

すると突然、玉枝が店のことについて話し始めた。引き篭ってばかりで誰とも口を聞かず、八重子が勝手にパーマ機を購入したことにすら腹を立てていた玉枝である。そんな玉枝が仕事の話をし始めたことは、八重子にとっても寝耳に水だった。

玉枝は、「安岡髪結い店」という店名は古臭く、店構えも野暮ったいと言うのだ。もっとハイカラな店にして、店名も今風にしたいと奈津に相談した。奈津がふと思い付きで「安岡美容室」という店名を提案したところ、玉枝は気に入った。洒落た制服を糸子(尾野真千子)に作ってもらって、店を華やかにしようと言い出した。
事前に何の相談もなく、口を挟む余地のない八重子だったが、悪い気はしなかった。

さらに玉枝は、奈津に美容室を手伝って欲しいと言い出した。
突然のことに驚き、躊躇する奈津だった。自分には多額の借金がある上、夜の女に身をやつしてしまった。今さら、カタギの仕事などできないと言いかけた。

みなまで言う前に、玉枝が自分の手で奈津の口を塞いだ。
玉枝は、今日を限りに自分の辛い過去を忘れ、新しい未来に向けて進みだすつもりだ。奈津もそれに従えというのだった。奈津はそれを受け入れた。

奈津は毎月コツコツと借金を返すことにした。話を聞いただけで、糸子はすぐにその保証人となった。
店の経理を見ている昌子(玄覺悠子)と松田(六角精児)は、八重子のパーマ機代金の立替分も残っているのに、さらに借金の保証人になったことを嘆いた。けれども糸子は聞く耳を持たず、仕事で稼げばいいと言って逃げるのだった。

直後に、奈津がオハラ洋装店を訪問した。
しばし見つめ合った後、先に口を開いたのは糸子だった。糸子は奈津を座らせもせず、後ろを向くように指示した。すると、手探りで奈津の体の採寸をした。そして、一切口を聞かず、その場で奈津の洋服を縫い始めた。奈津も何が起きたのかわからず、その場に立ち尽くすだけだった。

最後に糸子は、これで貸し借りなしだと告げた。
自分の結婚式の時、花嫁衣裳の無い糸子のために、奈津が白無垢を貸してくれた。その時に礼を言い忘れたのがこれまでずっと気にかかっていたのだ。今さら、改めて礼を言うわけにも行かない。糸子は無償で洋服を作ってやる代わりに、花嫁衣裳の件を帳消しにしろと言うのだ。だから、奈津にも礼を言わせなかった。

以後、奈津は明るく甲斐甲斐しく働いた。
安岡美容室の新しい看板が完成し、糸子の作った白い制服も完成した。
安岡一家の再出発を祝し、店の前で記念撮影をした。その時、遠慮する糸子を強引に真ん中に立たせて撮影した。糸子の両隣には奈津と玉枝が立ち、満面の笑顔で糸子と腕を組んだ。
それはとても良い1枚で、糸子のお気に入りの写真となった。

だんじり祭りの時期になった。
なんと、今年から女の子でもだんじりを曳くことが許されるようになった。
はっぴ姿の直子(二宮星)が出かけていくのを見送りながら、糸子は新しい時代の幕開けを感じた。

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明日いきいきジョシゴト (東海テレビ 火曜日21:54)

当方の大好きな山瀬まみがナレーションを行う番組、『明日いきいきジョシゴト』が2012年1月10日より始まったらしい。東海テレビで毎週火曜日の21:54より放送。
女性のライフスタイルを紹介する番組のようだ。

東海地方のみの放送らしく、当方の地域では見れないのが残念。

そして、番組ホームページのちょっと残念な感じも味わい深い。

東海地方にお住まいの方、見る機会があったら山瀬のナレーションの良し悪し、番組の感想などを教えて下さい。

NHK『カーネーション』第85回

今週の放送は、勝の浮気への赦しがあり、水玉ワンピースの大ヒットがあり、静子のヒロイン以上にきれいな花嫁姿があり、厳しくも優しかったハルの死去があり、周防との出会いと心の交流があり、奈津がパンパンになっていて、さらには絶交状態の玉枝に会いに行くとか、「盛り沢山すぎだろ!」と叫ばずにおれない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第85回目の放送を見ましたよ。

