NHK『カーネーション』第23回

料理やインテリアなど家庭的ご婦人キャラで売っている山瀬まみであり、衣料品コラボもしているけれど、彼女が裁縫DIYネタをあまりしないのはどういうわけだろうかと考え始めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第23回目の放送を見ましたよ。

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第4週「誇り」

根岸(財前直見)による個人レッスンがいよいよ始まった。

糸子(尾野真千子)に最初に与えられた課題は、自分で洋服を着てみる事だった。糸子は、洋服に一度も袖を通したことがないと言って嫌がるが、根岸はそれだからこそ着てみなくてはならないとピシャリと言った。

糸子は見よう見まねでワンピースを来た。そのワンピースは、根岸が着ているものと色が違うだけで、全く同じデザインだった。それにもかかわらず、糸子が着ると野暮ったく、全く似合っていなかった。糸子は落ち込み始めた。
次に根岸が与えた課題は、どうして似合わないのか自分で原因を見つけるというものだった。糸子は、自分が生まれつき足の短いせいだと思った。それに対して、根岸はもう一度ふたりを見比べるよう指示した。すると、ウェストの位置が違うことに気付いた。ベルトを高い位置で締め直すと見違えるように足が長くなった。さらに、ヒールの高い靴を履かせてもらったら、もっと足が長くなった。
糸子は少し嬉しくなってきた。

次のレッスンは、洋服で街を歩くことだった。糸子はとても恥ずかしく、背中を丸め、根岸の後ろにトボトボと付いていくのがやっとだった。
その時、根岸が少し話題を変えて、糸子に好きな花を尋ねた。糸子はカーネーションが好きだという。カーネーションはカビが生えるまで堂々と咲き、簡単にはしおれない。根性がある花だから一番好きなのだと答えた。
すると根岸は、自分がカーネーションになったつもりで歩け、自分に花を咲かせて歩けと命じた。洋服を着て、胸を張って歩くことが一番大切なことであり、それこそ自分の使命だと肝に銘じるよう指示した。

ふたりは、心斎橋まで足を伸ばした。そこで、糸子は発見があった。これまでとは違う種類の人々と目が合うこと、頻繁に人に声をかけられること、自分が鏡ばかり気にすること。

けれども、やはり洋服で出歩くことは、とてもくたびれた。カフェで休憩することになった途端、姿勢を崩して座り込んだ。しかし、そういう態度を根岸は許してくれなかった。常に立ち居振る舞いを美しくするよう注意した。

カフェでは、洋服を着る側ではなく、作る側の心構えを教えてもらった。
洋服を着て歩くことは、誰しも(根岸でさえ)疲れて緊張するものである。そういった感情を取り除き、着る人が自信を持つことのできる洋服を作ることが肝心なのだと教授した。洋服は人々に品格と誇りを与えてくれる。そして、品格と誇りを得て初めて、人は夢や希望を持てるようになる。それを手助けするのが作り手の役目だと説いた。

岸和田に戻ってくると、道の向こうから泰蔵(須賀貴匡)がやってくるのを見つけた。知り合いに見られるのが恥ずかしい糸子は、思わず根岸の後ろに隠れてしまった。その様子に気付いた根岸は、糸子の背中を押して泰蔵に引き会わせるようにした。
意を決した糸子は、ピンと背筋を伸ばし、颯爽と歩き始めた。泰蔵に対して優雅に会釈だけすると、軽快に歩き去った。泰蔵は言葉も発せず見とれた。その一瞬で、糸子は洋服の振る舞いを会得したようだった。

ただし、糸子がその日学んだ最大のことは、やはり和服が一番楽だということだった。

そして、根岸と一緒に小原家の夕食が始まった。
母・千代(麻生祐未)は、根岸をもてなすためにカツレツを作ってみたが、加減がわからずにひどく焦がしてしまった。根岸は表情を変えずにそれを口にしたが、すぐにむせてしまった。。

見兼ねた祖母・ハル(正司照枝)は、自分が作ったイワシの煮付けを差し出した。善作以外は誰も食べようとしない田舎料理であったが、半分根岸を試すつもりでもあったのだ。根岸は、そのイワシを心の底から美味しそうに食べた。おかげで、それまで根岸のことを毛嫌いしていた祖母も機嫌が直り、彼女のことを見なおした。

