NHK『カーネーション』第35回

NHK『額縁をくぐって物語の中へ』を見ていて、江戸時代の絵師・歌川国芳の作品に「其のまま地口 猫飼好五十三疋」という猫のとんち絵で東海道五十三次を描いたものがあることを知り(Wikipediaで調べる)、また東海道を走りたくなった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第35回目の放送を見ましたよ。

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第6週「乙女の真心」

踊り子・サエ(黒谷友香)のイブニングドレスを受注した糸子(尾野真千子)であったが、どうも気が進まなかった。サエの傲慢な態度が気に入らないのだ。
同僚の川本(駿河太郎)は、そんな糸子を励ましてくれた。立派なイブニングドレスを仕立てればダンスホールで評判になり、多くの踊り子が糸子の元へ殺到するに違いないと言うのだ。それを聞いて糸子はその気になり、迷いも吹っ切れた。

ロイヤル紳士服店での仕事を早めに終えると、自宅でイブニングドレス作りに没頭した。神戸の祖母(十朱幸代)から借りてきたドレスを勝手に分解して研究した。徹夜して、その日のうちに安い布を使用した試作品を完成させた。

そのまま眠り込んだ糸子が再び目を覚ますと、母・千代(麻生祐未)が勝手にドレスを着て踊っていた。若い頃、何度もイブニングドレスを着て舞踏会に行ったことがあるのだという。意外なところに参考人がいることに糸子は驚いた。
千代によれば、糸子の試作品は踊りやすさが全く考慮されていないという。ダンスのポーズを取ると布が引き連れて違和感があるという。そのため、ドレスと踊り手の見た目も悪くなってしまうと指摘した。

しかし、どこか間の抜けている千代は、ドレスを仕立てる時の具体的な手順はすっかり忘れてしまっていた。糸子の詳しい質問には一切答えられなかった。そこで糸子は、神戸の祖母に電話で話を聞いてみた。祖母によれば、仮縫いと試着を繰り返し、本人の体型にぴったり合うまで何度も修正を加えるのだと教えてくれた。
サエの人となりを好きになれない糸子は、彼女に何度も会う羽目になるのが気に入らなかったが、教えてもらったとおりにすることにした。

ロイヤル紳士服店で試作品を試着したサエは大喜びした。もう何も作りなおす必要はないから、これをそのまま引き渡せと騒ぎ出した。
しかし糸子は、これはあくまで見本であり、粗末な生地で作ってあるので売るわけにはいかないと断った。自分は客に最高のものを着せるという矜持がある、だからこんなものを着せるわけにはいかないのだ。

糸子とサエは激しい口論になった。
糸子は、洋裁とダンスという専門分野の違いはあるが、その道の玄人として最高のものを客に提供したいという気持ちがわかるはずだと主張した。ところがサエは、自分はそんなに立派なものではないと反論した。自分の仕事は、男に合わせて適当に踊るだけであり、専門性も矜持も持ち合わせていないと言い切った。

糸子はそのように下品な女のドレスを作るつもりはないと啖呵を切り、部屋を出ていってしまった。
残されたサエはじっと考えこんでしまった。

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NHK『カーネーション』第34回

昨夜、数カ月ぶりにジョギングをしたら、今朝は全身筋肉痛に襲われて難儀している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第34回目の放送を見ましたよ。

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第6週「乙女の真心」

今年の夏は暑くなった。
ロイヤル紳士服店では、雑用のほとんどが糸子(尾野真千子)に押し付けられていた。糸子が炎天下で一人で作業している間、店主(団時朗)と他の従業員たちは屋内でティータイムを満喫していた。

店主の自慢話に、従業員たちはお世辞を言って彼のご機嫌をとっていた。店主によれば、自分はいつまでも岸和田の田舎者を相手に商売するつもりはない。近い将来、心斎橋や東京に進出するつもりだと大きな事を言っていた。

