仕事をサボってネットサーフィンしている時に、ふと『地元に帰ろう』の替え歌を思いついてしまい(歌詞は文末)、後ろめたい気分になってしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第137回めの放送を見ましたよ。
2011年6月24日、アキ(能年玲奈)は高速バスで北三陸駅前に降り立った。実に1年半ぶりの帰郷だった。
2008年に初めて北三陸市に来たときも人気が少ないと感じたが、今はそれ以上に閑散としていた。町のあちこちに地震と津波の爪痕が残っている。大震災の津波は川をさかのぼって北三陸市街を襲ったという。ただし、川が二股に分かれていたおかげで勢いが弱まり、さほど大きな被害には至らなかった。それでも沿岸部では流された家屋や自動車も少なくなかった。覚悟してやって来たアキだったが、その光景にショックを受けた。
駅前ビルの観光協会を最初に訪ねてみたが無人だった。室内には支援物資や人々の安否情報が無造作に置かれていて、一層寂寥感を高めているのだった。観光協会長・菅原(吹越満)やヒロシ(小池徹平)が丹念に作っていた町の観光ジオラマも潰れており、アキは悲しい思いをした。もっと早くに帰って来るべきだったと後悔した。
袖が浜の夏(宮本信子)の家までは北三陸鉄道で向かうことにした。駅舎に入ると中は薄暗く、他の乗客の姿は一切見えなかった。駅員の大吉(杉本哲太)や吉田(荒川良々)もいない。線路の復旧は進んでおらず、今でも北三陸駅と袖が浜駅の1区間だけしか運行されていない。復興支援の運賃無料サービスは5月いっぱいで終了していた。アキは料金100円を無人の窓口に置いてホームに向かった。
車中でアキは、北三陸で暮らした日々のことを思い出した。この列車にはユイとの思い出がたくさんある。彼女と出会ったのも北鉄の車中であったし、ふたりで海女の装束を着てウニ丼の車内販売を行った。通学も一緒だったが、種市(福士蒼汰)を巡る三角関係の時にはアキはユイを車内で無視した。お座敷列車イベントではふたりで歌い踊った。たった3年以内の出来事であるにも関わらず、アキにはそれらが全て遠い過去の出来事のように思われた。あの楽しかった日々は二度と帰らないのではないかと思われ、ますます寂しい思いが掻き立てられた。
車両が袖が浜駅に近づくと、外から歓声が聞こえてきた。そして、それまで乗務員室に隠れていた吉田が姿を現した。吉田が窓を開けると歓声はますます大きくなった。アキが身を乗り出して見ると、袖が浜駅のホームには懐かしい人々が集まっていた。旗を振り、プラカードを持ち、アキの帰郷を盛大に歓迎していた。安部(片桐はいり)からアキの帰郷を知らされていた町の人々は、みんなでアキを驚かせようと待ち構えていたのだ。
アキがひとりひとりの顔を見ると、全員笑っていた。みんなの元気な姿にアキも大きな笑顔で応えた。アキは、みんなが以前にも増してよく笑っていると感じた。強さと明るさが増し、笑っていられること自体が嬉しくてたまらないのだろうと思うのだった。
吉田としおり(安藤玉恵)の夫婦には女の子が生まれた。余震と停電の続く中、急に産気づいたのだという。それでも元気な赤ちゃんが生まれ、ふたりはとても嬉しそうだった。シングルマザーで2人の子どもを育てる花巻(伊勢志摩)はパートに忙殺されているという。少しだけ仕事を抜け出してきたと言い、アキを出迎えるとすぐに仕事に戻っていった。かつ枝(木野花)と長内(でんでん)の暮らしていた集落(ふたりは離婚したまま一緒に住んでいる)は津波で全壊したという。今は親戚の家で世話になりつつ、仮設住宅の申込中だという。
それぞれ、大震災で生活が様変わりした。それでも落ち込むことなく、前向きに楽しげに生きている。笑っている。それにつられて、アキも元気をとりもどすのだった。
ただし、その場に夏の姿だけがなかった。一同と共に天野家に向かったが、やはり夏の姿だけはなかった。アキは漁港へ行ってみることにした。港には大量の瓦礫が残っており、津波から3ヶ月以上経った現在でも撤去作業が続けられていた。アキは大津波がどんなに恐ろしいものだったろうかと想像した。海の恐ろしさを見せつけられた以上、海女たちも仕事を続けることは無理だろうと思った。実際、夏に今年の海女漁のことをメールで訪ねても、まともな返事は一切返ってこないのだ。
アキが海のそばに立って放心していると、誰かにウニをぶつけられた。驚いてウニの来た方を見ると、夏が海から顔を出していた。体調不良や震災を乗り越えて、夏は海女漁の現場に復帰していたのだった。夏は、海女ほど面白いものはなく、そう簡単にやめられはしないと高笑いするのだった。そうしていると、他の海女たちも準備を整えて集まってきた。彼女らも夏と思いは一緒だった。
アキは、夏がメールへの返事をよこさないことを責めた。すると夏は何かを思い出したように懐をまさぐった。そこから出てきたのは携帯電話だった。夏はポケットに携帯電話を入れたまま海に潜る癖がついてしまったという。当然、携帯電話は故障していた。これで4回目だという。だから返事ができなかったのだ。
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