NHK『ゲゲゲの女房』第150回

 今日はスケジュール的に朝がキツキツで相当焦っている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第150回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 藍子(青谷優衣)は教員生活に行き詰り、泣きながら寝込んでいる。
 茂(向井理)は、学校を辞めさせてプロダクションを手伝わせると言い出す。泣くほど嫌なら、辞めれば良いとまで言う。そんな茂の態度に、布美枝(松下奈緒)は腹を立てた。

 日曜日。藍子は布美枝に学校を辞めたいと相談した。自分に子供の気持ちがわかると考えていたのは思い上がりだと自覚し、教師をやる資格はないというのが理由だ。教師をやめて、茂のプロダクションを手伝うと言い出した。それが茂の希望に沿う道であると。
 布美枝は好きにすればいいと言い、藍子を突き放す。布美枝自身も、藍子が教師になることにはあまり賛成ではなく、早く結婚してプロダクションを手伝ってくれれば良いと思っていたと打ち明けた。
 ただし、布美枝は、藍子が茂を言い訳に自分の努力を放棄することには感心しないという。自分の進むべき道を、もう少しじっくり考えろと告げた。

 その頃、喜子(荒井萌)は茂の仕事場に顔を出した。好きなことを仕事にする意義を茂に尋ねた。茂の回答を聞いた喜子は、その言葉をそっくり藍子に聞かせてやって欲しいと頼んだ。茂に励まされることが、何よりのクスリになることを喜子は知っているのだ(自分がプロダクションを手伝って大失敗したときの経験)。

 少し考えた末、茂は藍子の部屋を訪れた。ゲーテを引用し、うまくいかないときは好機の到来を待て、努力に迷いは付き物だ、などと書かれた張り紙を渡した。
 人は好きなことをやるのが一番だか、それが必ずうまく行くという保証はない。茂も漫画の人気が出ないときには苦労した。しかし、諦めなかった結果、今の自分がある。好きなことと楽なことは違う。どんなに苦しめられても、やりたくて仕方ないと思うことが、自分にとって本当に好きなことだ。それを見つけるまでは、逃げるべきではないと話してやった。

 翌月曜日。茂に励まされた藍子は、自分を奮い立たせ、前向きに学校へと出かけていった。肩の力を抜いて子供たちと向き合い、もう一度頑張ってみると布美枝に話して出かけていった。

 喜子は、短大卒業後の進路として、プロダクションの手伝いをしたいと布美枝に相談した。家族への配慮などではなく、茂の漫画が大好きだから、心の底から手伝いたいのだという。

 昭和60年10月。鬼太郎の3度目のテレビアニメが始まった。鬼太郎の連載も始まり、プロダクションは往年の活気を取り戻した。

 アニメの初回放送日、源兵衛(大杉漣)が脳梗塞であるという電話連絡が入った。

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NHK『ゲゲゲの女房』第149回

 昨日、平宗の柿の葉寿司の海老を食べたせいか、ものすごく元気なアレで目の覚めた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第149回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 プロダクションのマネージメントを一手に引き受けている光男(永岡佑)がぎっくり腰で出社できなくなった。締め切り直前で、編集者との打ち合わせや取材など、その日は忙しく茂(向井理)らは困ってしまった。布美枝(松下奈緒)も町内会の清掃活動に出かけなければならず、手伝うことができない。
 そこで、喜子(荒井萌)が短大を休んで手伝いをすると言い出した。

 しかし、喜子は失敗ばかりだった。電話の応対の言葉遣いが幼稚、茶をこぼして打ち合わせ資料を台無しにする、菅井(柄本佑)に急に声をかけて手元を狂わせる、画材の購入数を間違える、など。
 簡単な仕事もできず、自分には一つもいいところがないと喜子は激しく落ち込んでしまった。

 そんな喜子を、布美枝と絹代(竹下景子)は慰めてやった。絹代は喜子の良い所として、人を押しのけない優しさのある点と、自分を飾らない自然体である点とをあげた。半分は方便であることを見抜きつつも、喜子は随分と気分が晴れた。
 その時、茂がやって来た。茂は古い怪奇短編を再版する予定なのだが、そのリストを見た喜子が勝手に収録作品案を作った。それがよくできていたと言って、茂は喜子を褒めた。茂がすっかり忘れていた作品を喜子が追加したのだ。茂の作品を知り尽くした喜子のことを、茂は心の底から頼もしいと思っているのだ。
 茂が人を褒めることは珍しく、喜子はそのおかげで持ち前の明るさをすっかり取り戻した。

