『オリヲン座からの招待状』は原作で十分だと思った。

映画『オリヲン座からの招待状』を先日見た。
映画を見る数日前には、浅田次郎の原作(『鉄道員』に収録)を読んでいた。

当然、映画と原作を比較してみてしまうわけで。

僕は、原作を読めば十分だと思う。
映画だと1,800円ほど払って2時間も拘束されるわけだが、原作は文庫で500円だし30分もあればサラリと読める。
コストパフォーマンスで比較すれば、明らかに原作だ。

ただし、コストパフォーマンス以外に映画版と原作で大きく異なる部分がある。

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『私は好奇心の強いゴッドファーザー』原田宗典

『私は好奇心の強いゴッドファーザー』は、原田宗典の映画にまつわるエッセイ集。
本書の中で紹介されている映画作品は、文末にあざとく amazon アフィリエイトのリンクを貼っておく。そちらを参照しつつ、興味があれば購入していただければと邪念を抱いている。

ていうか、リストにして分かったのだが、本書に紹介されている映画を僕は1本たりとも見ていない。
「私は好奇心の強い女」だの「自由の幻想」だの、(少なくとも僕は)ほとんどその名を見かけないような映画は仕方ないとしても、「エイリアン」だの「007/ロシアより愛をこめて」だの「ゴッドファーザー」だの、超有名映画まで見ていない自分をかなり恥じる。
見ていないどころか、あらすじも知らないことに気づき、自分の文化レベルの低さに辟易してしまう。

少しでも知識を吸収しようと、本書を熟読し、各映画について勉強しようと思った。
しかし、徒労に終わった。

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『休みの国』中島らも

今朝、amazonのお勧め商品を見ていたら、中島らもの『休みの国』が出ていた。
日めくり暦を模した真っ赤な表紙が妙にまぶしかった。

夕方、ふらっと本屋に入って、『休みの国』を探して、買った。

この本は、年に500日以上もあるという「○○の日」からいくつかピックアップして、中島らもがおもしろおかしくツッコミを入れるエッセイだ。
今数えてみたところ、53日が取り上げられている。
要するに、週刊誌かなにかの連載で、1年間続いたってことか。

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「誰も寝てはならぬ (7)」サライネス

本日発売。

相変わらずユル~い展開の「誰も寝てはならぬ」ですが、7巻はちょっと切ないお話が多い。
特に、ヤーマダ君の切ない話が2本。

まずは、「SS129 クワトロ切ない話」。
本屋で全く躾のなっていない子供を見つける。
母親も母親で、自分の子供をまともに注意する素振りもない。
どんな母親だよ、とその女性をよく見てみると別れた妻だった。
切ない。

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「猫語の教科書」ポール・ギャリコ

全ての猫、必読!

本書は、匿名の猫が世の子猫やのら猫たちに向かって、人間社会で生き抜く秘訣を記した貴重な手記。

あくまで、猫の猫による猫のための啓発書である。
そのため、タイトルは「猫語の教科書」となっているが、人間が読んだからといって猫と話ができるようになるわけではない。

原著名は “The Silent Miaow” (1964) となっている。
直訳すれば「声を出さないニャーオ」(この鳴き方の説明も本書の中でなされている)。
しかし、邦訳タイトルとしては「猫が人間を飼いならす方法」の方がしっくりくる内容だ。

のら猫が愛くるしさを振りまいて、如何にして人の家にもぐりこんで快適な生活を享受するかが、事細かに書かれている。
猫を飼い始めることに猛反対している夫をどのように手なずけるかとか、マズイ餌ばかり出す人間に美味いご飯を準備させるにはどうすればいいかとか、人間の作業を邪魔する(そして、自分の遊び相手にする)ための効果的な方法など、人間が知らなかった猫たちの知恵を垣間見ることができる。

あなたはもうきっと、この本を手引きに、人間の一家を乗っ取ったことと思います。あなたの家族は、結婚していようが、子供がいようが、独身男だろうが、キャリアウーマンだろうが、あなたに夢中で、あなたのことをほかに類を見ないすばらしい猫だと思っていることでしょう。猫の望みを何でもかなえてくれるばかりか、こちらの喜びそうなことを先まわりして探してくれさえするでしょう。あなたの生活は安定しているというわけです。

