NHK『純と愛』第10回

昨日、「三大黒木」には昭和風エロティシズムを感じると書いたわけだが、黒木瞳の『失楽園』における鼻にかかった声で悶える色気は言わずもがな、黒木香の『SMぽいの好き』における上品な言葉遣いと腋毛と笛の対比も意味わからなくてそそる、では黒木華の昭和風エロさは何かと問われれば、日本映画専門チャンネルのCMにおける畳上の横座りであると答える当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第10回めの放送を見ましたよ。

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第2週「ほんとうのかお」

純(夏菜)はまたしても粕谷(近藤芳正)の部屋を訪れ、静かにしてくれるよう頼んだ。床に跪いて頭を下げ、静かにできないようなら出て行って欲しいと懇願した。
しかし、粕谷は一切聞く耳を持たなかった。純の頭に一升瓶の酒を浴びせかけ、拒絶した。

逆上した純は、粕谷の部屋のバスルームに立て篭もった。願いが聞き届けられるまでそこを動かないと言いはった。

すぐに、米田(矢島健一)と桐野(吉田羊)が駆けつけてきた。米田は粕谷に平謝りし、純は元々頭のおかしい人間なのだと言って弁解した。純は採用面接で社長になるなどと口走るようなバカな社員なのだと説明した。それを聞いて、粕谷は純のことを嘲笑した。

純は、バスルームの中から持論を展開した。自分が社長なら、全ての客に幸せになって欲しいと願い、そのためにできる限りのことをする。隣に宿泊している北見(平泉成)は亡き妻の思い出に浸っているのだから、彼のためにも静かにして欲しいと再度頼むのだった。

ついに粕谷は折れた。
ただし、他のホテルに移るのだという。しかも、会社の社員旅行や学会開催などでオオサキプラザホテルを贔屓にしてきたが、今日を限りに二度と利用しないと通告し、帰っていった。

後に、純は米田にこっぴどく叱られた。
米田は純に粕谷には関わるなと命令したはずなのに、それを遵守しなかった。その結果、粕谷を怒らせたことで、ホテルは年間1億円近い売上を失う。自分が社長なら、この損失に対してどのような責任をとるつもりかと詰め寄られたが、極度に落ち込んだ純は何も答えることができなかった。

なんとか家に帰り着いたが、純は塞ぎこむばかりだった。
父(武田鉄矢)に言われた通り、自分は文句ばかり言って、まわりに迷惑をかけるばかりだ。迷惑をかけないためには、気に入らないルールでも守らなくてはならないらしい。精一杯頑張っても、「社長、社長」といって皆から馬鹿にされる。オオサキプラザホテルを魔法の国に変えることなど不可能らしい。

翌日、純は退職願を懐に忍ばせて出勤した。

朝一番に、北見がチェックアウトするのを見送った。
北見は純の努力に対して感謝の言葉をかけてくれた。少しでも自分のことが認められたのだと思うと、純は半べそをかいてしまった。心配そうに見返す北見を不安にさせないため、純はすぐに笑顔を取り繕って、元気よく北見を送り出した。

その直後、純は米田に呼び出された。
改めて、粕谷とのトラブルによる損失の責任をどう取るのかと問い詰められた。

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NHK『純と愛』第9回

昨日表明した「三大黒木」(黒木瞳、黒木香、黒木華)に対して、「なぜ黒木メイサを含めないのか?」という問い合わせが寄せられたのだが、黒木メイサは平成美女すぎるので当方の趣味からは大きく外れるものであり、昭和風エロティシズムを全く感じないために除外したのだと主張する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第9回めの放送を見ましたよ。

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第2週「ほんとうのかお」

純(夏菜)は愛(風間俊介)の能力で宿泊客・北見(平泉成)の思いを探ってほしいと頼んだ。北見がバーにやって来たところを物陰からふたりで観察した。
愛の見立てによれば、北見はある女性と一緒にこのホテルに泊まったことがある。その女性の名前を呼びながら泣き崩れている様子が見て取れるという。ただし、人の本性を探る能力を使うとひどく消耗するため、それ以上のことは探れなかった。

手がかりを得た純は、古い宿泊者名簿を調べた。その結果、北見が30年前に新婚旅行でオオサキプラザホテルに宿泊していることがわかった。
もう一度北見の部屋を訪ね、彼とじっくりと話し合った。

北見は部屋に妻(松原美穂)の写真を飾っていた。確かに、彼女との新婚旅行でオオサキプラザホテルに宿泊したのは事実だという。しかも、今日と同じ部屋に泊まった。新婚旅行で妻は大はしゃぎだったという。素敵なホテルに宿泊できて夢のようだと話していたという。
しかし、北見が妻の笑顔を見たのは、それが最初で最後だった。北見は仕事にかまけて家庭を一切顧みないどころか、妻をストレスのはけ口として辛くあたった。妻に優しくすることは一度もないまま、去年の今日、彼女は死んだ。
妻の笑顔のあったこのホテルに来て、1周忌の供養をしたかったのだという。

隣の部屋がうるさいことは北見にとって誤算であり、残念なものであった。けれども、自分の妻に対する態度のバチが当たったと思えば、それを受け入れざるを得ないと納得したのだという。
しかしながら、いつまでもここにいたくない。もうチェックアウトするつもりだといって、荷物をまとめていた。
純は今一度、北見を部屋に引き止めた。

