横浜の母

別宅のそばにある定食屋の話なんだけど。
定食屋と書いたけれど、僕以外の客はたいてい酒飲んでる。週末の昼に行ってもほとんどの客が機嫌よく酒飲んでる。カウンターに並べられた惣菜を適当に選んで、それを肴にビール飲んでる。多くが常連らしく、客席側に置いてある冷蔵庫から勝手にビールと冷えたグラスを持ってきて好きに飲んでる。
僕はここで酒は飲まないけれど、楽しそうな酔客たちを見ながら定食食べるのが楽しい。

店は、腰も指も曲がった高齢のおばあちゃんがひとりで切り盛りしてる。
いつもカウンターの端に座っているおじいさんがいるんだけれど、どうやらその人が夫らしい。その人は店を手伝うでもなく、じっと座っていつもスポーツ新聞を読んでる。客が立て込んでおばあちゃんが忙しそうにしていても我関せずという感じで座ってる。
通いはじめの頃は「なんだよ、このジジイ」って思っていたけれど、見慣れてしまえばなんともないし、ドラマとかで見る「ヒモ」の実物を見たと思えば笑えてきて楽しい。

僕はいつもこの店で焼き魚定食(900円)を注文する。
魚の種類は選べるのだけれど、僕は鮭以外頼んだことがない。鮭大好きだから。素朴な味噌汁と、おふくろの味的な惣菜小鉢もついてきてほっこりする。
おばあちゃんがひとりでやってる店だから、閉店は早いし、日によって変動がある。そのせいか、仕事帰りによると頻繁に品切れにあたってしまう。
3回に一度くらいの割合で、僕が店に入るやいなや
「ごめんなさいね。今日はもう鮭終わっちゃった」
と言われたりする。僕も他のメニューを注文すればいいんだろうけど、そういう時は「また来ますー」とか言って踵を返しちゃんだけど。

今日は18時前に来た。だいたい20時くらいまでやってると言っていたので、十分間に合うだろうと思っていた。
他に客もなく、カウンターにぼんやりと座っていたおばあちゃんは、扉から覗かせた僕の顔を見るなり
「ごめんなさいね、今日はふつうの鮭ないの。・・・ただ、すごくしょっぱい鮭のアラならあるけど」
と言うじゃない。
いや、僕にとっては渡りに船。あのしょっぱい鮭の身をチビチビと口に含ませながら白飯をかっこむのがサイコーじゃん!

それを頼んで、今日はむしろツイてるなと思って椅子に座ろうとしたら、おばあちゃんが申し訳なさそうな顔をして話しかけてくるじゃない。
え?もしかして、ご飯や味噌汁がなくなったとか?前回来た時は、ご飯も味噌汁も売り切れたと言われて追い返されたばかりなんだよ。

「ちょっとすまないけれど、表の暖簾をはずしてくれない?アタシじゃ届かなくて」

サッと店内を見渡すと、いつものおじいさんがいない。なるほど、あのジジイは、元々背が低い上に腰の曲がっているおばあちゃんの代わりに、開店と閉店の暖簾の出し入れをするという重大な役割があったわけか。もちろんそんなことはお安い御用の晩飯前なのでサッと外してあげた。ていうか、飲食店の暖簾を外すなんて生まれて初めての経験だからちょっとワクワクしたよね。

ていうか、僕は減らず口なので
「この仕事は高く付きますよー。あとで100円負けてくださいね」
なんて言ったりしたんだけど。

でも、これまであまり話をしたことがないので、おばあちゃんの人となりがわからない。真に受けて本当に割引されたら心苦しいので、冗談だと付け足したんだけど。付け足しの付け足しで、「閉店間際に来ちゃってごめんなさい」と謝ったりしたんだけれど。

(実際に食べた焼き鮭定食の写真は取り忘れたので略)

食べ終わった頃、最初と同じようにカウンターに座って休憩していたおばあちゃんが話しかけてきた。
「最近は、豆まきの声も聞こえてこないわねぇ」
ああそうか、今日は節分か。

「昔はよく聞こえたもんなんですか?・・・実は僕は北海道で育ったので、近所の豆まきの声を聞いたことがないんですよ。この季節は真冬ですから家を締め切ってるじゃないですか。その中で豆まきをするから聞こえないんですよ」
なんて答えたり。