 藍子(青谷優衣)は夜遅くまでかかって、学級通信を準備していた。教員生活が楽しく、家での残業もまったく苦ではなかった。学級通信には「エースくん」というコーナーがあり、勉強やスポーツで目立たない子の良い点を取り上げて紹介している。取り上げられた子供はクラスの中で友達ができるなど、うまくいっていると言う。
 早く教員を辞めてくれれば良いと思っている茂は少々面白くない様子を示したが、布美枝は仕事に一生懸命取り組む藍子のことを頼もしく思い、娘の成長を嬉しく思うのだった。

 しかし、5月の終り頃から藍子の様子がおかしくなった。元気なく出勤する姿を布美枝は何度か見かけるようになった。
 そして、6月半ばの雨の日。藍子は傘もささずにびしょ濡れで帰って来た。玄関で出迎える布美枝の前で、藍子は泣き崩れてしまった。

 話を聞いてみると、学級通信の「エースくん」が問題になっているという。子供たちは紹介されるように頑張るのだが、誰を載せるかは藍子の一存である。それが子供たちに不公平感を抱かせてしまった。もっとひどいことには、「エースくん」に取り上げられた子供が藍子からえこ贔屓されているという理由で仲間はずれになってしまった。

 藍子が良かれと思ってやったことが、仇となったかたちである。子供たちばかりではなく、親たちからも新米教師の軽率な行動だと槍玉に挙げられているという。同僚の教員たちからも冷ややかに応じられてしまい、孤立無援になってしまっているという。
 布美枝は、藍子のトラブルを茂に全て報告した。

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広島・西条で美酒鍋を食べた

 学会関係で広島方面に来ています。宿は東広島市の西条。
 西条には日本酒の蔵元がたくさんあり、酒飲みには夢の街らしい(参考: 日本の西条酒)。僕は日本酒は全然わからないけれど、たとえば賀茂鶴という銘柄くらいは聞いたことがある。

 西条には、名物料理として「美酒鍋」というのがあるそうだ。
 美酒鍋と書いて「びしょなべ」と読む。元々は、蔵の働き手のまかない料理だったらしい。多様な肉・野菜を塩コショウだけで味付けしたシンプルな鍋。最大の特徴は、水やだし汁は一切使わないこと。そのかわりに、日本酒をドボドボ入れて、それで煮立てる。

美酒鍋

 野菜がクタクタになるまでよく煮こんであり、酒に浸っているのに味はあさっりさっぱり。始めて食べるものですが、どこか懐かしい味がしました。
 蔵人の賄い食であることは先に書きましたが、彼らの舌がバカになって利酒に影響が出ないように、シンプルな味付けにしてあるそうです。それでも味わい深く、美味しく、スイスイと食べてしまいました。

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NHK『ゲゲゲの女房』第148回

 NHKオンデマンドで『ちりとてちん』の配信が始まり、同ドラマで取り上げられた落語を一流の噺家がやっている映像も一緒にリストされていると知った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第148回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 夕食後、怒りの収まらない藍子(青谷優衣)は部屋に閉じこもってしまった。
 喜子(荒井萌)によれば、藍子の頑固なところや物事に一生懸命打ち込むところは、茂(向井理)にそっくりだという。特に、夜遅くまで机に向かう背中の様子が父の生き写しだという。藍子が陰ながら努力していることは、布美枝(松下奈緒)もきちんと把握していなかった。どうして彼女に目を向けて、頑張りを褒めてやれなかったのだろうと、反省するのだった。

 布美枝の母・ミヤコ(古手川祐子)は、絹代(竹下景子)の部屋で茶を飲んでいた。絹代は、修平(風間杜夫)が居なくなった寂しさをとつとつと話した。心臓の悪い自分の方が先に死ぬと思い、修平に口うるさく家事を仕込んだ。好きな芝居や映画の時間を制限してやらせたのに、皮肉な結果になったことを後悔している。
 そして何よりも絹代に取って予想外だったことは、親が勝手に決めた結婚相手であり、赤の他人であったはずの修平への愛着だという。血を分けた息子や孫でさえ、自分の空虚さを埋めることはできないと言って、涙を流すのだった。

 藍子を怒らせた張本人である茂(向井理)と源兵衛(大杉漣)は、居間で碁を打っていた。古いふたりの約束が、ついに果たされたのだ。
 楽しく興じながらも、ふたりは藍子への対処を碁の戦術になぞらえている。たとえば、良いと思って打った手が裏目に出ることもあるのだ、といった具合に。