根岸に追いつくため、なんでも彼女の真似をしようと思う糸子はカツレツを食べた。しかし、とても不味かった。今まで食わず嫌いだったイワシの煮付けも、今度から食べてみようと思うのだった。

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NHK『カーネーション』第22回

俺がミシンを完璧に使いこなせたとしても、意中の女の子にいきなり手作りのワンピースなんかをプレゼントしたら、喜ばれるどころか変態扱いされるかもしれないよなと心配し始めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第22回目の放送を見ましたよ。

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第4週「誇り」

善作(小林薫)は心斎橋へ根岸(財前直見)を訪ねた。
カフェで生まれて初めてのコーヒーを飲みながら、根岸が糸子(尾野真千子)に洋裁を教えるよう頼みこんだ。しかし、根岸は会社に雇われて初心者向けのミシン講習を担当しているのであり、それは簡単に応じられないと断った。

けれども、そんなことで引き下がる善作ではなかった。自分は捨て身の覚悟で糸子に洋裁を学ばせたいと話し始めた。自分は呉服屋だが、これからは洋服の時代だと認めざるをえない。糸子は後先考えずに行動するタイプだが、洋服に関してだけは10年近くも全身全霊で打ち込んできた。自分はもう第一線から身を引き、糸子を引き立てる役に立ちたい。家財道具一式を売り払ってでも、根岸に謝礼を支払う覚悟があるとまくし立てた。そして、洒落たカフェの真ん中で、善作は土下座をはじめた。

東京で洗練された生活をしている根岸は、土下座されて自分の方が恥ずかしくなった。また、善作の熱意に圧され、ある条件と引き換えに糸子への指南役を引き受けることとした。

その夜遅く、善作はひどく酔って、岸和田に帰宅した。寝ている娘たちを全員叩き起こし、要領を得ないまま、コーヒーの話をひたすら続けるのだった。糸子たちはいったい何が起きているのか想像も付かなかった。

幼なじみの勘助(尾上寛之)が、不況のせいで務めていた紡績工場をクビになった。糸子はからかい半分、心配半分で彼を訪ねた。しかし、ちょうど和菓子屋の主人が身体を壊し、それを助けるために働き始めたという。その店は、勘助が小さい頃、何度もだんごを盗んでいた(第4回参照)和菓子屋だった。
働き始める時、勘助は主人に過去の罪を全て謝ったという。すると、主人は怒るどころかとても喜んだそうだ。それで勘助もたいそうやる気を出し、工場に務めていた時とは違って、活き活きと楽しそうに仕事をしていた。

糸子は悔しくなった。勘助が心配した以上に元気で肩透かしだったことや、彼はすぐに次の仕事が見つかったのに自分は何もせずに時間だけが過ぎていくことに腹立たしかった。
家に帰ると、善作が二階で謡を教えていた。その呑気さにも腹が立った。さらに、祖母(正司照枝)は訳もわからずイライラしており、雰囲気が悪かった。
母(麻生祐未)には、謡の弟子に挨拶をするよう促された。どうして自分がそんな者に挨拶せねばならないのかと、不承不承部屋を覗いた。

すると、そこでは根岸が一対一で稽古を受けていた。
根岸は今月いっぱいで東京に帰ってしまう。その前に1週間の休暇を取り、糸子の家に寝泊まりして洋裁を教えるのだという。その謝礼として、善作から謡を習うことになったのだという。
全て善作の根回しの結果なのだが、善作は根岸にその事は伏せておくように願い出てあった。そんなことを知らない糸子は、根岸に感謝してもしきれない程大喜びした。

いよいよ根岸が岸和田にやってきた。かっこ良く、颯爽と歩いてきた。

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NHK『カーネーション』第21回

女の子から男子へのプレゼントとして手編みのニット品はありがちなのに、ミシンを使った縫製品がポピュラーじゃないのはなんでだろうと不思議に思い始めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第21回目の放送を見ましたよ。

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第4週「誇り」

女たらしで有名な歌舞伎役者・中村春太郎(小泉孝太郎)と一緒に居た女性は奈津(栗山千明)だった。糸子(尾野真千子)は急いで注意しに行こうとしたが、心斎橋で騒ぎを起こすのは得策ではないと祖母ら(十朱幸代、渡辺大知)に止められた。
糸子は軽率な奈津のことに腹を立てながら家に帰った。