そこからは
「家の中が温かいって言いますわね」→夏より冬の屋内のほうがビール美味しい
「北海道は魚が美味しくていいわよね」→特に鮭が好きで、ここでいつも頼んでます
「ホッケもいいわよね」→形は似てるのに、アジの開きとは大違いです!
「ご両親は今も北海道?」→はい、両方とも生きてます。

俺「女性に年齢を聞くのは失礼ですが、おいくつですか?」
おばあちゃん「アタシ?アタシは80。昭和20年」
俺「あ、うちの母とひとつ違いですね」
おばあちゃん「実家には帰ってるの?」
俺「・・・いえ。親不孝なんで、もう何年も帰ってません。お母さんにお子さんは?」
おばあちゃん「50すぎになる息子」
俺「あ、ほぼ同い年。お孫さんは?」
おばあちゃん「いるわよ。でも、いたらいたでタイヘンよ。あなたは独身?」
俺「はい。ていうか、こんな身なりの家庭持ちいたらヤバいっしょwww」
おばあちゃん「ううん。人それぞれだわよ」

今日でおばあちゃんとの心の距離がずいぶん縮まった気がします。
今年の俺なりの「福は内」でした。

なお、焼き魚定食900円はびた一文負けてくれませんでした。

追伸:
僕には、神奈川にもうひとり母がいます。
[alm-ore] FIFTIES / 平塚のレストラン・バー(閉店してます)

森信雄ーク

タイトルは「もりのぶゥォーク」と読んでください。

2026年1月22日に元棋士にして「ひふみん」の愛称でも知られていた加藤一二三 九段が亡くなった

彼は中学生の時にプロ棋士としてデビューしたのだが、京都府立木津高等学校に進学したという。
同校は木津川市にあり、木津川市民の当方としてはどうしても親近感が湧いてくるのである。なにか縁のものが木津川市(当時、木津町)にないかと少々調べてみたわけで。

わかったことは、彼は南口繁一の内弟子だったそうだ。師匠の家が木津町にあったため木津高校に進学したようだ。それ以上に加藤と木津川市を結びつけるような情報は見つからなかった。
なお、加藤はその後、南口と関係が悪化し、別の人を師匠としたそうだ。

続いて、南口繁一のことを調べてみた。グーグル先生に「南口繁一 木津川市」とお伺いを立てたところ、森信雄のブログ『日々あれこれ日記』がヒットした。森信雄は南口の弟子だったそうだ。
なお、森と南口の関係が悪かったという情報は見つからなかった。
それどころか、森は南口の墓参りなどもきちんと行っているようだ。
たとえば『木津川市に行く』という記事がある。

ていうか、同記事に掲載されている写真の風景にめっちゃ見覚えがある。つーか、当方宅のめっちゃ近所じゃん。これは森信雄の足跡を文字通りにたどるしかないと思ったわけで。
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2026年スタート

あけましておめでとうございます。

最近は朝ドラ仕事もめっきり停滞しておるとことですが、いつもご愛顧いただきありがとうございます。
今年ものんびりと継続していくつもりですが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

昨年は、我が最愛の山瀬まみをほんの50cm先で拝観したり(その時の記事)、そのちょうど1ヶ月後に当の山瀬まみが体調不良ということ以上の説明もなく急に休業してビビったり、子宮体がんと手術後の予後が悪くて危ない状態になったと発表されたのは半年後の10月で驚きと悲しみで泣くやら、元気に帰ってきた声をラジオで聞いて嬉し泣きするやらしてましたけど。
その他、おぼこい顔して激烈に激しい超絶ギターを弾くReiちゃんさんのライブを東京やら横浜やらで見まくったり、彼女のシグネチャーギター “Rei Stratocastedr R246“を買ったり。
あと、諸般の事情で関西にあまり来なくなっちゃった荒谷朋美さんも3回くらい東京で見たり聞いたり、おしゃべりさせてもらったりしたねー。