そんな話をしている矢先、ダンスホールの踊り子・サエ(黒谷友香)がロイヤル紳士服店に現れた。店のことは糸子から聞いた、自分のためにイブニングドレスを仕立てて欲しいと言うのだった。
すぐに糸子が店内に呼ばれた。店主は、糸子が心斎橋百貨店の制服を作ったことを紹介し、婦人服に詳しい糸子なら完璧な仕事をこなすだろうと推薦した。この時、糸子はイブニングドレスが何なのか知らなかったが、洋服に詳しい店主なら助言してくれるだろうと思い、控えめながら仕事を引き受けることにした。

早速サエの採寸が始まった。ふたりっきりになった糸子は、勘助(尾上寛之)のことをおずおずと尋ねた。しかし、サエは騒動を起こした勘助などにはこれっぽっちも会う価値がないと面白くなさそうに答えた。とりあえず勘助が更生したことに安心し、糸子はそれ以上何も言わなかった。後に勘助の母(濱田マリ)に聞いてみたところ、その話に嘘はなかった。

現在、サエら岸和田の踊り子は和服にエプロンという出で立ちでダンスをしている。サエは、自分の上客にその姿をバカにされたという。東京などのダンスホールでは女性はイブニングドレスを着ているが、岸和田の踊り子は田舎くさいと笑われたのだという。勝気なサエは、その客を見返したいというのだ。前金として、10円もの大金を躊躇なく置いて帰っていった。あとで知ったことだが、一流の踊り子ともなると、月に軽く300円は稼ぐのだという。

店主は金払いのいいサエにほくほくした。
サエがいなくなったので、糸子は店主にイブニングドレスがどういったものなのか詳しく聞こうとした。しかし、店主も自分は紳士服専門だからと言って、何も知らないことを白状した。これは糸子の仕事だといって、全ての責任を押し付けた。多額の前金を手にしたことで、店主は今さら仕事を断るつもりもなかった。

困った糸子は、ファッションに詳しい八重子(田丸麻紀)にダンスホールの新聞記事を見せてもらったり、舶来物をたくさん持っている神戸の祖母(十朱幸代)にイブニングドレスを見せてもらったりした。それでおよその感じを把握できた。

一方で糸子は、人は老いてゆくという自然の摂理を生まれて初めて意識しはじめた。
勘助の母が奈津(栗山千明)から聞いたという話では、彼女の父は倒れて寝込んだままだという。奈津は母(梅田千絵)と助けあってなんとか料亭を切り盛りしているが、結婚式は延期になったままだという。
神戸の祖母も体調を崩して寝ていた。本人らは風邪をこじらせただけだと軽く言っているが、明らかに様子がおかしかった。あまり喋ろうとしないし、大好きなカステラにもほとんど手を付けられずに残してしまっていた。

自分の父・善作(小林薫)も最近はまったく覇気がない。酒ばかり飲んでは、酔いつぶれて布団に入らずに朝まで寝ていたりする。糸子を怒鳴る声にもめっきり元気がなくなった。糸子は、善作のことを少し見くびるようになった。
けれども、彼の気持ちがわからないでもない糸子だった。歳をとり、店も潰れる瀬戸際にある。目をかけていた長女・糸子が、自分の期待を裏切って商売人として使いものにならない。酒に溺れるのも当然かも知れないと思うのだった。

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NHK『カーネーション』第33回

今夜放送の『ためしてガッテン』(生かす!きのこパワー 13倍UP激うま健康ワザ)はゲストとして山瀬まみ藤田朋子が共演するということで、20年前の『山瀬まみ・藤田朋子のおませなふたり』を思い出し(参考: ふたりが「オリビアを聴きながら」を歌う映像)胸の熱くなっている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第33回目の放送を見ましたよ。

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第6週「乙女の真心」

糸子(尾野真千子)は初めての洋裁受注に有頂天になり、自ら申し出て客(宮嶋麻衣)から代金を貰わなかった。善作(小林薫)は、その行為について商売人失格の烙印を押した。街中から糸子の洋裁屋のチラシを回収し、店頭から洋裁の張り紙も取り除いてしまった。

善作は、糸子を隣町のロイヤル紳士服店に働きに行くことを命じた。商売の基本を一から勉強させ直そうというのだ。自分の行ったことに反省していた糸子は、素直にそれを受け入れた。