家に入る前、善作(小林薫)を説得しなければと、糸子は自分を奮い立たせた。父に秘密で心斎橋に通っていたこと、神戸の祖母にミシンを買ってもらうこと、そのミシンでもって洋裁講習を受けたいことなどをきちんと話さなければならないのだ。

しかし、その日はただでさえ善作は虫の居所が悪かった。糸子が自分に内緒で心斎橋に行っていたことが気に入らない。その上、糸子が神戸の親戚の世話になるということは、自分の不甲斐なさを指摘されているようでますます気に入らなかった。善作は烈火のごとく怒り出し、当然、糸子の願いは聞き届けられなかった。

その夜、糸子は布団の中で泣き続けた。自分には夢も希望もなくなったと悲しくなって泣き続けた。その声は、階下の善作にも聞こえていた。

今年もだんじり祭が始まった。
自分の将来を悲観していた糸子であったが、だんじり祭を見物するとすっかり気分が晴れた。くよくよと悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなるほど、だんじり祭は糸子にとって素敵なものだった。

糸子は見物客の中に奈津を見つけた。駆け寄って、春太郎との付き合いをたしなめた。当然、奈津は反発し、小突き合いの喧嘩になった。そこへ泰蔵(須賀貴匡)が止めにやってきた。泰蔵への恋心の忘れられない奈津は、びっくりして逃げ出してしまった。

その頃、パッチ店の大将・桝谷(トミーズ雅)が善作に会っていた。
桝谷は糸子を解雇したことを謝罪しながら、糸子にはたいへん見所があると褒めた。桝谷がこれまで見てきた職人の中でも、糸子は腕が立つし、将来の見通しにも明るいという。もし彼女が娘だったら、自分なぞ早々に引退して、店を丸ごと任せてしまいたいほどだと告げた。さらに、控えめで失礼に当たらないように、これからは和服ではなく洋服の時代だと善作に助言するのだった。
善作は桝谷の話を否定することはできず、何かを思いながら黙って聞いていた。

翌日、善作は木之元(甲本雅裕)に案内させて心斎橋へ出かけた。木之元は店頭をミシンの実演販売に貸した縁で、根岸(財前直見)の居所を知っていたのだ。恐る恐るミシン教室の扉を開け、善作は根岸に面会した。

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NHK『カーネーション』第20回

モテ要素としての料理男子はすでに普及しすぎているので、裁縫男子というニッチで戦ってみようかと考え始めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第20回目の放送を見ましたよ。

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第4週「誇り」

糸子(尾野真千子)は近所で行われていたミシンの実演販売を遠巻きにうっとりと眺めた。
実演終了後、勇気を出して販売員の根岸(財前直見)に洋裁を教えて欲しいと声をかけた。ところが、岸和田での実演販売は今日までなので応じかねるという。その代わり、明日からは大阪の心斎橋でミシン教室が開かれるので、そこに顔を出すといいと誘ってくれた。

翌日、家の中の雰囲気が少し悪かった。洋装を見慣れない祖母のハル(正司照枝)は、根岸のことをけばけばしく品のない女だと陰口を言っていた。それに対して、根岸のことを気にいった善作(小林薫)が弁護し、ちょっとした親子喧嘩の様相を呈した。それに加えて、善作は心斎橋など若い娘が一人で行く所ではないとブツブツ言っている。
糸子は、根岸を訪ねて心斎橋に行くとは言い出せなくなった。仕方ないので、家族に黙って出かけることにした。

心斎橋のミシン教室は大盛況だった。会場に準備されているミシンの数よりも、明らかに生徒の数の方が多かった。それでも、3年間のミシン経験がある糸子は、上級者として自分が優遇してもらえるだろうと考えていた。

ところが、開始早々、糸子の期待は裏切られた。この教室は、ミシンを購入した初心者向けのものであり、購入者しかミシンに触れられないという。それ以外の者は周りで見学することしか許されないというのだ。当然、糸子は見学するのみだった。また、教えられる内容も初歩中の初歩で、糸子の役に立つことは一つもなかった。
それでも、翌日には高度な内容に進むだろうと期待し3日続けて通った。けれども、少しも初心者の域を出ず、糸子はがっかりする一方だった。

我慢の限界を迎えた糸子は、講習会終了後に根岸に声をかけた。自分はミシンの基本操作は全て習得しているので、高度な洋裁の技術を教えて欲しいと直談判した。しかし、根岸の返答はつれないものだった。自分はミシン購入者に基本操作を身に付けさせるために来ている。糸子が望むような高度な内容を一足飛びに教える訳にはいかないというのだ。
これ以上交渉しても無駄だとわかった糸子は、帰宅の途についた。

