「合理的な人々は限界的な部分で考える」

マンキューの教科書とスシローの割引券

第3原理: 合理的な人々は限界的な部分で考える

 ・・・夕食のテーブルで迷うのは、絶食するか豚のように平らげるかではなく、マッシュ・ポテトをもう一口食べるか否かである。試験が近づいたときには、まったく無視するか24時間勉強し続けるかではなく、もう1時間テレビをみずにノートを復習するかどうかで悩むのである。経済学者は既存の計画に対するこうした微調整を、限界的な変化と呼ぶ。・・・
 多くの状況において、人々は限界的な部分で考えることで、最良の決定を下すことができる。・・・限界的な便益限界的な費用とを比較することにより、・・・価値があるものかどうか評価できる。

『マンキュー経済学: ミクロ編』 pp.8-9

これは、当方の座右の書『マンキュー経済学』のイントロダクションに記載されているものだ。著者が経済学においてもっとも重要だと思うことを10のフレーズにまとめたもののうちの一つである(この教科書はいくつかのバージョンが出ているが、『マンキュー入門経済学』が一番薄くて安く、しかも10大原理もおさえてある)。

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自作トマトちゃん

某機関紙を読んでいたら、著者サイン付きで『いないいないばあっ! こんにちは! トマトちゃん』を5名にプレゼントすると書いてあった。

不肖当方は、非常勤講師の授業でこのトマトちゃんというキャラクター(いないいないばあっ!)を例示したことはあったのだが、同書は持っていない。だから、欲しいなぁとちょっぴり思ったり。

思ったんだけれど、某機関紙の読者プレゼントに応募するよりも、別の手段を使ったほうが入手しやすいかなぁ、と思ってみたり、みなかったり。

そんなわけで、偶然(本当に偶然だ。当方が家に食料をストックするなどめったにないことだ)、昨日買ってきたトマトが家にあったので、即席でトマトちゃんのフィギュアを自作し、著者に猛アピールしてみる。

木公謹製 トマトちゃん(部品をはずしてよく洗えば食べられます)

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『バガージマヌパナス』 池上永一

バガージマヌパナス人生、初沖縄。
道産子である当方にとっては、国内で一番遠い地方であったわけで、これまでものすごく縁遠く思っていたわけだが。

実際来てみて、やっぱり自分のアイデンティティや文化的背景とはまったく異質だと思った。
地名の看板やコンビニ店員のネームプレートの漢字が全然読めないし、彼らの言葉が理解できないことがまれではないし、民家や公共施設の区別なくシーサーが飾られているのにビックリするし、ギターケースを抱えている人は一人も見かけないのに三線をスーパーのビニール袋に無造作に入れて歩いてくるおじさんとすれ違うし、ラーメン屋はほとんどないのに沖縄そばはあちこちで売ってるし。

とはいえ、ネガティブな印象を抱いているわけではないが。
ここまで、自分のバックボーンと異なる文化に浸かってみると、それはそれで小気味良い。

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『見仏記: ゴールデンガイド』 いとうせいこう・みうらじゅん

当方の見仏趣味を啓いてくれた、いとうせいこう・みうらじゅんの最新作『見仏記: ゴールデンガイド』が発売になった。
前作「見仏記: 海外篇」からは7年ぶりだそうだ。

2003年から1年間、web KADOKAWAに連載されていたものをまとめてある。いとうせいこうのあとがきによれば、連載末期にみうらじゅんがやる気をなくしてイラストが未完成のまま放置同然だったらしい。それを今回みうらじゅんがイラストを描く気を起こして、本書が完成したとのこと。

今回のテーマ「ゴールデンガイド」とは、

マニアックは不可、メジャーどころにしぼって紹介。

p.207

だそうだ。

確かにスタートは奈良で花がたくさんあって有名な長谷寺だったり、3話目では京都で一二を争う有名どころの清水寺に出かけたり、4話目では同じく京都で桜の有名な醍醐寺を紹介したりと、「ゴールデンガイド」に恥じないラインナップだった。
#ちなみに、ここに挙げたものは京都移住後一度も行ったことがないので、行きたいと思ってる。

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『人でなしの経済理論』で奇妙なデジャブ

ハロルド・ウィンター著・山形浩生訳『人でなしの経済理論: トレードオフの経済学』の2章、pp.27-28 に、著者がパーティーで知り合った女性との会話のエピソードがある。

彼女は保健政策が専門の若く知的な新任教授で、「人の命の価値は無限であり、それに金銭的価値をつけるなど言語道断」と考えている。それに対して “人でなし” の著者が「いやいや。あなた自身だって、無意識のうちに自分の命の値踏みをしてるよ」と丸め込むエピソードの箇所。

訳者の山形浩生は自身のサイトにたくさんのテキストを掲載している人であり、僕もちょくちょく覗くのでそこで読んだのだろうと思った。で、原稿バージョンと出版バージョンではどの程度違いがあるのか調べてみようと思って、彼のサイトで該当原稿を探した。
しかし、探せど探せど、見つからない。不可解だ。
#彼は商業雑誌の原稿とかもバンバン載せてるし。ちなみに、彼が自分の著作権について表明する文章は名文。