純は、宿泊部長・米田(矢島健一)と指導係・桐野(吉田羊)に相談した。大騒ぎして他の客に迷惑をかけてばかりいる粕谷(近藤芳正)の宿泊を拒否したいと申し出た。
当然、米田は猛反対した。製薬会社の総務部長として贔屓にしてもらっている粕谷の機嫌を損ねると、年間で1億円以上の売上を失うことになる。そんなことは到底できないのだ。桐野からも、いつまでも一人の客に関わってばかりで、本来のベルガールとしての任務を全うしていないと言って叱られてしまった。慌てて持ち場に帰ったが、先輩ベルボーイたちにもひどくなじられてしまった。

純は落ち込んだ。
本来の仕事ができないこと、客を笑顔にできないこと。
そして、北見が妻を大事にしなかったという話から、自分の母(森下愛子)のことが思い出された。父(武田鉄矢)も母のことをあまり大事にしていない。そう思うと、母が恋しくて仕方なくなった。
休憩室から実家に電話をかけた。

ところが、母は留守で、電話に出たのは父だった。
父と犬猿の仲である純はすぐに電話を切ろうとした。しかし思いとどまり、藁にもすがる思いで、騒いでうるさい客への対応方法を聞いてみた。
けれども父・善行は、純が自分を試して揚げ足をとるつもりだろうと警戒し、まともに答えようとしなかった。そればかりか、純の普段の態度をあげつらい、人に文句ばかり言って迷惑をかけてばかりだなどとなじった。

純はますます落ち込んだ。文句を言って迷惑ばかりかけるというのは図星であり、まるで今日の純を宮古島から千里眼で見られているかのようだったからだ。

その時、休憩室に愛が現れた。
純は愛に弱音を吐いた。このホテルで自分の理想を実現するのは不可能だ、自分を押し殺して、命じられる仕事だけやるつもりだと言って投げやりになった。

そんな弱気を愛は押し留めた。
純に必要なことは、自分で決めることだと助言した。自分が本当に社長だったらどうするか考え、そこで決めた通りに行動しろと励ました。

純は再び粕谷の部屋の前に立った。

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NHK『純と愛』第8回

黒木華という女優を知った現在、黒木瞳(代表作『失楽園』)、黒木香(代表作『SMぽいの好き』)と合わせて「三大黒木」と呼ぶことにした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第8回めの放送を見ましたよ。

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第2週「ほんとうのかお」
純(夏菜)は、客室で大騒ぎしている粕谷(近藤芳正)らを鎮めることに失敗した。
宿泊部長の米田(矢島健一)に相談したところ、粕谷の好きにさせろと言われてしまった。粕谷は大手製薬会社の総務部長であり、オオサキプラザホテルを贔屓にしてくれているという。会社の宴会や学会会場としていつも利用しており、年間1億円もの売上があるという。隣で迷惑を被っている北見(平泉成)をアップグレードして他の部屋に移せというのが米田の命令だった。

純は北見へ部屋の変更を提案した。しかし、北見はその申し出を断った。うるさくても我慢するからよいと言って部屋に引きこもってしまった。静かにさせると約束したのに、彼の期待に応えられなかったことで純は落ち込んだ。

トラブルの噂を聞きつけたコンシェルジュ・水野(城田優)が純に助言してくれた。部屋を移らないなら、せめて次回の無料宿泊券を渡すことになった。
水野とともに北見を再度訪れるが、彼は宿泊券を受け取ろうとしなかった。北海道に住んでおり、高齢で、身寄りもないのでもう二度とこのホテルに来ることはないだろうとさみしげに断るのだった。彼は、単に今日ここにいたいだけだと言って、再び部屋に引きこもった。
純は、彼が部屋にこだわる意味深な態度が気にかかった。訳を聞こうとしたが、北見は一切答えなかった。

水野は純のことをルーブル美術館に所蔵されている「サモトラケのニケ」になぞらえた。船の先端で羽根を広げ、風を一身に受けている。逆境に立ち向かっていく純のことを大いに褒めた。そして、夕食に誘ってくれた。

純はニケの話を聞いて、勇気が湧いてきた。再び粕谷の部屋へ直談判に向かった。
しかし、粕谷は純の説得を全く聞き入れなかった。その上、酔ったはずみで純に暴力を振るおうとした。

その時、粕谷の部屋のチャイムが鳴った。つられて粕谷がドアを開けると、愛(風間俊介)が立っていた。不思議な事に、彼が「電球が切れるので修理に来た」と言った瞬間、部屋の照明が消えて真っ暗になった。一同が驚いている間に、愛は純の手を引いて逃げた。

厨房をクビになった愛は、電気修理のアルバイトに就いたという。ただし、言ったとおりに照明が消えたのは、ドアの横のルームキーホルダーからキーを抜いたので電源が切れたという単純なからくりだった。
愛は電気修理の仕事をしながら、ずっと純のことを見張っていたのだという。いつか無茶をするのではないかと警戒しており、危なくなったので助けに来たのだという。

純はますます愛のことが気味悪く思った。やっていることはストーカー行為であるとなじった。
愛は弁解することなく、純に言われるままその場を去ろうとした。

その時、純は愛の能力のことを思い出した。人の本性がわかるなら、ぜひ頼みたいことがあるというのだ。

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NHK『純と愛』第7回

ヒロインの同僚・田辺千香役の黒木華が気になって気になって仕方がなく、彼女が出ている日本映画専門チャンネルサイト内の「岩井俊二映画祭 presents マイリトル映画祭」をじっとりと見ている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第7回めの放送を見ましたよ。