心斎橋をしょぼくれて歩いていると、神戸に住む祖母の貞子(十朱幸代)といとこの勇(渡辺大知)にばったりと出くわした。家族に内緒で来ている糸子は逃げ出そうとするが、貞子らも内緒で心斎橋に来ているのだと説明し、互いの秘密を守ることを約束し合流した。貞子は孫が可愛くて、勇に様々なものを買い与えている。そのせいで家族に批難されているのだ。
高級喫茶店でお茶を飲みながら、糸子も自分が心斎橋に来ていた理由を全て話した。孫に甘い貞子は、ミシンを買ってやる、購入者として堂々と洋裁の講習を受けろと言ってくれた。しかし、いきなりミシンを手に入れても、家に持って帰っては善作が激怒するに決まっている。まずは善作と話し合いをするから、その後に買ってくれと頼むのだった。

店内を見回すと、女たらしで有名な若手歌舞伎役者・中村春太郎(小泉孝太郎)が来ていた。連れの女性について、中村に騙されるなんてバカな女だとヒソヒソ話していると、なんとその相手は奈津(栗山千明)だった。

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NHK『カーネーション』第19回

楽しそうにミシンを操作する糸子を見ていたら自分でもやってみたくなり、数千円の安いミシンなら買って遊ぶのもアリだと思い始めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第19回目の放送を見ましたよ。

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第4週「誇り」

昭和5年(1930年)、晩夏。
糸子(尾野真千子)はパッチ店を解雇された。
店主の桝谷(トミーズ雅)の言い分は、不況で資金繰りが悪化し、人件費を削減しなくてはならないというものだった。糸子の能力は認めているものの、糸子以外に辞めさせられる人員はいないと言う。男は家族を養うために仕事を失うわけにはいかない。女の糸子に辞めてもらうしかないと正直に告げた。
糸子は、桝谷や他の職人たちが悪いのではない。不況という現象のせいだと自分を言い聞かせ、解雇を受け入れた。

糸子の家族は突然のことに驚いた。ただし、同情してくれたのは母・千代(麻生祐未)だけだった。

父・善作(小林薫)は、糸子に学校を辞めさせてパッチ店に行かせた本当の理由を正直に打ち明けはじめた。端的に言って、カネのためだった。小原家の家計は火の車なのだ。糸子の学費が浮いた分で、次女(柳生みゆ)を学校に行かせることができた。糸子が持ってくるパッチ店の給料で三女(眞木めい)を、アッパッパの売上で四女(吉田葵依)をそれぞれ学校に行かせることができる。ところが、糸子のもたらすカネがなくなると、それができなくなるというのだ。

善作は、今や糸子も立派な働き手なのだから、失った収入分をすぐに取り戻すよう働き口を見つけろと厳に言い含めた。糸子は早速、自分の足で仕事を探し始めるが、どこに行っても断られるばかりだった。そうしている間に夏も終わった。これからはアッパッパも売れなくなる。ますます一家の経済状況が悪くなることは明らかだった。(そのくせに、善作は近所で将棋をするなどして緊迫感がなかった)

そんな時、洗練された洋装の女性・根岸良子(財前直見)が町に現れた。彼女はミシンの実演販売員だった。小原家の近所の電器店の店頭を借りて実演販売を始めた。

木之元(甲本雅裕)を介して、善作は根岸を紹介してもらった。根岸はこれまで洋裁ばかり勉強してきたが、これからは日本の伝統も学んでいきたいと挨拶した。善作が呉服屋で、謡教室も開いていると聞き、根岸は善作に興味を持ったようだった。一方の善作は、見目麗しき女性を前にして緊張し、借りてきたネコのようになってしまっていた。