 碁のルールは何もわからないミヤコがそばにやってきて、碁に口出しをした。源兵衛が悪手を打って待ったをかけた瞬間に、無理に押すととうまく行くはずのものも失敗してしまう、と告げるのだった。茂と源兵衛はその一言にはっとさせられるのだった。藍子のことは無理強いするのではなく、もう少し様子をみるということになった。

 翌日、源兵衛らが安来に帰る直前、茂以外の家族とともに深大寺へ出かけた。
 ミヤコは、藍子に虎の話をした。言い伝えによると、虎は自分の子供の為に1日に千里の道を往復するという。源兵衛もその虎のように、娘たちのことを心配していると説明した。布美枝や長女・暁子(飯沼千恵子)に会いたいと思っても、虎のようには長い道を行き来することができない。だから、遠くはなれていても安心できるように、立派な夫を見つけてやったのだ。そして、その目論見はうまくいって、布美枝も暁子も不自由なく幸せに暮らしている。
 きっと茂も同じ気持なのだろう、とミヤコは付け足した。意地を張って謝ることのできない源兵衛に代わって、ミヤコが藍子に謝った。

 藍子は、前夜のミヤコの一言のことも喜子から聞いていた。さらに今日のミヤコの言葉もあって、完全に元の明るさを取り戻した。源兵衛に対する怒りもすっかり消え、また遊びに来て欲しいと言って、安来に送り出すのだった。
 藍子と喜子は、ミヤコの控えめな人心掌握術にすっかり感心してしまった。そして、その性格は布美枝にも引き継がれていると言って、ふたりで母のことを褒めたり、からかったりするのだった。

 昭和60年4月。
 藍子は念願の教師になることができた。3年生のクラス担任で、熱意を持って楽しく仕事に打ち込んでいる。幸いにして、赴任校は実家から通える場所であり、全てが丸く収まっていた。
 喜子は短大1年生になった。彼女は短大に進学したものの、自分が本当にやりたいことをまだ見つけられずにいた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第147回

 女の子をデート(デート?デートなのか!?)に誘ったところ、その日は用事が入っていると言われ、よく聞けば1週間ほど前にデート(デート?デートなのか!?)に誘った張本人がまさしく僕であると指摘された当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第147回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 布美枝の父・源兵衛(大杉漣)は、藍子(青谷優衣)が教師になると聞いて大喜びする。しかし、布美枝(松下奈緒)から、茂(向井理)が反対している様子を聞くと心配になった。さらに、藍子が遠方に赴任し家を出る可能性があると聞いて、困惑するのだった。

 夜、源兵衛は茂の仕事場を訪れた。源兵衛は家父長権の重要さを茂に確認する。そして、藍子の将来も茂が導いてやらねばならないと念押しした。
 源兵衛は、藍子が教師になることには大賛成だが、親の目の届かない赴任地で勝手に結婚相手を見つけるのは容認できないと言う。そこで、赴任前に見合いをして婚約者だけは決めておくのが良いという。村井家と近いところに住む、次男か三男を相手とし、結婚後は自家に取り込むという展望まで入れ知恵した。
 茂はすぐにその意見に従うことを決めてしまった。

 翌日、茂は早速にも兄嫁(愛華みれ)を呼び出し、彼女の顔の広さを見込んで、見合いの世話をしてくれるよう頼んだ。はじめて話を聞いた布美枝は慌てて止めようとする。しかし、茂と兄嫁はすっかりその気になっており、布美枝も渋々ながら巻き込まれてしまった。もちろん、藍子には秘密裏に進められた。

 ところが2日後、あっさりと藍子の知るところとなった。まさか本人が知らないとは思わなかった茂の兄(大倉孝二)が、うっかりと秘密を漏らしてしまったのだ。
 藍子は、布美枝や茂に激しく抗議し、家族の雰囲気は最悪になってしまった。

 そのまま夕食になり、源兵衛と喜子(荒井萌)が場を明るくしようと試みるがうまくいかない。
 ついに、藍子はみんなの前で、勝手に見合いを進められていたことへの不快感を顕にした。それを聞いた源兵衛は、茂に計画を持ちかけたのは自分であると白状した。藍子は、源兵衛に対しても敵意を剥き出すこととなった。

 ちょうどそこへ、三男・光男(永岡佑)のところへ身を寄せていた絹代(竹下景子)が帰ってきた。

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NHK『ゲゲゲの女房』第146回

 本日のゲゲ絵: Togetterの数々を見て、スゴイなぁ、エライなぁ、と心から感激した当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第146回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 戌井(梶原善)の出版社から漫画文庫がすでに40冊出た。もちろん、他の会社からの出版点数も増えている。茂(向井理)の仕事は順調だ。一方で、プロダクションとして著作権の管理を強化していかねばならないと思うのだった。