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第2週「ほんとうのかお」
純(夏菜)は、不気味だと思いつつも、どうにも待田愛(風間俊介)のことが気になった。彼が働く厨房へ会いに行ったのだが、すでにクビにしたのだという。厨房スタッフ(長部吾郎)の説明によれば、愛は人の顔をまともに見ようとせず、使い物にならないので解雇したというのだ。
純は、愛は人の顔を見るとその人の本性がわかる。それが嫌なので、顔を見るのを避けているのだと弁護しようとした。しかし、自分ですら半信半疑のことを他人が信じるとは思えず、口をつぐんだ。
新入社員の研修が終わり、純はベルガールに任命された。

一方、同期入社の田辺千香(黒木華)はフロント係となった。
それぞれが持ち場に着く直前、千香が純に声をかけてきた。先日、千香は純のせいで迷惑している、純の勝手な行動のせいで新入社員全員が変な目で見られると言った件を謝罪した。そんなことは忘れていた純は、何も気にせず許してやった。すると千香は安堵の笑顔を浮かべ、仕事をがんばろうと声をかけてくれたのだった。

純と千香はともにロビー周辺が持ち場となるので、互いの働きぶりがよく見えた。
千香は早速、先輩社員たちに挨拶にして回った。特に、コンシェルジュの水野(城田優)のところでは時間をかけて親しげに挨拶していた。水野が色男なために千香が熱心に話しかけているということは、純から見てもありありと分かった。

所在なくロビーに立っていた純であったが、いよいよ初めての接客をした。
一人で宿泊にきた北見(平泉成)という客の荷物を持ち、客室まで案内した。初めてのことで緊張した純は、メモを盗み見しながら、しどろもどろと設備の説明をした。
慌てながらも熱心に話す様子に、北見は目を細めた。「痒いところまで手の届く説明だった」と、本音とも皮肉ともつかない言葉とともに、純へ感謝した。その言葉に純は喜んだ。

続いてロビーに控えていると、突然、客(近藤芳正)に尻を触られた。腹を立てた純は、他の客の目があるにも関わらず怒鳴りつけた。
その騒ぎを目に止めたフロント係・小野田(木内義一)が慌ててやって来て、その客を慇懃にフロントへと案内した。そして、純には黙るように命じた。

純が腹に据えかねていると、次の仕事が命じられた。不審者が寝ているので注意して追い払えというのだ。
駆けつけてみると、そこで寝ていたのは弟の剛(渡部秀)だった。家出し、世界中を旅しながら宮古島の良さを伝えて回りたいと言うのだ。実家には秘密にしたまま、純の家に泊めてくれと頼み込んだ。
純は家に帰るよう説得するが、剛はまったく聞く耳を持たない。

そうして揉み合っていると、千香が慌ててやってきた。客から隣の部屋がうるさいとクレームがあったのだという。一度千香が注意に行ったのだが、聞き入れてもらえなかったという。そこで、純に助けて欲しいと言うのだ。クレームを処理できなかったことが上司に知られると怒られて評価が下がるし、コンシェルジュの水野からも仕事ができないとして軽蔑されるかもしれない。そういった事態はどうしても避けたいというのだ。

純は渋々手伝ってやることにした。
すると千香は全てを純に押し付けていなくなってしまった。千香に対して腹を立てたものの、それを表に出すことは控えた。

クレームの主は先ほど荷物を運んだ北見だった。北見の方も顔を見知った純が来たことで、少々落ち着いたようだった。純を信頼して全てを任せると言われ、純にはやる気が芽生えた。

騒いでいる部屋のベルを鳴らすと、ドアが開くやいなや、純は部屋の中に引っ張りこまれた。中では数人の男たちがバスローブ姿で酒盛りをしていた。客の一人が飲み過ぎて吐いてしまい、その後片付けが純に押し付けられた。

やっと掃除を終え、いよいよ純は本題に入った。毅然とした態度で、声を低くするよう頼んだ。
しかし、そんなことで大人しくなる連中ではなかった。グラスになみなみとワインを注ぎ、それを飲み干せば静かにすると無理を言うのだった。純が勤務中を理由に飲酒を断ると、客は純を追い返してした。

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NHK『純と愛』第6回

HDDレコーダーの引き取り手が見つからず、部屋が片付かないので誰かお願いしますよと懇願する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第6回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

米田(矢島健一)と露木(や乃えいじ)にスタンドプレイを叱責され、人格まで否定されたことに純は逆上した。感情に駆られ、ホテルを辞めると言ってしまった。
その瞬間、厨房洗い場の男(風間俊介)が皿を落として割った。
皆の注意がそちらに向かった瞬間を捉え、指導係の桐野(吉田羊)は一言二言でうまくその場を取り繕い、辞職宣言をうやむやにし、純を連れ出して事なきを得た。

ただし、桐野はもう一度純のことを厳しく叱った。
一つには、犬が飼い主を選べないのと同じように、従業員も上司を選べないのだから我慢しろとたしなめた。二つめには、ルール厳守を再度言い渡した。