ポール・ギャリコ(灰島かり 訳)「猫語の教科書」 p.171

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「四畳半神話体系」森見登美彦

森見登美彦お得意の丸太町界隈を舞台に、大学生活の2年間を「実益のあることなど何一つしていない」 “私” がパラレルワールドに迷い込んでしまって難儀する話。

4章からなる作品群のいずれも全く同じ書き出しで始まる。
一部には「同じ話を何度も読ませるなんて詐欺だ。しかも、あちこちコピペの痕が見えまくり。金返せ」と憤る人々もいるかもしれない。
確かに、主人公がパラレルワールド・ネタに巻き込まれ、どれが本当の自分なのか分からなくなってしまうという題材は、ある意味、手垢がつきまくっていると言っても過言ではない。

しかし、僕はパラレルワールド・ネタが嫌いではない。
様式が決まっているからこそ、作り手の個性や構成の妙が際立つわけで、読み手としては作者の力量を楽しむことができるから。

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「パレード」川上弘美

川上弘美の名作「センセイの鞄」からのサブストーリー。

センセイとツキコさんが、ふたりで台所に立って、騒がしくそうめんを作っている。
偉そうに突っ込みを入れるセンセイと、ちょっぴり拗ねて見せるツキコ。
既にナニも勃たなくなってる年齢のセンセイと、とっくに薹が立ってしまっているらしいツキコなのだが、その”遅れてきた新婚生活”は、とてもゆったりとしていて愛くるしい。

しかし、本書の主題はふたりの後日談というよりも、ツキコが語る小学校時代の奇妙な昔話。
そして、その昔話の背後にある小さな罪の懺悔にフォーカスが当たっている。

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喫茶あるむ

あるむとぬいぐるみご存知、我が家のアイドル猫の名前はあるむです。
名前の由来は、当blogのタイトルから。猫が先ではなく、blog が先です。

あるむへのアメリカ土産として、Newport から弟猫が連れてこられました。
このぬいぐるみ猫の名前はまだないので、何か良い名前を思いついた人は教えてください。

さて、そんなうちのあるむですが、名前をつけた時によそにも同じ名前の猫ちゃんがいないかと思って、ぐぐってみたことがあります。
結局、少なくともグーグル先生の検索結果ではあるむという名前の猫は見つからなかったのですが、代わりに奈良市内に「喫茶あるむ」というお店があることを知りました。
あるむの飼い主として、いつか行こうかと思っていたのですが、結局そのままになって今日に至りました。

ところが今朝、りんちゃんのお母様であらせられる方から、以下のようなメールを頂いた。

昨日、奈良のこんな喫茶店に行ってきました。
もちろん店名に惹かれて。
いや、チーズケーキも大好きなんですけどね♪
http://www.foods.co.jp/cheese/tankentai/nara05.html

ぜひデートの時に行ってみてくださいね。

うぉ、あるむの飼い主たる当方より先に喫茶あるむに行くとは。
思いっきり悔しくなる、あるむの飼い主たる、俺。

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登美彦氏、抗議する。

ありがたいことに、5日ほど渡米なるものをさせていただいておりました。

その間、11日に行われたWBC世界フライ級タイトルマッチ 内藤大助 vs 亀田大毅 がいろいろと香ばしいことになっていたようで。
ボクシングそのものよりも、舌戦の泥沼の方が注目を集めているとか、いないとか。
ボクシングの試合では内藤の圧勝だったようですが、舌戦においても、口下手とはいえ内藤の”オトナの対応”が好感をもって受け入れられているようですね。

そんな中、さきほど帰宅して、大好きな作家であるところの森見登美彦のブログ “この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ“でも、プチ Amazon 場外乱闘が発生していることを知る。

だが、『奈良県民が京都を舞台に描くなど故郷の奈良山へ戻ればいいものを』というのはどういうことだ。この一節は『奈良県民が京都を舞台に描くなど(生意気である。したがって)故郷の奈良山へ戻ればいいものを』ということではないか。奈良に生まれた人間は、奈良から出てくるなということか。腹の内でそう思っている人もいるだろうが、しかし、よくもまあ!よくもまあ!
登美彦氏、抗議する。

(リンク先削除済み)

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