当時、女性の洋装はまだ珍しかったが、男性のそれはずいぶんと普及し始めていた。時流に乗り、ロイヤル紳士服店もなかなか繁盛していた。
しかし、店主(団時朗)は威張っていて意地悪だった。糸子が紅茶を淹れると、口をつける前に理由も言わずに取替えさせたりする。それでも、新入りの糸子は従うしかなかった。さらに、4人いる職人たちも総じて付き合いにくかった。糸子のことを見くびっているのか、みんな態度がよそよそしく、まともに口も聞いてくれなかった。

そんな中、一人だけ糸子に愛想の良い職人・川本(駿河太郎)がいた。他の職人の手前、直接話しかけてくるわけではないが、仕事をしながら頻繁に彼の視線を感じた。糸子は少々不思議に思ったが、あまり深く考えないようにしていた。

ある日、仕事を終えて帰宅すると、玉枝(濱田マリ)が家で待っていた。最近、次男の勘助(尾上寛之)の様子がおかしいのだという。夜どこかに出かけて、遅くまで帰ってこない。勤め先の和菓子屋が給料を払ってくれなくなったと言い訳して、家に金を入れなくなった。給料が貰えないわりには、真面目に仕事に出かける。どうも外で悪い遊びを覚えたようだといって、糸子に相談に来たのだ。

話を聞くと、糸子は即座に家を飛び出した。勘助の友人・平吉(久野雅弘)の口から勘助の行き先はすぐに知れた。ダンスホールに入り浸っているのだ。

糸子はダンスホールに入店し、勘助の行動を監視した。
勘助は踊り子・サエ(黒谷友香)をが他の客と一緒に踊るのをじっと見つめていた。1曲終わったのでダンスを申し込もうとしたが、押しの弱い勘助は他の客に遅れをとってしまった。またじっと待つはめになった。

そこでやっと、勘助は糸子の存在に気づいた。
糸子は勘助のことを叱った。自分の雇い主を悪者にして給料が貰えないと嘘をついていること、母を心配させていることなどを責め立てた。女にうつつを抜かす前に自分の責任を果たせと叱責した。それでも勘助は、ここで帰ったらもう二度とサエと踊ることができなくなる。自分はサエのことが好きになってしまったのだと楯突いた。

ついに堪忍袋の緒が切れた糸子は、場所をわきまえず勘助に掴みかかって大暴れした。
そして、すぐに事務所に呼ばれた。支配人(稲健二)は糸子の男勝りの態度を評価し店で雇いたいくらいだと言うが、糸子はもちろん洋裁が天職だと言って断った。それでも糸子への評価と勘助への評価は別だとして、彼は当然出入り禁止となった。その場にサエも同席したが、彼女は一言も発せず、迷惑そうな様子を貫いていた。

帰り道、勘助は女々しく泣き続けた。糸子は腹立たしいばかりで、少しも慰める気にならなかった。

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NHK『カーネーション』第32回

コラムニスト泉麻人の娘、朝井麻由美の存在を知り、しかも彼女がわりと体当たり系(例えば、セミ食ってる。閲覧注意)のフリーライターになっていると知って目頭の熱くなった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第32回目の放送を見ましたよ。

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第6週「乙女の真心」

糸子(尾野真千子)はうきうきしながら駒子(宮嶋麻衣)の洋服の製作に打ち込んだ。駒子も完成が楽しみで、生地合わせや仮縫いのために足しげく糸子の元を訪ねた。いつしかふたりは、本当の友だちのように仲良くなった。最初の服の完成前なのに、次はどんな洋服を作ろうかと楽しげに話しあったりした。

一方で駒子から、奈津(栗山千明)の父(鍋島浩)が倒れたと聞いたことは心配であった。しかし、気位の高い奈津は、糸子に同情されるとますます落ち込むと想像できた。そのため、糸子は奈津の家へ見舞いに行くことは差し控えた。