自律性やその人なりのやり方、理想を認めてもらえないことに、純はまだ納得できなかった。そこで、桐野に仕事の理念や目標について聞いてみた。
しかし、桐野の反応は冷ややかだった。そのような質問自体が青臭いといって相手にしなかった。そして、自分の考えが正しいと信じ、それのみに固執する人間は成長をやめたのと同じだと手厳しく答えた。

ますます納得のいかなくなった純は、同僚の千香(黒木華)に相談した。面接の時の彼女は、ホテルで働くことへの大いなる憧れを語っていた。自分と同じ思いでいるに違いないと思えた。
しかし、彼女の反応は予想だにしないものだった。千香がオオサキプラザホテルに就職した本当の理由は、不景気で他に仕事が決まらなかったので仕方のないものだったという。面接の時に話した内容も、採用のための方便だったという。
そして、純に対する苛立ちをついに爆発させた。上司たちは個人ごとの評価ではなく、新入社員全員を一括りにして見る傾向がある。そのため、純の身勝手な行動で自分にも迷惑がかかるというのだ。今日一緒に行った深夜フロント研修でも、純が勝手にルームサービスを受けてしまったことで、自分の帰りまで遅くなってしまった。
それまでのおっとりとした雰囲気と打って変わって、千香はドスの利いた関西弁で一気にまくし立てた。

純は疲れきった。自分の来し方を思い返しては、昔から不器用な性格で、損な役回りばかりだったと落ち込むのだった。

やっと家に帰り着き、徹夜で疲れた体を休ませようとした矢先、実家の母(森下愛子)から電話がかかってきた。弟・剛(渡部秀)が真面目に予備校に通わないことを父・善行(武田鉄矢)がなじったことが引き金となり、剛が家を出ていく騒ぎになっているという。
純はイライラした。そもそも母が剛に甘い顔を見せるから彼がつけあがるのだと言って、母に責任を負わせた。ただでさえ、末っ子の家で騒動で動揺している母は純の言葉に深く傷ついた。純に対して、大阪に行った人間は宮古島の家族のことなど見捨てるつもりなのだなどと喚き散らして電話を切ってしまった。

純はますます腹がたって眠れなくなった。
大好きだった祖父(平良進)のことを思い出すばかりだった。祖父の思い出は、全て楽しく愉快であたたかいものだった。

ふと、祖父の言葉を思い出した。純が自我の強さで軋轢を生じさせたり、苦しい目に遭ったとしても、「ずっとそのままでいてよい」と応援してくれた。
その時初めて、それは例のストーカーが言ったのと同じ言葉だと思い至った。それで、彼のことがなんとなく心に引っかかるようになった。

仕事が終わる頃を見計らって、ホテルの厨房を覗きに行った。そこで例のストーカーを捕まえ、とっさに皿を落として、純の辞職を取り消してくれたことのお礼を告げた。
その時、名札を見て、彼の名が待田愛(まちだいとし)であることを知った。

それから、和やかに話をしようとしたのだが、愛がホテルの厨房で働き始めたきっかけを聞いて空恐ろしくなった。純がホテルの採用通知を受けたのは、愛の目の前であった。そこで愛も後を追って、このホテルで働き始めたのだという。
そう説明して、愛は純の顔をじっと見据えた。

純は後退りしながら、愛が「自分には人の本性が見える」と言っていたことについて説明を求めた。
愛によれば、人の顔を見るとその人の本当の顔がわかるのだという。強そうな人が怯えていたり、優しそうな人が冷たい顔をしているなどといったことがわかる。そのようなわけで、先日純が助けた老婆(川本美由紀)がスリ師であることもすぐに分かったのだという。

ただし、愛は人の本性を積極的に知りたいと思っているわけではなかった。そのため、人の顔を見ないようにいつもうつむいて歩いている。そのせいで、人にぶつかってばかりいるのだ。
けれども、純の顔だけは裏も表もなかった。愛にとって、そのような人物は初めてであった。だから、純にはいつまでも変わらず、裏表のない人物であって欲しかった。そのままでいて欲しいと懇願するのだった。

純には愛の話が信じられなかった。そして、恐ろしくて気味が悪くなった。愛を残して走って逃げた。

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NHK『純と愛』第5回

先日、会社で飯を食っていたら、金メダリストがメダルをかじるのは見苦しい(特に女子選手)という問題提起がなされ、あれは時代劇等で小判が純金かどうかを調べる時の仕草であり、メダルが金ではないと選手が疑っていることになる(いや、実際、オリンピックのメダルはメッキらしいけど)のだからケシカランという話になり、じゃあ一体どのようなパフォーマンスならばふさわしいのかという議論になり、「水を張ったバスタブに浸かった後『ユーレカ!ユーレカ!』と叫びながらハダカで走り回るのが良い。金の純度を調べるにあたって、口でかじるよりよっぽど知的であるし、ギリシャ繋がりなところがなお良い。特に女子選手にやって欲しい。」という結論になり、そういうオリンピックが見たい、早く4年経たないかと待ち望んでおり、ここまでの話とは一切関係ないが、昨日やっと夏菜の胸がわりとデカいということに気付いた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第5回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