実演販売の初日、相変わらず仕事が見つからない糸子はしょぼくれて帰ってきた。すると、電器店で行われているミシンの実演販売に気付いた。

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NHK『カーネーション』第18回

女の子から初めて手芸品をもらったのは中学2年生の時で、それは少々ヤヤコシイ状況であったわけで、僕と仲の良かった女子クラスメイト(互いにタイプではなく、恋仲でもなかった)が「AちゃんはTくんの事が好きで、彼の誕生日に手編みの手袋をあげるつもりなの。だけど、編み物は初めてで、うまくいくかどうか心配してるの。そこで木公を練習台として、まずはアンタの手袋を編むことにしたの。手形採らせて。」と言うもんだから、しかたねぇなぁとノートに手を広げてシャープペンシルできちんと輪郭をなぞったまではいいが、数週間してできあがった白いミント型手袋は編目がギチギチに詰まっていて、どんなに伸ばして履いても掌が三分の一ほどはみ出してしまい、冬の北海道で着用するにはどうしようもない代物だったわけだが、Aちゃんが傷ついたり自信をなくしたりするのもかわいそうだと思い何日かそれを履いて登校したのだが、やっぱり手首にたっぷりと雪が吹き込んで大変な思いをしたけれど、それはまだ序の口で、編んだ本人のAちゃんがスヌーピーだと言い張る手の甲に施された模様はどう見ても潰れた豆餅のような物体であり、女子からの視線が気になるお年ごろでもあったわけで、ただでさえダサい自分がもっとダサく見えることに恐怖し、家に放置したわけだけれども、気づいたら次シーズンには、なんとうちの母親がそれを履いて自宅前の雪かきをしており、どうやら彼女の手のサイズにはピッタリと収まったようであるし、ああ良かったなぁ、これで豆餅スヌーピーも報われるだろうと感慨にふけり、未だに実家に帰ると物置部屋の片隅にそれが落ちているのを見かけては「結局、AちゃんはTくんにフラれたんだよな。その後Aちゃんは幸せにしているんだろうか。器量も気立ても編み物も、どれ一つとっても俺のタイプではなかったけれど。」などと過ぎ去りし日々を回想したりする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第18回目の放送を見ましたよ。

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第3週「熱い思い」

善作(小林薫)に自分の作った洋服を着させて認めてもらおう。そう決意した糸子(尾野真千子)であったが、肝心な洋服の縫い方が分からない。パッチ店の大将・桝谷(トミーズ雅)のワイシャツをじっくり観察したり、ミシンを操作しながら様々に考えをめぐらしたり(そして、縫製を失敗する)していたが、どうにもうまくできそうに思えない。

パッチ店のみんなに事情を説明し、相談にのってもらった。すると、田中(湯浅崇)がアッパッパを作ることを勧めてくれた。本来は女物であるが、着やすくて涼しいので今の季節には最適であり、自分も家でくつろぐ時に着ているという。浴衣の生地を流用できるし、一般的な洋服に比べて縫うのも簡単なので、糸子ならうまくやれるだろうと言うのだ。
パッチ店の女将(一木美貴子)は浴衣用の上等な生地を見つけてきてくれた。みんなに応援されていることに勇気づけられた糸子は、ついにアッパッパを作り始めた。

善作用のアッパッパには、独自の工夫を盛り込んだ。足が出過ぎないように丈を長めにしたり、襟を着物のように仕上げたりと、善作が抵抗なく着れるようにした。生地の糊付けや裁断は、祖母(正司照枝)の協力を得て、自宅で善作の目を盗んでこっそりと行った。呉服屋なので、浴衣の生地を扱うのに適した道具がたくさんあったのだ。

縫製はパッチ店のミシンを借りて行った。そしてついに、アッパッパは完成した。それは糸子の自信作であったし、店のみんなも出来栄えをたいそう褒めて、感心してくれた。
いよいよ、善作に手渡す段となった。

その頃、善作はとても機嫌が悪かった。
善作と一緒に「日本の伝統を守る、洋風なものに徹底して対抗する」などと気勢を上げていた、隣の履物屋・木岡(上杉祥三)が約束を破って洋靴を売っていることを知ったのだ。木岡は、商売は時流には逆らえない、実際によく売れているなどと抗弁するが、善作の血圧は上がる一方だった。

家で待っていた糸子は、善作に声をかけたが無視された。少し様子がおかしいとは思ったが、まさか善作が激怒しているとは思いもしなかった。
夕食の前にあらためて自作のアッパッパを差し出した。それを一瞥した善作は、汚いものでも触るかのようにつまみ上げ、妻・千代(麻生祐未)に捨てるように命じた。それ以上、アッパッパについても糸子の行為に関しても、何も言わなかった。