そして、ついに駒子の洋服が完成した。早速試着した駒子は大喜びした。それは駒子によく似合っていたし、駒子本人をとてもよく引き立てる色使いとデザインであった。
最初は大はしゃぎしていた駒子だが、急に感極まって涙ぐんでしまった。駒子は芸妓である。芸妓はいくら芸を磨いたり、本を読んで勉強したりしても、あまり認められることはない。結局、見た目の良し悪しで優劣が決まってしまうというのだ。糸子の作ってくれた洋服を着ると、自分がとても美人に見える。それが嬉しくて泣いてしまったのだ。
駒子は、この服を着て馴染みの客を驚かせたり、見返してやりたいと思った。

その話を聞いていた糸子は、洋服を着た駒子を強引に外へ連れ出した。恥ずかしがる駒子を後押しし、街を歩かせた。すると、人々はみな駒子に見とれ、異口同音に美人だと噂しはじめた。その反応に駒子は自信を持つことができた。徐々に顔を上げていき、ついには堂々と街を歩くのだった。
糸子も、自分の作った洋服が一役買っていることに鼻が高かった。洋服のことを尋ねてきた人には、ちゃっかりと宣伝することも忘れなかった。

洋服の完成度と、駒子の喜ぶ姿に満足した糸子は、代金を受け取ろうとはしなかった。客の喜ぶ姿から、自分自身も学ぶことが多かったので金はいらないと言うのだ。その代わり、また洋服を仕立てに来ることを約束させるのだった。
糸子は、自分の懐の深さに有頂天になった。

しかし、その話を聞いて激怒したのは善作(小林薫)だった。
そもそも今回の洋服の材料費は、糸子が必ず返す約束で善作に出してもらったものである。それが返せなくなった。次に洋服を受注したとしても、その材料を仕入れる金もない。ましてや、仕事の対価を貰わないことは慈善事業であり、商売人のすることではない。
善作の怒りは激しかった。糸子を強く折檻し、店の中もめちゃめちゃに荒らして出て行ってしまった。

糸子も、自分で自分が情けなくなった。夜、布団に入っても泣き続け、なかなか眠ることができなかった。

すると、両親の寝室からもむせび泣く声が聞こえてきた。よく耳をすますと、それは善作の泣き声だった。善作も悔しく、情けない思いでいっぱいだった。糸子がやっと一人前の商売人になったと思って将来を期待していたのに、それが裏切られたのが情けないと言っていた。妻・千代(麻生祐未)の前でおいおいと泣き続けた。

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NHK『カーネーション』第31回

今週の放送ではついに笑福亭鶴瓶の息子が登場すると知り、いろんな意味でますます目の離せなくなった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第31回目の放送を見ましたよ。

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第6週「乙女の真心」

昭和8年(1933年)。
善作(小林薫)は、ビワの葉温灸という新しい商売を始めた。その張り紙を店頭の目立つ所に貼ってしまった。小原呉服店の業態が混乱するばかりで、客も寄り付かなくなった。糸子(尾野真千子)は一家の先行きがますます不安になった。さらに最近の善作は、昼間から酒を飲んでは糸子に絡むようにもなった。

一方で糸子は、洋裁屋の宣伝に力を入れた。印刷屋に務めはじめた静子(柳生みゆ)の力を借り、チラシを作って街中に配った。

その頃、料亭・吉田屋では奈津(栗山千明)の結婚準備が進んでいた。奈津は嬉しそうにしていたし、自分の母(梅田千絵)以上に女将仕事にも熱心に取り組んでいた。

奈津の母が、糸子の洋裁屋のチラシを持ってきた。糸子をバカにしている奈津は、洋服を作るのは心斎橋に限ると言って、チラシに一瞥もくれなかった。しかし、吉田屋に出入りする芸妓たちの間では、近くで安く洋服が手に入ると言って好意的に受け止められた。

さっそく、芸妓の駒子(宮嶋麻衣)が糸子の所へやって来た。初めての指名客に糸子は慌てふためいた。一方の駒子は、糸子の様子を見て不安を覚えるのだった。

糸子と駒子は、婦人雑誌をめくりながらデザインの品定めを行った。
駒子が希望するのは、大人びて落ち着いたデザインの洋服だった。しかし糸子は、それらのデザインは、童顔で可愛らしい雰囲気の駒子には似合わないように思われた。もっとフワリとした可愛らしい洋服が似合うのではないかと提案した。