純(夏菜)はエレベーターで社長の大先(舘ひろし)と乗り合わせた。
彼が入社式で純のことを「社長になりたいと言っている」と暴露したために、純はホテル中からからかわれる羽目になった。そのため、大先のことは内心腹を立てている。大先はそんなことには気づかないようだ。ホテル経営について話を聞きたいなどと方便を使いながら、純の電話番号を聞き出し、デート(デート?デートなのか!?)に誘う仕草を見せた。
純がためらっているうちに、目的の階について大先は降りていった。そこには若くて派手な女(松本奈摘)が待っていた。純は大先の女癖の悪さを軽蔑するのだった。

今日の純の仕事は、深夜フロント業務の研修である。指導係の桐野(吉田羊)からは、指示されたこと以外は絶対に行わないようにときつく釘を刺された。

深夜といえども、フロントは暇なわけではなかった。客の対応に追われ、先輩社員たちの手は全てふさがっていた。

その時、フロントの電話が鳴った。
純は、電話対応をしろという指示は受けていない。かといって、電話を待たせたり無視したりすることは、客に嫌な思いをさせることになる。板挟みになる純であったが、意を決して電話に出た。
それは、ルームサービスの注文であった。電話対応が初めてであった純は、しどろもどろになりながらもなんとか注文を受け付けることができた。

しかし、直後にフロント係の小野田(木内義一)に叱られてしまった。現在は0時5分である。ルームサービスは0時で終了する規定になっており、受付時間を過ぎているのだ。
規則を破ると、厨房にいい顔をされない。面倒を起こしたくない小野田は、純に客へ断ってくるよう言いつける。しかし、客へのサービスを優先したい純は、厨房にかけあってくると言って飛び出していった。

厨房では、見習い(杉森大祐)が後片付けを行なっており、今まさにコーヒーを捨てようとしていたところだった。見習いも上役に叱られることを恐れ、規則を守ってルームサービスの注文を断ろうとした。しかし、純に押し切られる形でコーヒーを渡してしまった。

純がコーヒーを運んでいくと、注文した山本(芝本正)はとても喜んだ。彼は就寝前にコーヒーを飲むことを習慣にしているのだが、今夜は注文の時間が遅れてしまったので飲めないのではないかと心配していたのだという。無事に飲むことができてよかったと、山本から満面の笑みでお礼を言われた。
翌朝、チェックアウトの際にも純に笑顔でお礼を言ってくれた。純が理想とする「宿泊客が笑顔で帰って行く魔法の国」が実現できたと思い、とても嬉しかった。純は有頂天になった。

しかし、深夜フロント研修が終わる際に、小野田からはルームサービスの件は純の一存でやったと言って責任を押し付けられた。そして、指導係の桐野に呼び止められ、宿泊部長の米田(矢島健一)と飲料部長の露木(や乃えいじ)の元へ連れて行かれた。
純は、自分の臨機応変な行動が褒められるのだと思って、ふたりの待つ厨房へ喜び勇んで向かった。

しかし、純はふたりから激しく叱責された。背後では、昨夜協力してくれた厨房見習いがうなだれている。ルームサービスの件が問題視されているのだ。
経費削減のためにルームサービスの24時間受付は廃止されたことを説明した上、例外を作ると歯止めが利かなくなると説教された。さらに、勝手な行動で食中毒などが発生した場合の責任の所在についても説かれた。各セクションにはその道のプロがおり、他の部署が勝手なことをすると迷惑をかけることになるのだとたたみかけられた。
終いには、桐野の指導が甘いのだといって、彼女にまで火の粉が降りかかった。

純は反発した。
彼らは自分たちの保身や業績評価だけを気にかけ、客のことをないがしろにしていると感じた。余計なことは言わないように自制しようとしたが、感情に駆られて我慢が難しくなった。宮古島の人間はもっと大らかであれなどと理不尽なことを言われ、ついに純は爆発した。

「ホテルで一番大事なことは、ホテルの都合ではなく、客の都合である」という、祖父(平良進)の言葉であり、自分の信念をまくし立てた。そして、宮古島の人間にも自分のように激しい気性の持ち主がいるのだと言い返した。

そこまでいうと、純は泣きべそをかいてしまった。
そして、これ以上オオサキプラザホテルで働くことに我慢ならなくなった。

「やめてやる!」
そう言うのと同時に、背後で皿の割れる音がした。
そちらを見ると、先日のストーカー(風間俊介)が皿洗いとして働いていた。

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NHK『純と愛』第4回

「俺の理想の朝ドラはこれだっ!」と下の図を作って鼻息を荒くしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第4回めの放送を見ましたよ。

朝の連続テレビ小説『じゅんと愛』: サブカル×ベビーフェイスは当方の大好物。


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第1週「まほうのくに」
翌年の春。
オオサキプラザホテルに就職の決まった純(夏菜)の初出社だ。オオサキプラザホテルを自分の理想の「魔法の国」にしようと意気込んで家を出た。

入社式では田辺千春(黒木華)と隣り合わせた。彼女とは最終面接で一緒になり、面接官のケータイやくしゃみで萎縮してしまった彼女を純が弁護してやったことがある。千春はその時のことを純に感謝し、ふたりは打ち解けた。

大先社長(舘ひろし)のスピーチが始まった。純は彼のことを面接会場で見ていたが、まさか社長だとは思っていなかった。第一印象でいい加減な男だと思っていたので、彼が社長であることにいささか驚いた。

大先は面接の時のエピソードを話し始めた。面接で「社長になりたい」と豪語した志望者がいたと言い、本人はこの場で立てと命じた。
純は自分のことだとすぐに分かったが、恥ずかしくて、ためらいながら静かに立ち上がった。