しかし、そんなことでめげる糸子ではなかった。こっそりとアッパッパを取り戻して、自宅の呉服店の商品棚に忍び込ませておいた。

客がやって来た。善作は浴衣を買わせようと勧めるが、その客は懐紙だけを買いに来たと言って聞く耳を持たない。ところが、棚を眺めているうちに、糸子のアッパッパを発見した。客はちょうどそういう物が欲しかった、他所で探しても見つからなくて困っていたという。
売り物ではないと説明する善作であったが、客の剣幕に負けて、つい値段を付けて売ってしまった。

それから、善作の態度は豹変した。店で堂々とアッパッパを販売し始めた。作製は当然糸子の役目であった。彼女は、2日に1着のペースで作り続けなければならなくなった。そして、善作は涼しくて動きやすいといって、自分もアッパッパを来て街中を歩くようになった。
糸子は遊びに行くのもままならず、毎日遅くまでパッチ店に残ってミシンを動かした。

ある夕、大忙しでアッパッパを縫っている糸子に、パッチ店の大将が真剣な様子で声をかけた。店を辞めて欲しいというのだ。

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NHK『カーネーション』第17回

最近寒いし、朝はなかなか起きられないのだが、ベタながら「糸子に元気をもらおう!」と思えばサクリと布団から出ることのできる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第17回目の放送を見ましたよ。

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第3週「熱い思い」

昭和5年(1930年)夏。
糸子(尾野真千子)がパッチ店で修行をはじめて2年が経過した。
店では未だに一番下っ端であった。それでも、ミシンでの縫製も任されるようになり、裁断から仕上げまで一人でこなせるようになった。しかし、まだまだ失敗ばかりで、先輩に怒られては糸をほどいてやり直しを命じられている(糸をほどく道具にちなんで「目打ちの小原」というあだ名まで付けられた)。
けれども、自分自身で成長が感じられ、活き活きと仕事に打ち込んでいた。

最近の糸子は、幼なじみの勘助(尾上寛之)の家によく出入りをしていた。中学を卒業して紡績工場で働き始めた勘助は、仕事がキツイといっては弱音を吐き、しょぼくれてばかりいる。就職経験が長く、元来姉御肌の糸子は、勘助を叱咤激励した。それでも勘助の態度は改まらず、糸子は呆れるのだった。

勘助の義理の姉・八重子(田丸麻紀)と話をするのも楽しかった。一見すると彼女は地味なタイプだが、よく見ればおしゃれな女性で、ファッション雑誌を購読しており、洋服にも詳しかった。

八重子から洋服を縫わないのかと聞かれ、自分の本来の夢が後回しになっていることに気付いた。パッチ店での仕事は楽しく、真剣に取り組んではいるが、洋服を縫うという目的を見失っていたのだ。帰宅すると、幼い頃に祖母からもらったドレス(第5回)を引っ張り出し、みんなから忘れ去られ色あせてしまったドレスの様子に、自分の洋服への夢を重ねあわせた。そして少々落ち込んだ。

がっかりしながら家の前の往来を見ていると、洋服を素敵に着こなした女性の後ろ姿が見えた。このあたりで洋装をする人は珍しく、糸子は慌てて後を追った。するとそれは奈津(栗山千明)だった。糸子は腹の底から悔しくなった。自分の夢だったものが、奈津に先をこされて心底悔しかった。自室の床にのたうち回って悔しがった。

自分も早く洋服を作らなければ、と決意した。しかし、決意した瞬間、父・善作(小林薫)が一家に洋服禁止令を出していることを思い出した。洋服を作っていることがバレたら、父がどれだけ激怒するか分からない。糸子は困ってしまった。

八重子に悩みを打ち明けると、彼女は最初に善作用の洋服を作ってみたらいいとアドバイスしてくれた。口では文句を言っているが、娘が手作りした物なら喜ぶし、実際に着てみたら良さもわかるだろうというのだ。
糸子はその気になった。

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NHK『カーネーション』第16回

通勤経路にコスモス畑があり、その横をミニスカを翻しながら自転車で走っていく女子高生を眺めては「コスモスの花言葉は少女の純真か・・・」とひとりごちている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第16回目の放送を見ましたよ。

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第3週「熱い思い」

昭和3年 (1928年)春、糸子(尾野真千子)がパッチ店で修行を始めて半年が経った。いまだに毎日叱られてばかりだが、充実した毎日だった。夜の居残りミシン練習にも楽しく取り組んでいた。

糸子は布の裁断を教えてもらえることになった。山口(中村大輝)は裁断を教えてもらうまでに2年かかったのに比べると異例の早さだった。山口は面白くなかったが、周囲が糸子の努力を認めた結果であり、彼にはもっと頑張るようにと促した。糸子は少し鼻が高かった。