ていうか、ちょうど1年前の記事

ところで、本日1月1日より、当方の勤務先が変わりました。その話はまたおいおい。よろしくお願いいたします。

なんて言っときながら、結局なんも書いてないんだけど。

端的に言えば、2025年1月から横浜の某社に出向しとります。事前の約束だと2026年12月までとのことなので、あと365日で京都に帰れるかなー、って感じです。

本年もよろしくお願いいたします。

森でジョン・レノン

本日は十二月九日である。この日だけはわたしにとって重要な日である。

そう、ずいぶん昔に交際していた女性の誕生日なのである。この事実からわかることは、終わったことにウジウジといつまでもこだわるというわたしの性根のせいで、そこにあったかもしれない大きなチャンスやら幸せやらをみすみす取り逃がしてしまったのかもしれないという悲しい現実である。どっかにいいオンナとか幸せとか落ちてませんかー。

そうそう、今日はジョン・レノンの命日でもある。ジョン・レノンが死んだのはアメリカでは12月8日だが、日本時間では12月9日であったのでジョン・レノンへの追悼は12月9日に行うのが正しいとされている。
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ねこのふほう (注: あるにゃんではない)

16年前、同僚が出勤途中に子猫を拾ってきた。周りに親猫が見つからず、そのままでは助からないだろうということで、会社まで連れてきた。
当時、僕もあるにゃんを飼っていたので、その同僚は僕に真っ先に相談にきた。会社のすぐそばに僕の行きつけの動物病院もあったので、すぐさまそこに駆け込んで健康診断してもらったり。

ただ、その獣医からは「きちんと飼えないなら、無責任に保護するな」と注意された。同僚と僕は少々しゅんとしながらも、社内で里親探しに奔走した。
そして、なんとか引き取り手が見つかった。当時まだ新婚(だったはず)で、夫婦ふたりで暮らしている別の同僚のところに貰われていった。

そこらへんの顛末は、当ブログに記録が残っている
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今日の午後ずっと伏し目がちだった俺の独り言

2025年現在、我が最愛の山瀬まみのレギュラーは一つだけ、BAYFM it!!(火曜日のみ)というラジオ番組だけなんだけれど。
去る3月4日の同番組の生放送では、冒頭でメインパーソナリティの春原佑紀が突然、山瀬まみからの手紙だというものを読み始めた。その内容は、体調不良でしばらく休業するというものだった。どんな問題を抱えているのかは一切説明されることはなかった。その後、マスコミなどでも状況が報道されることはなかった。どんだけ心配だったことか。
それが、今日の同番組の生放送で山瀬が復帰した。実に7ヶ月ぶり。めでたい。

放送冒頭では、本人から休業理由が説明された。
そもそもの病状は子宮体がんだったそうだ。休業発表のその日に手術を受け、子宮、卵巣、リンパ節などを全摘出したとのこと。手術自体は上首尾で、通常なら1-2ヶ月で仕事にも復帰できるはずだったという。
しかし、運の悪いことに、手術と前後して脳梗塞を併発したらしい。がんのために血栓ができやすくなっており、それが脳の血管にまわったとのこと。そのため、麻酔から覚めなかったという。本人もずいぶん長い間の記憶がないと言っていた。一時は、医師から家族に向けて、もう二度と発話できない可能性もあると伝えられたらしい。
意識が戻った後は脳梗塞からのリハビリに取り組み、復帰に7ヶ月かかったとのことだった。

今日の放送を聞く限り、山瀬はすごく普通に喋っていた。二度と話せなくなると言われた人だとは信じられないくらいスムーズだった。
そして、生放送で自分の病状を説明する山瀬には全く悲壮感がなかった。「大好きでいつも買っていたお菓子がコンビニの店から消えちゃった」みたいな、日常のちょっとした残念な出来事を笑い飛ばしながら友達に軽く愚痴るような、そんな気軽さとカラカラした明るさがあった。内容は壮絶なのに、平日の昼下がり、聴取者をどんよりさせないトークを繰り広げる山瀬はさすが芸歴40年弱のプロ中のプロだと思った。
でも、明るく喋っているのに声がちょっと震えているように聞こえた。僕には最初、それが自分の辛い経験をこらえているからなのか、それとも脳梗塞の後遺症で口や舌がうまく動かないのか、ていうか山瀬はそもそも舌足らずで滑舌悪いから通常通りなのかもな、とかとか判断がつきかねたんだけれど。しばらく放送を聞いていたら、普通になってきたように聞こえるようになってきたので、1番目の原因なのかも。そうだよね、芸歴40年のプロでもしんどかったよね。ていうか、山瀬はよく泣く人だったしね。放送で一人で泣き出さなかっただけ大人(おばさん)になったね。人に人生ありだね。