大先は純をじっと見据え、気持ちに変わりはないかと訪ねた。すると純は度胸満点で力強く頷いた。
大先だけはにこやかにしていたが、参列している重役や他の新入社員たちからは一斉に冷ややかな目で見られてしまった。

入社式が終わると、早速研修が始まった。
はじめは、会議室で接客マナーの研修だった。しかし、純にはそれが空々しく嘘っぽい演技に思えた。バカバカしくて少しも身が入らなかった。早く現場に出て、実際に客に接したいと願うのだった。

次の研修は、ベッドメイキングや荷物の運搬など、接客はしないが現場での実地訓練だった。現場の先輩たちから直接指導を受けた。
ところが、純が「社長になりたい」と宣言したことはすでにホテル中の噂になっていた。「社長」というあだ名を付けられ、行く先々で皆にからかわれた。

やっと初日の勤務が終わった。
振り返ってみると、社長になるという自分の目標がみんなからバカにされたことしか思い出されない。そのような目標を持つことは許されないのだろうかと、純は思い悩みながら帰路についた。

あくる日以降も、純はホテルの従業員全員からからかわれ続けた。
そんな中、コンシェルジュの水野(城田優)だけは純を励ましてくれた。自分も純と同じ気持だといい、目標を高く持つのは当然だと言って励ましてくれた。
水野は優しくいい人であるばかりか、ロビーでの働きぶりも様になっていた。その上、ハンサムであった。純は水野への軽く小さなあこがれを抱いた。

いよいよ、純は客の前で研修をすることになった。といっても、レストランに控えて、客に水を汲むだけの役割だった。
それでも、純は前向きに、自分なりの工夫をした。よくフロアを見回し、水を一気に飲み干した客(小松健悦)を見つけるやいなや、素早くコップに水を注いだ。そのタイムリーな給仕に、客は大いに満足した。
さらに純は、その客のためにレストランで肩を揉んでやった。ちょうど疲れの溜まっていたその客は、ますます喜ぶのだった。

しかし、その行動が後に問題視された。
指導役の桐野(吉田羊)は、新入社員全員がいる場で純のことを叱責した。レストランの給仕係が勝手にマッサージを行うと、本職のマッサージ師の仕事がなくなり迷惑をかけるというのだ。しかも、従業員が行うサービスは全てホテルが決めるものであり、従業員は指示された行動のみをとるべきであり、ルールを順守せよというのだ。
他の新入社員たちも冷ややかで、純の味方をするものは一人もいなかった。

純は落ち込んだ。自分が正しいと思ったことを行ったのに、それが認められなかった。ルールにのみ従えということは、自分自身の考えやその場で客が本当に望んでいることを無視しろということに他ならない。それは純の理想とは程遠かった。

ふと、純につきまとう男(風間俊介)のことを思い出した。
彼は純に対して「そのままでいてください」と何度も言った。彼の本意が何なのか未だ分からないが、その言葉だけはずっと心のなかで繰り返された。

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NHK『純と愛』第3回

オバQ的なものといえば、『のび太の人類補完計画』第8話のラストにクソ笑った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第3回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

純(夏菜)はビジネスホテルのベッドで目を覚ました。オオサキプラザホテルの採用面接で失敗したことにショックを受け、リクルートスーツのまま倒れるように眠りこけていた。
採用ならば今日までに電話がかかってくることになっている。しかし、一向に電話は鳴らず、望みが薄いことに落ち込んでいる。
客室の窓を開けると、大阪城の淀んだ堀が目の前に見えた。宮古島の青い海を思い出し、ホームシックにかかるのだった。

携帯電話が鳴った。
喜び勇んで出てみたが、それは実家の母(森下愛子)からだった。面接の首尾を聞かれ、純は強がりを言い、成功したと答えた。しかし、失敗したことはすぐに母に見抜かれた。電話口で父(武田鉄矢)は宮古島に帰ってきても一切面倒は見ないと喚いている。純も、絶対に父の世話になどならないと喧嘩腰で答えるのだった。

他にすることもない純は、有り金を全てつぎ込んでオオサキプラザホテルに宿泊してみることにした。就職活動の記念という意味合いもあったが、失礼な面接官に対する八つ当たりの意味の方が強かった。
ドアボーイの接客態度や客室設備、サービスの終了時刻、ホテル内の案内掲示など、少しの間に多くのアラが見つかった。純の理想とするホテルとは程遠く、いらだちはますます高まった。

そうやってホテルの中をうろついていると、客室フロアで怪しい男(風間俊介)に出くわした。昨日、純につきまとった不気味な男である。
男は、このホテルに滞在していれば純に再会できると思い、そうしていたという。恐ろしくなった純は一目散に逃げ出すが、男は執拗に追いかけてきた。

やっとのことで男をまいた純。ほっと一息つくと、階段を登るのに難儀している老婆(川本美由紀)に気がついた。声をかけてみると、結婚式場に行きたいのだが迷ってしまったのだという。純は足の悪いという彼女を背中に負い、式場まで親切に案内してやった。