その提案に対して、駒子は自分には絶対に似合わないと強硬に反対した。聞けば、以前に心斎橋の洋裁屋で可愛らしいデザインのものを仕立てたが、自分にはまったく似合わなかったという。その洋服を着ると、顔色が悪く、足も短く見えたのだという。

その話を聞いた糸子は、洋服のデザインが駒子に似合わないのではなく、服の仕立てが悪かったのだと説いた。きちんと採寸して要所をしっかりと作れば足が長く見えるし、生地選びを失敗しなければ顔色も映えると説明した。
その話を聞いて駒子は納得した。本当は自分でも可愛らしい洋服が大好きだったのだ。その時の駒子は、見ている糸子まで嬉しくなるような笑顔を浮かべた。それを見て、必ず駒子の満足するものを作り上げようと決意するのだった。

採寸を済ませ、次は生地屋へ向かおうとした。しかし、その時に問題が3つ持ち上がった。

1つ目の問題は、生地を仕入れる金の問題だった。宣伝用のチラシを大量に刷ったため、糸子には金が残っていなかった。先日パッチを100枚作って手に入れた金は全て善作に渡していた。
しかし、他に頼るあてもなく、渋る善作に頼み込んでなんとか必要最少限の金を確保した。

次の問題は、一人で生地を見ていても、駒子に似合う色がわからないという問題だった。実際に駒子の顔に当ててみなければ、どの色が最適か判断することができなかった。店頭で糸子が困っていると、生地屋の主人(妻形圭修)が生地見本帳の存在を教えてくれた。それを借りて、糸子は急いで駒子に会いに行った。

最後の問題は、座敷に向かう途中の駒子を捕まえたものの、すでに白粉を塗ってしまっていて見本合わせができないことであった。翌日の昼間に、化粧を落として糸子に面会することを約束して、その場は別れた。

しかし、その日のうちに、化粧を落とした駒子が糸子の所へやって来た。予定されていた座敷が急遽なくなってしまったのだという。奈津の父・克一(鍋島浩)が急に倒れたのだという。予約を全て取り消し、店を閉めるほどの容態らしいと聞いて、糸子は心配するのだった。

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NHK『カーネーション』第30回

キッチュ・松尾貴史twitterでかまってもらい、すごく嬉しいミーハーな当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第30回目の放送を見ましたよ。

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第5週「私を見て」

糸子(尾野真千子)は、翌朝までにパッチを100枚作る仕事を引き受けた。困難な仕事を勝手に受けたことに善作(小林薫)がへそを曲げてしまった。失敗すると店の評判が落ちること、家族に手伝わせることを当然だと思っている態度などが許せなかったのだ。糸子は父の言い分も理解するが、自分も間違っていないと信じていた。そして、家族の助けを借りずにやり遂げる覚悟を決めた。

家族は善作の目を盗んで糸子を助けてやるつもりだった。しかし、善作が仕事場で監視し続けるのでそれができなかった。母・千代(麻生祐未)が果敢にも陰に隠れながら手伝おうとしたが、それも目ざとく見つけては怒鳴った。

けれども、善作も仕事を失敗させようというつもりはなかった。本当は手伝ってやりたい気持ちもあったが、意地の張り合いになり、引込みがつかなくなっただけなのだ。夜中に糸子が居眠りすると、キセルを灰皿に叩きつけて大きな音を出し、間接的方法で糸子を何度も起こした。
結局、朝まで付き合ったのは善作だけだった。

明け方、糸子はついに100枚を縫い上げた。
真っ先に善作が検査をした。すると、裾が細すぎて足の通らないことがわかった。善作は即座に全員を叩き起こし、一家総出で縫い目をほどかせた。糸子が全てを縫い直し、なんとか時間には間に合った。