そんな矢先、神戸で繊維会社を経営する母方の祖父・清三郎(宝田明)が岸和田にやってきた。パッチ店をこっそり覗くと、失敗する度に折檻されている糸子が見えた。孫のかわいい清三郎は心を痛めた。

しばらく観察した後、清三郎は糸子を早退させて心斎橋のカフェへ連れて行った。糸子は珍しい食べ物や美しく着飾った女性たちに目を奪われた。和服姿の女給たちが着用しているフリル付きのエプロンも興味深く眺めた。

糸子の境遇に胸を痛めた清三郎は、糸子に神戸へ来るよう誘った。清三郎の会社には大量のミシンがあり、糸子はいつでも好きなだけ使うことができるという。
しかし、糸子は即座に断ってしまった。祖父が自分に甘いことをよく知っており、それでは何も自分の勉強にならないと思ったからだ。店では怒られてばかりだが、それだけ必死になって勉強しようと努力する気持ちになる。だから今の環境が良いと説明した。
今のまま修行を続けて、一人前になったらきっと祖父の会社を手伝うと言うのだった。そこまで言われた清三郎は、糸子を説得することができなかった。それどころか、糸子の健気さに胸を打たれ、目の前で涙ぐむのだった。

4月12日、吉田屋の大広間で泰蔵(須賀貴匡)と八重子(田丸麻紀)の結婚式が挙げられた。糸子らも招待され、善作(小林薫)はふたりの門出を祝福する謡を披露した。天気の良い大安でみんな幸せそうだった。

ただし、奈津(栗山千明)だけは悲しみにくれていた。泰蔵の弟・勘助(尾上寛之)とは小学校の同級生であり知らない仲ではないし、家の料理屋の次の女将として挨拶するのが筋だった。しかし、ずっと庭で泣いていた。何年間も密かに思いを寄せいていた泰蔵の結婚がどうしても許せなかった。

一度だけ奈津に相談を受けたことのある糸子であったが、そんなことは少しも気にしてないようだった。

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NHK『カーネーション』第15回

カーネーションの花言葉は「母の愛」だそうだが、山口百恵の『秋桜』(さだまさし作詞・作曲)の印象があまりに強すぎて、コスモスの花言葉こそが「母の愛」だと思いこんでいた(実際は「少女の純真」)当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第15回目の放送を見ましたよ。

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第3週「熱い思い」

風邪をこじらせた糸子(尾野真千子)は、そもそも役に立たない上に風邪をうつされてはかなわないと言われ、家に帰された。裁縫をやらせてもらえず、役立たずとまで言われて、糸子は打ちのめされた。
帰宅して布団で休んだが、店を辞めたい、女学校に戻りたいと後悔ばかりしていた。ただし、家族にはまだ打ち明けずにいた。そのうちに眠ってしまった。

ふと、次女・静子(柳生みゆ)が母・千代(麻生祐未)に不満を訴えている声が聞こえてきた。長女の糸子ばかり新しい着物を買ってもらって、自分はお下がりだ。糸子は学校を辞めたいと言えば辞めさせてもらえた。糸子ばかりが自由で不公平だと言うのだ。
しかし、母は即座にたしなめた。糸子は自分で父を説得して自由を獲得したのだ。女はただでさえハンディがあるのに、糸子は自分で道を切り開いた。それでいて愚痴を言わない。静子は糸子のような努力もせずに不満を言うのは筋違いだと諭した。

そんなやりとりを寝床で聞いていた糸子は嬉しかった。自分が褒められて嬉しかった。すっかり体調が回復し、精神的な元気も湧いてきた。
相変わらず、父・善作(小林薫)には「勉強をしに行くと思え」と念仏のように言われていたが、今日初めてその意味がわかった。見方を変えれば、雑用の一つ一つが今まで自分の知らなかったことばかりだ。自分が働くと周りの人が喜んでくれて、自分が少し大人になる。そう思って、しごと帳をつけていたことを思い出した(第8回参照)。
それからは、どんなことも新鮮に思えた。どんなことにも真剣に取り組んだ。

ある朝、楽しそうに店のミシンを磨いていると、店主の桝谷(トミーズ雅)が笑顔で近づいてきた。彼は、ミシンは「夜になったら遊んでいる」と教えてくれた。糸子はその比喩の意味がわからず、一瞬混乱した。桝谷はあらためて、夜、誰も使っていない時なら自由にミシンを使っても良いと許可してくれた。