なお、実際の音声はradikoでお聞きください。開始10分後から数分程度です。
いや、山瀬の声は可愛いから全部聞いてもいいけど。

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NHK『ばけばけ』第6回 [終]

明日放送の山瀬まみが復帰するというので今から胸がドキドキして落ち着かない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第6回めをNHK+で見ましたよ。

* * *
第2週『ムコ、モラウ、ムズカシ。』

トキ(高石あかり)は婿をとることに決めた。一家の働き手を増やして借金を返すためだ。そうでもしなければ到底今のどん底の暮らしから抜け出せないと考えられるのだ。

トキは、紡績工場の同僚の女工・チヨ(倉沢杏菜)とせん(安達木乃)とともに、縁結びで有名な八重垣神社に参った。
そこで占いをしたところ、同僚のふたりは良縁が近いという結果が得られた。一方、トキの占い結果は、結婚相手はいつか見つかるものの、それは果てしなく遠い未来であるというものだった。

トキはすっかりしょげかえってしまった。夕食も満足に喉を通らない。トキの両親(岡部たかし池脇千鶴)は占いは当たらないこともあると言って慰めたが、場の空気を読まない祖父・勘右衛門(小日向文世)は八重垣神社は由緒正しい神社なので占いのはずれるはずがないと追い打ちをかけた。トキはますます塞ぎ込んだ。
トキの両親は、良い見合い相手を近いうちにきっと見つけてやると約束した。見合いを成功させて、占いの結果を覆せばいいと慰めたのだった。

両親は、結婚相手に望むことを尋ねた。しかし、トキは働き者で金を稼ぐ男以外に希望はなかった。あくまで借金返済のための結婚だと割り切っているからだ。
ただし、もし叶うのならば、怪談の好きな人がよいと述べた。怪談好きであれば、たとえ人間以外の化物でもよいというのがトキの願いだった。

しかし、トキの見合い相手探しは難航した。
向こう見ずな父・司之介は勤めの牛乳配達にかこつけて県知事の屋敷に出向き、知事の息子を婿に欲しいと直談判した。身分違いをわきまえない失礼な要望ですぐに叩き出された。牛乳配達の親方からもこっぴどく叱られた。

母・フミは遠縁であり、トキの勤め先の紡績工場も経営している雨清水家の妻・タエ(北川景子)に相談した。自分で見合い相手を探しても見つからないと言ってなかば泣きついたのだ。するとタエはすでに見合い候補を探し始めていると答えた。トキが工場で婿探しをしていると喋っているので、夫・傅(堤真一)を経由して話を聞いていたのだ。
その返答にフミはいささか面白くなかった。トキの母親である自分になんの連絡もなくタエが独自に探していたことで、自分が除け者にされたような気分になったからだ。それを理解してタエは素直に謝った。

ある朝、工場に出勤したトキは、一緒に神社で占いをしたせんに結婚相手が見つかったと知らされた。確かに彼女の占い結果は早くに良縁に恵まれるというものだった。
占いがよく当たるという証拠を見せられたと同時に、せんが羨ましくなってトキの表情は硬くなった。

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NHK『ばけばけ』第5回

某知人がハンバートハンバートの背の高い方と蕎麦屋で相席になったことがあると聞いたことのある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第5回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

明治19年(1886年)、18歳のトキ(高石あかり)は織物工場で働いていた。同僚はみな貧乏な家の娘で、今の暮らしには良いことも娯楽もないとボヤいてばかりいる。
トキは最近良かったこととして、新しい怪談を聞いたこと、幽霊の夢でうなされたこと、金縛りにあったことなどと答えた。調子外れの回答に同僚たちにかすかな笑いが広がった。

その織物工場は、トキの遠縁にあたる雨清水傅(堤真一)が武士の道を外れて創業したものである。無事に軌道に乗り、トキをはじめ何人かの女工を雇って順調に経営していた。
その日も、女工たちへカステラを差し入れた。貧しい女工たちにとっては生まれて初めてのカステラであったし、たまには良いこともあるものだと喜んだ。