やっとのことで結婚式場に到着すると、どこからともなく例の怪しい男が表れた。
男は乱暴に老婆の腕を掴むと、財布を返せと凄むのだった。
その老婆はスリ師だったのだ。正体がばれるや否や、信じられないスピードで走って逃げた。リュックに財布のないことを確認した純は、慌てて追いかけたが中々追いつかない。しまいには、純は登り階段で躓いて転げ落ちてしまった。
逃げきれると安心した老スリ師は、そこで純の財布の中身を確認した。金のほとんど入っていないことを知ると、バカにしたように財布を投げて返し、そのまま姿をくらました。

純は腹立たしさと悔しさと悲しさでいっぱいだった。
内定通知はまだ来ない。せっかく親切にしたのに騙されて財布をスられた。挙句に、転んで足を捻挫した。

例の怪しい男が、捻挫の手当をしてくれた。意気消沈し、足まで挫いてしまったので彼から逃げることもできず、されるがままにしていた。
ふと、この怪しい男に、優しかった亡き祖父(平良進)の姿が重なった。どうしてそう思ったのか、純にもわからなかった。

純は、彼がスリを見抜いた理由を尋ねてみた。
男は困ったような表情をし、言いにくそうにしていた。純が待っていると、彼はポツリポツリと話し始めた。

彼には人の本性が見えるのだという。見ただけで、その人が隠している裏の顔までが見えるのだという。
先の老スリ師は、純に背負われた途端、目が釣り上がり、下品な顔で舌なめずりしたのだという。それでスリ師の本性を見抜いたのだという。さらに、彼女が若い頃にひどい目に遭ってきたという過去までわかってしまったという。

純には、彼の言っていることがにわかには信じがたかった。

もっと詳しく話を聞こうとした矢先、オオサキプラザホテルの人事部から電話がかかってきた。純の採用が決まった。

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NHK『純と愛』第2回

昨日のまとめ記事で「宝塚のオバQ」と言った際、頭に浮かんでいたのは『機動戦士のんちゃん』(YouTubeで見る)に出てくるQちゃんのことであって、藤子不二雄のオリジナルではなかったことに思い至った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第2回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

純(夏菜)は大阪のオオサキプラザホテルの前にいた。これまでの就職活動はことごとく失敗し、もうこのホテル以外に望みはなかった。今日の最終面接にかける気合は十分であった。

面接会場であるオオサキプラザホテルに入ろうとした時、人ごみの中をよそ見しながら歩いてくる男(風間俊介)とぶつかり、純は転んでしまった。
男は純の顔をじっと見た。勝気な純は睨み返してたしなめるが、男は目をそらそうとはしなかった。
「初めてだったから、つい・・・」
などと不可解なことを言うばかりであった。
やっと男は去って行ったが、少し離れた所に立ち止まり、再び純のことを凝視した。薄気味悪くなった純は足早に離れてホテルへ向かった。

最終面接は、志望者5人の集団面接だった。面接官はホテルの重役らしい5人であった。
それまで順調に面接は進んでいたが、純の前の志望者(黒木華)が話している時に、いきなり面接官・米田(矢島健一)の携帯電話がけたたましく鳴った。さらに別の面接官・露木(や乃えいじ)が遠慮のない大きなくしゃみをした。そのせいで彼女は動揺してしまい、言いたいことがほとんど言えずに終わってしまった。純は彼女のことを少々気の毒に思ったが、この場では情けをかけるわけにはいかなかった。

続いて、純の番である。
志望動機を聞かれるや否や、単刀直入に
「社長になりたいから」
と高らかに言い放った。その一言に場が凍りついた。

しかし、そんな純に興味を持った者が一人だけいた。
その男(舘ひろし)は面接官の後ろに控えて座っていた。彼は社長になってどうするつもりかと尋ねた。
純の答えは「魔法の国」を作りたいというものだった。宿泊客が笑顔になって帰るホテルを作りたいというのだ。そのための秘訣は、経営者の愛が溢れていることであり、自分がそうしたいというのだ。

純は自分の祖父(平良進)が作ったホテルのことを話した。元々は自動車整備工場を経営していたのだが、祖母が不治の病にかかった時にホテルを作った。それまでは仕事が忙しくてろくに旅行に連れ出すこともできなかった反省から、そこにいるだけで世界中を旅している気分になれるようなホテルを作りたかったのだという。
そこには、祖父の祖母に対する愛が溢れていたのだという。それが純の理想なのだ。

その時、再び米田の携帯電話が鳴った。遠慮することなくメールを読んではニヤニヤしている。露木も二度目の大くしゃみをした。まったく悪びれるところがなかった。
純は腸が煮えくり返った。しかし、他に就職できるあてがないので我慢しようとした。

しかし、できなかった。
携帯電話やくしゃみのことを純は激しい口調で避難した。そのせいでペースを乱された別の志望者のことを弁護した。司会役の面接官・中津(志賀廣太郎)にやんわりとたしなめられるが、純の勢いは止まらなかった。
中津が「時間がないので穏便に」と言ったその一言でますます激昂した。

志望者側は、この短い時間に自分の一生をかけている。その瞬間を良い物にしたいと願っている。それを台無しにしたのは、面接官側であると食ってかかった。
そもそも、ホテルの理念は短い滞在期間で客を満足させるというものだ。相手との短い時間の交流を大事にしないことは、ホテルで働く者として失格である。重役がこのような体たらくでは、このホテルは遅かれ早かれ潰れてしまう。
そう啖呵を切った。