他に頼むこともできず、困っていた客(国木田かっぱ)はパッチ100枚を引きとって大喜びした。その場で代金を支払ってくれたが、封筒にはなんと相場の倍の金が入っていた。昨日は双方慌てていたので代金の相談をしていなかったが、無理な仕事を頼む以上、客は初めから倍額払うつもりだったという。糸子はありがたくそれを受け取った。

奥でやり取りを聞いていた善作は、糸子をなじった。代金のことを確認せずに仕事を引き受けるなど商売人としては失格であると言って、糸子のことを叱った。しかし、思わぬ報酬を手に入れ、善作は見えない所で顔をほころばせていた。糸子から差し出された分厚い封筒を受け取ると、中から札を1枚だけ引きぬいて糸子に渡し、残りは全て自分の懐にしまった。

それでも糸子は、自分の仕事で小遣いをもらえたことが嬉しかった。妹たち(柳生みゆ、眞木めい、吉田葵依)と一緒にわいわいと和菓子を買い食いに出かけた。

4月になった。
学校を卒業後は糸子を手伝いたいと言っていた静子であったが、結局は外に働きに出ることになった。善作の呉服も、糸子の洋裁も、全くといっていいほど仕事がなかった。そのため、静子を働かせる余裕も必要もなかったのだ。
小原家の生活は少しも改善されていなかった。

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映画『ジョゼと虎と魚たち』を見た

2003年公開の映画。原作は田辺聖子
脚本が渡辺あや。この人はNHK『カーネーション』の脚本も書いており、同ドラマはすごく面白い。それで渡辺あやの他の作品が気になって、彼女のデビュー作と言われている『ジョゼと虎と魚たち』を見てみた。

映画の舞台はおそらく寝屋川。もしくは東大阪辺りかもしれない。いずれにせよ大阪市近郊。
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NHK『カーネーション』第29回

尾野真千子さん、30歳のお誕生日おめでとうございます、と、お喜び申し上げる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第29回目の放送を見ましたよ。

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第5週「私を見て」

糸子(尾野真千子)の作った制服は検品に問題もなく無事に納品された。報酬もその場で現金で受け取ることができた。
疲労の極限に達していた糸子は何度も居眠りしてしまった。検品を待つ間も、帰りの電車の中でも座ったままうつらうつらした。家に帰っても、食事もとらず、その日はずっと眠り続けた。

翌日は心斎橋百貨店の初売で、糸子の制服のお披露目の日だ。
糸子は妹ら(柳生みゆ、眞木めい、吉田葵依)と共に百貨店に出かけた。妹たちは百貨店での買い物を楽しんだが、糸子だけは制服のことが気になった。商品ではなく従業員ばかり見て歩いた。糸子から見れば店の雰囲気に合っていると思われた。着用している従業員(辻本瑞貴)も糸子と目が合うと満足気な表情を送ってくれた。
そして、一人の客が花村(國村隼)に話しかけているのを耳にした。そこでは制服の評判は上々だった。糸子は嬉しくなったし、花村も糸子に笑顔を見せてくれた。

糸子はやっと年が明けた気分になった。

しかし、小原一家の家計に目を向けると、現実は厳しいものだった。
百貨店の仕事で一時的に金は手に入ったが、その後の仕事のアテが全くなかった。ミシンの購入資金にするため店の反物を全て処分してしまったので、店には売り物がほとんどなかった。善作(小林薫)は、糸子の洋裁の技術が認められ百貨店から継続的に仕事を受注できると目論んで反物を処分したのだ。しかし、その後、百貨店からは一切仕事がもらえなかった。

糸子には、店が潰れるのも時間の問題だと思われた。
唯一の希望は、次女・静子があと2ヶ月で女学校を卒業することだった。成績優秀な彼女は、就職も決まっていた。外から給料をもらってくるようになれば、一家が路頭に迷う事だけは避けられると期待していたのだ。

ところが、静子は糸子に就職をやめたいと打ち明けた。一家で制服作りをしたのが楽しかったから、卒業後は家で糸子の仕事を手伝いたいと言い出した。
聞いた途端、糸子は激しく怒り出した。のんびりした性格の静子は、一家の経済状況を何もわかっていなかったのだ。糸子はこんこんと静子を説教した。売るべき反物もなく、洋裁の仕事もない。ついカッとなった糸子は、どうしても手伝いたいなら自分で仕事を取ってこいと言ってしまった。
文字通り受け取った静子はどこかに出かけていったが、すぐに現実の厳しさを知って反省するだろうと、糸子は放っておいた。