雨清水は、他の女工たちの見ていないところで、トキにカステラを一切れ手渡した。家で内職に精を出している母・フミ(池脇千鶴)への土産だという。

一日中働き、家に帰り着くとトキはヘトヘトだった。それと前後して、同じように疲労困憊した父・司之介(岡部たかし)も帰ってきた。彼は5年前から牛乳配達の仕事で日銭を稼いでいる。

それでも松野家の暮らしは最底辺だった。松江城のそばにあった屋敷はとっくに手放し、現在は川の反対側にある貧民街の長屋に暮らしていた。長屋のすぐ隣は遊郭である。
日々の食事にも事欠き、膳にあるのは飯の他には漬物としじみ汁だけだった。しじみ汁は一家の大好物であるが、椀の中にしじみはほんの少ししか入っていなかった。

雨清水からのカステラを手渡すと母・フミは大喜びした。彼女もカステラは生まれて初めてであり、その甘い香りにうっとりした。おっかなびっくり指先に小さな欠片を取って口に運ぶと、その美味しさに感激した。
その様子を見た父・司之介は自分にもよこせと迫ってきた。しかし、それはフミへの土産だと言って、トキが激しく抵抗した。父と娘の争いはまるで子供のような幼稚さであり、フミはその様子を見て笑った。トキと司之介もどこか楽しそうにじゃれ合っている。
貧しくはあったが、まんざらでもない生活であった。

それでもトキは昔の生活を思い出すことがある。長屋の井戸からは、屋敷のあった川の反対側がよく見える。
トキの幼馴染で、現在は同じ長屋に住んでいるサワ(円井わん)がやってきた。川の向こう側を眺めるトキと一緒になって、こんなはずではなかったとボヤいた。彼女は教師になって家を支えるという夢を持っていたがそれが叶わなかったのだ。

そうこうしていると、隣の遊郭に来ていた酔客が井戸の付近で立ち小便をした。叱りつけるトキとサワの声で遊女のなみ(さとうほなみ)が駆けつけてきた。
その遊女・なみに向かってサワは悪態をついた。このような無様な酔漢から金を貰って生きるなど悲しいことだと言うのだ。

その売り言葉になみは、女が生きていくには身を売るか男と一緒になるしかないと捨て台詞を吐いて去っていった。

ある日、森山(岩谷健司)が借金の取り立てにやって来た。滞納している先月分もまとめて払えというのだ。しかし、松野家は今月分にすら足りない額しか出すことができなかった。
すると森山はトキに目をつけた。遊郭に売ってしまえというのだ。
トキを何よりもかわいがっている祖父・勘右衛門(小日向文世)は激しい剣幕で怒鳴りつけた。元武士の迫力に押され、森山は逃げ帰った。

騒動が収まると、トキは婿を貰うと言い出した。借金を返すには、婿を取って働き手を増やすしかないというのだ。
現状を踏まえれば、家族の誰もその提案を却下することはできなかった。

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NHK『ばけばけ』第4回

今日は我が最愛の山瀬まみの誕生日であることをたいへんめでたく祝福している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第4回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

父・司之介(岡部たかし)がふらりと家を出たまま10日以上帰ってこなかった。
トキ(福地美晴)は学校の行き帰りで街中を探し回った。

するとついに、宍道湖の岸に佇む父・司之介を見つけた。
司之介はトキの姿を見つけるや否や、湖の中へ逃げ出した。トキも後を追い、ずぶ濡れになりながら父にすがりついた。
「すまん」以外は何も話そうとしない父に向かって、そんな父に向かってトキ、失踪した理由が何であれ生きていただけで良かったと言い、一緒に帰るのだと強い口調で命令した。
さらに、司之介がいないと大好きなしじみ汁もまったく美味しくないと述べた。そこに母・フミ(池脇千鶴)も現れ、異口同音にしじみ汁の味気なさを語った。

ふたりの説得で、ついに司之介は折れた。
ただし、トキには翌日から学校に行かずに働いてほしいと継げた。それというのも、ウサギ相場が大暴落し、今やウサギには全く値がつかないという。司之介が仕入れた大量のウサギが捌けなくなったばかりか、事業拡大に投じた莫大な借金だけが残ることとなった。その額は、司之介が一生働いても返せないほどだという。
トキを学校に行かせる金はなくなったが、大好物のしじみ汁だけは飲ませることを司之介は約束した。