面接は終わった。もうオオサキプラザホテルへの就職は叶いそうにない。

広場で落ち込んでいると、面接前にぶつかった男がまだそこにいた。そして、じっと純のことを見つめている。気味悪く思った純は慌てて立ち去るが、男はずっと追いかけてきた。慣れないヒールで転んだ拍子に男に追いつかれてしまった。

男は、純の顔をまじまじと見つめ、
「どうしてももう一度確かめたくて。でも、それがなんなのか、説明してもわかってもらえないと思う。」
などと、意味不明なことを言うばかりであった。

純の怒りは頂点に達した。
失礼な面接官に対する怒り、面接で自重することのできなかった自分自身への怒り。そこへ、この不気味な男への怒りが加わった。
今にも暴れだしそうだと言って、男に警告した。しかし、彼はなかなか立ち去ろうとしない。

焦れた純は自ら立ち去った。
純の背中に対して、男は
「あなたはそのままでいてください。ずっと、そのままでいてください。お願いします」
などと、ますます意味不明なことを言うのであった。

純は混乱した。

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NHK『純と愛』第1回

彼女に恨みは全くないのだけれど「げっそり痩せたオバケのQ太郎が宝塚歌劇の男役として登場したような感じだ」などといきなりdisってしまう当方が、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の第1回めの放送を見ましたよ。

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第1週「まほうのくに」

那覇に住む大学3年生の狩野純(夏菜)は、久しぶりに実家のある宮古島(Google mapsで場所を確認)に帰ってきた。
就職活動シーズンが始まる前に、純は自分の進路についてある決意をしていた。彼女は、自分の実家のホテルを継ごうと思っているのだ。

実家のホテル・サザンアイランドは、母方の祖父・真栄田弘治(平良進)が開いたホテルだ。10年前、大阪で仕事を失った父・善行(武田鉄矢)は逃げるように宮古島にやって来て、母・晴海(森下愛子)の実家に一家で世話になることになったのだ。
当時幼かった純(安養寺可蓮)は、初めてホテルを見た時のことをよく覚えている。まるで「魔法の国」だと思ったのだ。一歩建物に入ると、全てのものが輝いて見えた。どんなにふさぎ込んでやって来た宿泊客であっても、祖父のもてなしを受け、帰る頃には満面の笑みになっていた。それがまるで魔法のようで、純は大いなる憧れを抱いていたのだ。
ロビーの中央には昔ながらのジュークボックスがあり、それがひときわ光り輝いていた。

しかし、祖父が亡くなった後、父が跡を継ぐやホテルはすっかり様変わりしてしまった。
建物の中は薄暗く、辛気臭い。宿泊客はどこか憮然とした表情で帰って行く。それを送り出す父もまったくやる気がない。
その現状を知っている純であったが、目のあたりにすると、ますますやり切れない思いになった。憧れの「魔法の国」はもう存在していなかった。ジュークボックスはもう壊れて動かない。

純は祖父の言葉を思い出していた。
「人の運命なんて最初から決まっていない。人生の一つ一つの選択が運命になる。」
その言葉を胸に秘め、純は父に直談判するのだった。

純はホテルを継ぎたいと申し出た。「ホテル・サザンアイランド再生計画」という手書きのノートを携え、自分なりの経営方針を披露した。しかし、父・善行はノートを数ページめくっただけで、それを放り投げてしまった。
そもそも純と折り合いの悪い善行は、ホテルの経営がうまくいかないのは自分のせいではないと責任転嫁した。地元の連中が観光客へのもてなし方やインフラの整備を進めないのが原因であって、自分はそのわりを食っているだけだと言い訳した。今のやり方を変えるつもりは全くない様子だった。その上、ホテルは長男の正(速水もこみち)に継がせるつもりであり、純がその下で指示に従うなら雇ってやってもいいと居丈高に言った。

父と純のやり取りを、他の家族は聞こえないふりをするばかりだった。跡取りとして指名された兄・正は、積極的な意思は見せなかったが、他にすることもないので受け入れるという風だった。大学を2浪中の弟・剛(渡部秀)は自分の飯を食うのに熱心で、やり取りを全く聞いていなかった。
母は心配して成り行きを見守っていたが、表立って純を援助する立場にはなかった。

ついに純は喧嘩腰になった。
祖父の遺したホテルがダメになるのを見ていられない、やる気のない善行が全てをダメにしているのだとはっきりと言ってしまった。
その言葉に善行は激昂した。二度と家の敷居を跨ぐなと言い捨て、純を追い出してしまった。
失望した純は父に見切りをつけた。
「うちよりデカいホテルの社長になってやる」
と啖呵を切り、家を出ていった。

外まで追いかけてきた母・晴海(森下愛子)であったが、純を引き止めることはしなかった。そのかわり、自分の気持ちを代弁してくれたと感謝した。晴海も祖父の作り上げた「魔法の国」が消滅したことを苦々しく思っていたのだ。
母が同じ気持ちでいることがわかって安心したものの、純は悔しくてならなかった。半べそをかきながら、一度も振り返ることなく家を去った。そして、二度と宮古島には帰ってこないことを決意した。

そして半年が経った。
本格的に就職活動が始まり、純は大阪にいた。オオサキプラザホテルという大阪でも一二を争う大きなホテルの就職面接を受けに来たのだ。

会場に入ろうとした時、人ごみの中でよそ見をしながら歩いている男(風間俊介)とぶつかって、純は転んでしまった。

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