すると、小一時間ほどして、静子が本当に仕事を見つけてきた。ただし、それは相当に非常識なものだった。
その客(国木田かっぱ)は、翌朝までにパッチが100枚必要だと言って、リヤカーに大量の生地を搭載してやってきた。あまりに無茶な要望のため、どこに行っても断られ続けたという。その矢先に偶然静子と出会い、わらにもすがる思いでやってきたのだ。
一瞬困惑する糸子であったが、困っている人を放っておけなかったことと、仕事がありがたかったことにより、引き受けてしまった。客が生地を降ろして帰るやいなや、静子とふたりで作業に取り掛かった。

そこへ善作が帰ってきた。そして、話を聞いてすぐに怒り出した。無理な仕事を受けて一家総出の仕事になったら、先日の制服作製のように家族全員が巻き込まれて迷惑するというのだ。

一方の糸子は、今は仕事を選べる状況ではないと口答えした。その一言は善作の火に油を注ぐ事となった。糸子一人に100枚のパッチを押し付け、仕事を取ってきた静子ですら手伝うことを禁じてしまったのだ。

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NHK『カーネーション』第28回

「カーネーション: オリジナル・サウンドトラック」は amazon で MP3版が売られている(全曲試聴可)こと、および、椎名林檎の主題歌は収録されていない(別途MP3版がある)ことに気づいた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第28回目の放送を見ましたよ。

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第5週「私を見て」

糸子(尾野真千子)はミシンを借りるために神戸の祖父母(宝田明、十朱幸代)の家に泊まりこんだ。彼らは糸子が来たのを喜び、大歓迎した。しかし、のんびりしている暇の無い糸子はすぐに仕事にとりかかり、食事以外はミシンの前を離れることはなかった。

夕食は、神戸の親戚が勢ぞろいし、豪華で美味しい料理が提供され、楽しい時間であった。けれども、神戸での時間が楽しく有意義であると思うのに比例し、岸和田の家のことが気になり始めた。糸子の神戸行きについて機嫌を損ねている父・善作(小林薫)と、その矢面に立たされているであろう母・千代(麻生祐未)のことが心配になってくるのだった。

その時、妹・静子(柳生みゆ)から電話がかかってきた。彼女は驚くべき事件を報告し、すぐに岸和田に帰ってくるよう伝えるのだった。

静子によれば、糸子の神戸行きを知った善作は激怒したという。予想通り、一番立場の弱い千代に詰め寄った。それに対して、家族の女たちは全員一丸となって善作の前に立ちふさがり、千代をかばった。家庭内に一触即発の緊張がみなぎった時、善作は諦めたように部屋を出ていった。
そして、店の売り物を全て持って、行方をくらましたという。
夕食になっても善作が帰って来ない。あんな父親であっても、家族は全員善作のことが心配になってきた。

その時、店の方から大声が聞こえたかと思うと、善作は上機嫌で帰ってきた。
なんと、糸子のためにミシンを入手してきたのだ。

その話を電話で聞いて、糸子は翌朝一番で岸和田に帰った。
ミシンに対面した糸子は嬉しかった。しかし、立派なミシンとは対照的に売り物が全てなくなった呉服屋の様子を見て、少々物悲しくもあった。
父にさっそく礼を言う糸子であったが、善作は照れているのか、まともに取り合わなかった。

ぼんやりしている暇は無いので、糸子はさっそくミシンで作業を開始した。
呉服屋が洋裁をするのはきまりが悪いので、これまでは2階の部屋で隠れるように作業をしていた。しかし、今日からは店の中で堂々と洋裁を始めた。店の真ん中にミシンが鎮座し、その背後で家族総出で手伝った。
品物がなくて驚く客に対して、善作は悪びれるところもなく、洋裁も始めたと説明するほどだった。