こうして司之介は家に帰ってきたが、その日の食卓にしじみ汁はなかった。
代わりに「しめこ汁」という初めて見る料理が出ていた。それはそれは美味で、祖父・勘右衛門(小日向文世)は有頂天になった。
ただし、「しめこ」が何かと聞いても、司之介とフキは口ごもって答えようとしなかった。

嫌な予感のしたトキは、ウサギの在庫置き場を見に行った。すると、そこには空っぽのカゴだけが積まれていて、一羽のウサギもいなかった。それらは全て絞められて食卓に上がったのだ。
祖父とともにウサギをかわいがっていたトキは、心の底から恨めしく思った。

昔からトキは、恨めしいことがあると母・フキに怪談本を読んでもらった。そうすることで恨めしさが紛れたのだ。
その夜も読んでもらったが、トキの恨めしさは増すばかりだった。

それと同じ頃、アメリカのシンシナティに暮らすレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)は自分で自分のこめかみに銃口を向けていた。
新聞記者の仕事を失い、無一文で餓死寸前だったのだ。遺書に、自分には何も無い、金もパンも家族も、そしてこの遺書を読む友人の一人もいないなどと書き綴った。
いよいよ覚悟を決め、引き金に指をかけたが、彼には銃弾を買う金もなかった。死にきれなかった。
そんな境遇を恨めしく思った。

遠く離れた場所で同じように恨めしさを募らせているふたりは、この5612日後に出会うことになる。

* * *

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NHK『ばけばけ』第3回

マジで別宅の隣がウサギ屋である当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第3回めをNHK ONE(未ログイン状態)で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

父・司之介(岡部たかし)は、家に金成(田中穂先)という男を招いた。彼と一緒にウサギの商いを始めるという。司之介と金成は城勤めの頃からの知り合いで、金成からよく儲かると教わったという。
金成によれば、舶来物の珍しい柄のウサギが世間で人気を博しており、中には5円で仕入れたウサギが600円で売れた例もあるという。母・フミ(池脇千鶴)がざっと計算したところ、その額はトキ(福地美晴)を小学校に100年間通わせることのできる金額に相当した。

フキは話がうますぎると半信半疑だった。しかし、今までくすぶっていた司之介がやっと元気を取り戻したと思うとが嬉しくて、反対せずに応援することにした。
祖父・勘右衛門(小日向文世)は、武士が商売を始めると聞いて烈火のごとく怒った。しかし、トキが父と一緒になって頭を下げると許すことにした。彼は孫にはめっぽう甘いのだった。

それから数週間が経った。
ウサギは飛ぶように売れ、司之介の商売はしごく順調だった。1ヶ月の売上は200円にもなった。
あんなに怒り心頭だった祖父・勘右衛門も今ではトキと一緒になってウサギをかわいがった。松野家の食卓も豪華になった。以前は飯とめざし、そしてしじみ汁程度のものだったが、いまではおかずが5品もつくほどだ。ただし、松江に生きる者として、好物のしじみ汁だけは欠かさなかった。
松野家では笑顔が絶えなくなった。トキが生まれてこの方、家族みんながこんなにもずっと笑っているのは初めてのことだった。

この前まで、トキは大きくなったら教師になりたいと言っていた。しかし、いつ気が変わって、もっと大きな夢を抱くとも限らない。彼女がどのような進路を選ぼうとも必ず叶えてやれるよう、より多くの蓄えが必要だと司之介は考えるようになった。
そこで、相場が有利な今のうちに借りれるだけの金を借りて商売につぎ込むことを決めた。松江武士は猪突猛進を心情としており、それに従うのだと司之介は得意になった。

ある日、父・司之介はトキを連れて松江の町を散策していた。
その時、借金のかたに売られた娘が逃げ出し、複数の男たちに追いかけられて捕まる騒ぎがおきた。その他にも、粗末な身なりの男女が縄で縛られて連れて行かれる様子が見られた。それらはいずれも借金で身を持ち崩した当事者や親族であるようだった。
司之介は、ウサギが失敗していたら自分たちもああなっていただろうと話すのだった。

ある夜、家でほろ酔いになった司之介は酔い覚ましのためにふらりと家を出ていった。
しかし、結局その日は家に帰ってこなった。

* * *

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