で、google などを駆使して探して、やっと見つからない理由がわかった。

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『そこに僕はいた』 辻仁成

5日前、僕が辻仁成について知っていたのは、彼が中山美穂の夫であるということだけだった。
4日前、みうらじゅんの「色即ぜねれいしょん」の書評をいろいろ読んでいたら、「・・・自伝的小説としては、辻仁成の方が面白いと思う。」という記述を見つけて、ふーんと思った。
3日前、辻仁成を wikipeida で調べてみて、彼は作家のキャリアよりも、ロッカーとしてのキャリアの方が先であることやら、北海道に暮らしていたことなどを初めて知った。

本日、ふらっと本屋に入ったら、辻仁成の『そこに僕はいた』があったので買って読んでみた。
彼の著作を手にするのは、これが初めてだ。

内容は、辻仁成の小学生時代(福岡)、中学生時代(帯広)、高校生時代(函館)のそれぞれについて、当時の友人たちのエピソードに絡めて自分の思い出を語ったエッセイだ。
彼の少年時代は、喧嘩っ早くて、へそ曲がりではあったものの、特にカッコイイとか美しい友情とか、憧れるとか、そういう類のものではなかった。出てくる友人たちも、とりたてて魅力的だというほどの人物たちでもない。

しかし、ともすれば地味な思い出話を、飽きさせずに読ませる辻仁成はスゲェなと思った。何が面白いのかよく分からないのだが、1エピソード数ページで淡々と簡潔に書かれているスタイルなので、サラッと読めて引き込まれる。

個性豊かな友人たちが出てくるのだが、僕が一番印象に残っているのは、新聞配達をしている少年。父のいない家庭で親戚からの援助はあるのだが、長男が新聞配達をして家計を助けているというエピソード。
そういえば、昭和の中期まではそういう苦労話はあったようだけれど、平成の現在では全然聞かない。ワーキングプアだの、格差だの騒がれている現代だが、義務教育中の子供がアルバイトに出なくてはならないほどの貧しさってのはあまり聞かれないので、当時に比べれば今の日本は裕福なんだろうなぁと思ったり、思わなかったり。

深く感動する本ではないが、軽い胸キュンで僕はお気に入り。

『探偵はひとりぼっち』 東直己

「あっけない幕切れ」

この言葉は生まれてこの方一度も使った記憶はないのだが、最近の当方のマイブームであるところの”すすきの探偵<俺>“シリーズの5冊目、『探偵はひとりぼっち』を読み終えたとき、僕は思わずそうつぶやいてしまった。
#脚色ナシ

事件の発端は、すすきののゲイバーに勤めるオカマが自宅マンションの駐車場で撲殺されたこと。彼(彼女?)はゲイというマイノリティ社会に参加しつつも、多くの人々から慕われていた。主人公<俺>ともたいへん親しく、主人公は彼の死の真相を探り始める。しかし、その事件の背後には大物政治家の影がちらつき、様々な妨害にあう。警察やマスコミも事件から手を引き始め、市井の人々も強大な権力に恐れをなし、主人公への協力を渋り始める。主人公は孤立無援で立ち回らなくてはならなくなる。

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『プリンセス・トヨトミ』万城目学

地味な展開で、事件が起きるまで時間がかかり、山場はあっという間に終わってしまうので、チト退屈だった。
確かに緻密に謎が張り巡らされているのは分かるのだが、その謎解きにたどり着く前にギブアップしそうだった、ヤバかった。

読むのがつらくなったとき、僕はウルフルズの「大阪ストラット」を口ずさんで自分を盛り上げた。

他に比べりゃ外国同然
Osaka strut!

やっと謎が明らかにされたとき、僕は小学生の頃を思い出して「グリーングリーン」を歌った。

ある日 パパと二人で 語り合ったさ
この世に生きる喜び そして 悲しみのことを

本書のラスト、バカな男たちを優しく受け入れる女性たちの姿を目の当たりにし、明石家さんまの「真っ赤なウソ」を歌いながら深く感じ入った当方。

どんなに男が偉くても
女の乳房にゃかなわない

同書を読んだ人なら、これらの曲を歌ってしまった気持ちが分かってもらえるはず・・・と信じてる。

『探偵はバーにいる』東直己

札幌すすきのを舞台にした探偵小説。
当方のような道産子のノスタルジーをくすぐるだけの陳腐な地方賛美小説だろうと思って読み始めたのだが、いい意味で期待はずれの大ヒット。
シリーズ1作目を読み終わり、すぐに本屋で2作目、3作目を購入(しかも、札幌ステラプレイスの三省堂書店で)。超ハマり中。

当方が札幌に縁のない人間だったら、たぶん絶対に読まなかった本だと思う。けれども、読んでみたらきっと今と同じようにお気に入りになっていた自信がある。
確かにすすきのローカルネタが多かったり、登場人物は流暢な北海道弁をしゃべるなどの特徴があるが、物語のプロットはしっかりしているハードボイルド系ミステリー。北海道に縁がなくても、楽しめる小説だろう。
親の遺言で「すすきのを舞台にした小説だけは読むな」などと言われているのでなければ、一読をお勧めする。

ちなみに、第1作『探偵はバーにいる』はラブホテルに出入りする売春婦とか、他人の唇の痕の残ったグラスが出てくる汚いスナックとかが出てくるので、潔癖系の人にはちょっと読むのがつらいかもしれない。
そんな向きには2作目『バーにかかってきた電話』をお勧めする。もちろん”汚い描写”は多々あるけれどトーンは控えめだし、殉愛・人情ものという仕上がりで読後感は悪くない。
実際、ネットの評判を見ていても、1作目よりも2作目の方がウケがいいみたいだし。僕も、両作は甲乙つけがたいと思う。

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