昭和8年(1933年)、元日。
納品を明日に控え、小原一家は相変わらずの大忙しだった。今年ばかりは正月気分を味わうわけにもいかなかった。近所の幼馴染の勘助(尾上寛之)は小原一家の様子を見かねて、おせち料理を持ってきてくれたばかりか、作業の手伝いまでしてくれた。

その甲斐もあって、納品日の早朝に製品すべてが完成した。もちろん糸子は徹夜であったし、家族は今で倒れるように雑魚寝していた。

糸子は勘助に手伝ってもらって、心斎橋百貨店へ納品に向かった。支配人室へ続く階段を登りながら、きちんと受け取ってもらえるかどうか、そればかりを心配していた。

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NHK『カーネーション』第27回

本日発売の『カーネーション: オリジナル・サウンドトラック』の1曲目は「ふたりの糸子のうた」だと知り、これはーーー!!と叫び声をあげた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第27回目の放送を見ましたよ。

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第5週「私を見て」

自作の制服を来た糸子(尾野真千子)は百貨店の支配人・花村(國村隼)の前に飛び出した。判断のつきかねる花村は、糸子を百貨店のあちらこちらに立たせ、印象を確かめた。
そうしていると、一人の客が糸子を本物の従業員だと勘違いし、声をかけてきた。その時、糸子は成功を確信した。

花村からも、すぐに採用の返事をもらった。
ただし、1週間以内に20着を納品することが条件だった。せっかく素晴らしいデザインなので、翌週にせまる新年初売で大々的にお披露目したいというのだ。納品が無理なら、デザイン料だけ支払って、縫製は他の洋服屋に発注すると告げられた。

本心では、糸子も難しい条件だとわかっていた。しかし、この機会を逃してなるものかと、胸を張って請負った。

一刻も無駄にできない。
代金の2割を先払いしてもらったので、そのまま心斎橋で大量の生地を買い、電車で家に持ち帰った。家族全員に生地の裁断を手伝ってもらうことにした。そちらの作業はなんとかなりそうだった。
その時間を利用して、糸子はミシンを貸してくれる所を探しに出かけることにした。

大きな仕事を取ってきたことで、いつも気難しい善作(小林薫)ですら生地の裁断を進んで手伝ってくれた。善作の腕前は信用できたし、何よりも彼の機嫌がいいことに糸子は安心した。裁断の全てを家族に任せ、桝谷パッチ店にミシンの相談に行った。

桝谷(トミーズ雅)は糸子との再会に大喜びし、いくらでも力になるつもりでいた。しかし、年の瀬の繁忙期でもあり、1台しかないミシンはフル稼働だという。どうしても糸子を助けてやることはできなかった。糸子は、パッチ店の職人たちの応援だけを受けて、次を探しに行った。

電話で神戸の祖父母(宝田明、十朱幸代)に相談した。紡績工場を所有し、孫のかわいい祖父がすぐにミシンを都合してくれることになった。岸和田まで輸送するのでは間に合わないので、糸子が神戸に泊まりこんで作業することになった。
岸和田で裁断を行い、妹・静子(柳生みゆ)が電車で生地を搬送、神戸で糸子が仕上げるという計画を立てた。

しかし、その計画に善作がへそを曲げた。義父母と折り合いの悪い善作は、糸子が彼らの元に行くことに我慢ならないのだ。口ごたえする糸子を張り倒し、神戸行きを禁じた。怒った善作は作業も放り投げていなくなってしまった。

八方塞がりになってしまった糸子にやさしく声をかけたのは祖母・ハル(正司照枝)だった。善作の言い分が明らかに間違っていると言って、糸子の味方をしてくれた。善作のことは自分たちで何とかするから、糸子はすぐに神戸へ行けと言ってくれた。
それでも糸子は、踏ん切りが付かなかった。父は機嫌が悪くなると必ず母(麻生祐未)に八つ当たりをする。母が自分の身代わりになることを耐えられなく思った。

しかし、母も心配はいらないと言ってくれた。その言葉に後押しされて、糸子は神戸へ向かった。迷っている時間は全くないのだ。

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