その日の夜、早速遅くまで残った。同じように夜間のミシンを狙っている山口(中村大輝)に追い返されそうになったが、店主からミシン練習の許可が出たと言い返すのだった。山口はミシンの許可が出るまで1年かかったという。山口は面白くなかったが、山口の練習が終わるまでおとなしく待つというので、糸子と一緒に居残りをすることになった。

山口が帰宅し、いよいよ糸子の番となった。
今朝許可をもらったばかりで、縫うものがなかった糸子は、ミシンの前に座ってうっとりと眺めるばかりだった。今夜はミシンに話しかけ、ボディをなで、優しく抱きつくばかりだった。

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NHK『カーネーション』第14回

昨日はいつもより1時間早く家を出たら、ちょうど高校生の登校時間で、ミニスカ自転車の女子高生の白くて健康的な太ももが眩しいなぁとニヤニヤしていたら、スカートがめくれて白地に水玉模様のパンツが見えるという行幸に巡りあい、これから毎日この時間に出勤しようと思った矢先、立て続けに3人のパンチラを目撃し、その途端、なんかもういいわ・・・という気になって萎えてしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第14回目の放送を見ましたよ。

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第3週「熱い思い」

パッチ店での1日目、糸子(尾野真千子)は夕食に遅れて帰ってきた。仕事のことを聞かれて、糸子はとても楽しかったと明るく話した。しかし、それは家族を心配させないための嘘だった。部屋で一人になると落ち込んだ。雑用ばかりで、ミシンを使わせてもらえるまで10年もかかると言われ、その先の長さに挫けてしまいそうだった。
家族の方も、糸子の嘘にうすうす気付いていた。家族に勘づかれたことを、糸子自身も気付いていた。母(麻生祐未)や祖母(正司照枝)が何かと気を使ってくれた。彼女らの優しさをありがたく思いつつも、本当のことは言い出せないままだった。

パッチ店では失敗続きで、先輩職人に一日中怒られてばかりだった。もちろん裁縫をさせてもらえるはずもなかった。ミシンに触れるために女学校を辞めたはずなのに、かえってミシンが遠ざかっていくように感じた。
できることなら女学校の友だちに会いたい。そう思った瞬間、奈津(栗山千明)パッチ店を覗きに来た。

若くて美人の奈津は、職人たちにちやほやされた。職人たちは奈津にミシンを体験させ、しきりに上手だと褒めたたえた。それは、糸子が初めて店に来た時におだてられたのと全く同じ光景だった。糸子は、店の者たちの常套手段を面白くなく眺めていた。

日も暮れて、糸子が帰ろうとすると、店の前で奈津が待っていた。奈津は、大工の泰蔵(須賀貴匡)が結婚するという噂をもたらした。泰蔵の家とは親しく付き合っている糸子であったが、それは初耳だった。
すると、奈津は突然感情を爆発させ、泰蔵に結婚して欲しくないと言い出すのだった。聞けば、奈津は泰蔵のことをずっと好きだったのだという。しかし、糸子の見立てでは、泰蔵は奈津の存在すら知らない、奈津がどんなに頑張っても泰蔵が振り向いてくれることはないというものだった。
それでも奈津は引き下がらず、自分が大きくなって、もっと綺麗になったら泰蔵は必ず振り向くはずだから、それまで結婚しないよう言って欲しいと頼んできた。そのあまりにバカバカしい言い草に、糸子はおかしくなって笑いとばした。奈津は気分を害してさっさと帰ってしまったが、糸子は久しぶりに女学生に戻った気がして、仕事の辛さを少しだけ忘れることができた。

ある朝、糸子は風邪をひいてしまった。家族には仕事を休むように言われたが、糸子は無理をして出勤した。いつも通りに誰よりも早く店に出て、掃除などの準備をしていた。やってきた先輩職人の岡村(河野智宏)は糸子の体調が悪そうなのに気づくと、家に帰れと言った。糸子はいてもいなくても同じどころか、いない方が仕事も捗る、下手に風邪でも移されたら迷惑だと言って追い返すのだった。

反論できない糸子は、そのまま帰った。しかし、途中の道で悔しくなって泣き崩れた。店を辞めると言って、一人で泣き続けた。

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