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第15週「愛する力」

パンパンになった奈津(栗山千明)のことを相談するため、糸子(尾野真千子)は玉枝(濱田マリ)に会いに来た。糸子は、奈津が玉枝にだけは心を開くことを知っていた。玉枝とは何年も絶交状態である上、玉枝は息子を戦争で失って心神喪失状態である。まともでないことはわかっていたが、他に奈津を救う方法はないのだ。

玉枝は寝床でまんじりともせず、天井を睨みつけるだけだった。糸子が部屋に入ってくると、目玉だけをギョロリと動かした。糸子の来訪を咎めるでも歓迎するでもなかった。
それでも、玉枝は善作(小林薫)の死去を口にして気遣ってくれた。糸子は、勝(駿河太郎)やハル(正司照枝)も死んだことを報告した。玉枝は、体を動かさず、一筋の涙を流した。

糸子は奈津のことを報告した。そして、深く頭を下げ、泣きながら彼女を救って欲しいと頼み込んだ。
しかし、玉枝はそれを断った。奈津の借金と夜逃げ、そして娼婦になったことは気の毒に思いつつも、玉枝自身もボロボロの状態だった。自分のことすらどうすることもできないのに、人を助けることなどできるはずがないと言うのだ。辛くなった玉枝はさらに涙を流した。
そして、糸子の願いを断り、追い返すのだった。

糸子は諦めて帰るしかなかった。奈津のことが心配だったが、どうすることもできず数日が過ぎた。
ある日、八重子(田丸麻紀)から電話があった。聞けば、玉枝が奈津に会いに行くと言い出したという。すぐに糸子も合流し、孫の太郎(倉本発)に背負わせて奈津の住む掘っ立て小屋へ向かった。小屋には玉枝だけが入ることにした。糸子と太郎は少し離れたところから様子を伺った。

奈津は玉枝の姿を見るやいなや、玉枝を小突いた。杖を使っても立っているのがやっとの玉枝は大きくふらついた。飛び出して助けに行こうとする太郎であったが、糸子が力いっぱいそれを遮った。ここは玉枝に全て任せるべきだと思ったのだ。
最初は気を悪くした奈津であったが、すぐに玉枝を家の中に入れた。

奈津の家の中にはほとんど何もなかった。奈津の母(梅田千絵)もすでに死んでしまったという。仏壇を買うこともできず、小さな台の上に骨壷をむき出しのまま置いて線香があるのみだった。

玉枝は泰蔵(須賀貴匡)と勘助(尾上寛之)を戦争で亡くしたことを奈津に知らせた。それまで強気でいた奈津であったが、いっぺんに感情を爆発させ、耳を塞いで泣き崩れてしまった。
玉枝は奈津の辛さがよくわかった。それ以上は何も話さず、奈津の気が済むまで寄り添い、優しく撫でてやるのだった。

しばらくして、玉枝と奈津が小屋から出てきた。疲弊した玉枝は、すぐさま太郎の背に乗せられて帰って行った。
糸子と奈津はしばし見つめ合った。しかし、互いに何も言わず、糸子もそのまま去って行くのだった。

そして、店での紳士服づくりが終わり、周防(綾野剛)も約束通り店を去ることになった。周防は期待通りの仕事をしてくれたし、最終日には珍しいゼリー菓子を振舞ってくれるなど、最後まで人がよく爽やかな様子だった。店の女たちは周防との別れを惜しんだ。

表に出て周防が去るのを最後まで見送ったのは糸子だった。
糸子は周防の助けを心の底から感謝した。単に職人として紳士服づくりを助けてもらっただけではなく、精神的な部分でも助けてもらったということをほのめかした。

それを聞いた周防は、どこか安心した表情を浮かべた。というのも、周防は糸子に嫌われたものと思っていたのだ。最初の頃はおしゃべりに付き合ってくれたのに、最後の方はあまり口をきいてくれなくなったことを周防は気にしていた。
糸子は周防の懸念を無言の微笑みで否定した。

糸子は黙っていたが、周防に話しかけるのをやめた明確な理由があったのだ。
糸子は周防のことを好きになりかけていることを自覚していた。これ以上話していたら、その気持に歯止めが効かなくなる。それを避けたのだ。

糸子は、もう二度と周防に会わないことを願いつつ、彼を見送った。

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