 茂の兄(大倉孝二)の家に身を寄せていた絹代(竹下景子)が予定より早く帰って来た。一家とそりが合わなかったのだという。子供たちが大きな音で音楽を聞いているのを近所迷惑だと言っていきなり電源を抜いたり、態度の悪い飲食店店員に対して大騒ぎしたりしたという。絹代の怒りはスジが通っているものの、兄一家では持て余してしまったのだ。
 義姉(愛華みれ)は、絹代と20年近くも一緒に暮らしている布美枝(松下奈緒)は立派だと褒めた。家のことはうまくいって当たり前で、褒められることのほとんどない布美枝は嬉しくなった。最近は、茂と藍子(青谷優衣)の対立で頭を痛めていることもあり、ますます嬉しいことだった。

 絹代は、老いてますます盛んだ。国内旅行はもう飽きたので、ヨーロッパに行きたいと言い出した。無理難題に頭を抱える息子たちだったが、父・修平(風間杜夫)にはろくなことをしてやれなかったので、その分も加えて絹代を孝行してやろうと話し合うのだった。
 その矢先、絹代は突然、三男・光男(永岡佑)の家に行くと言い出して、みんなは呆れてしまうも、従うしかなかった。

 その頃、藍子は街の喫茶店で幼なじみの智美(水崎綾女)に進路のことを相談していた。智美によれば、学校嫌いだった藍子が教師になることが意外だという。藍子は成績が悪かったし、茂のことで同級生からからかわれていたからだ。
 藍子は、自分がそういう境遇だったからこそ、学校に馴染めない子供の立場に立てる教師になれるのだと、自分の目論見を話す。それに、家を出て教師になりたい理由は、水木しげるの娘だと言われない生活をしたいのだということを打ち明ける。

 なんと、その喫茶店には浦木(杉浦太陽)がいて、ふたりの話をすっかり聞いていた。
 浦木によれば、茂は昔からガキ大将気質であったという。今でも自分がガキ大将で、家族やアシスタントたちを子分だとみなしているフシがある。自分がみんなを従わせて率いることが、みんなの幸せであると信じているのだと説明した。周りは押し付けがましいと思うが、本人はそのことが分かっていないのだ、と。
 それまで浦木のことを胡散臭い男だと思っていた藍子だが、今日の話はもっともで、心から納得出来るものだと思った。

 浦木が修平の弔問に行くというので、藍子と一緒に家へ向かった。
 その途中、布美枝の両親

家に向かう途中、布美枝の両親(大杉漣古手川祐子)に出くわした。母・ミヤコはリウマチで膝が痛み、うずくまっていた。初対面にも関わらず、浦木は源兵衛に命じられて、彼女を家まで背負って行くことになった。自分勝手な源兵衛の態度に、浦木は辟易しながらも、逆らうことはできなかった。

 布美枝は、予定よりも早い両親の到着に驚く。源兵衛は一刻も早く修平を弔いたくて、居ても立ってもいられなくなり、急遽予定を早めたという。
 突然の来訪に驚く布美枝であったが、どこか嬉しそうでもあった。

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NHK『ゲゲゲの女房』第145回

 喜子役の荒井萌駿台予備校の今年のキャンペーンガールだと知って、劇中の喜子も無事に高校卒業後の進路が決まればいいのにと思った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第145回めの放送を見ましたよ。

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「独立宣言」

 修平(風間杜夫)が死んでから一月が経った。直後はしょんぼりしていた絹代(竹下景子)だが、最近は元気を取り戻し、長男夫婦の所へ身を寄せ彼らを振り回しているようだ。
 布美枝(松下奈緒)の両親からハガキが届いた。弔問のために調布へ出てくるつもりだという。布美枝の母(古手川祐子)は古風な女性で、生涯で安来を離れたことがほとんど無い。そんな彼女が旅行に出て、会いに来てくれるということで、布美枝も嬉しくなった。

 藍子(青谷優衣)の元へ教員採用の合格通知が届いた。
 有頂天で両親に報告する藍子であったが、茂(向井理)は目の前で心底がっかりと残念がるのだった。茂は、藍子を水木プロの職員にしたいと考えており、藍子が教員になることには猛反対なのだ。どうせ合格するはずがないとタカをくくっていたのだが、アテがはずれてしまった。
 茂の気持ちがわかる布美枝も、思わず藍子の合格に困ったような顔をした。それが決め手となって、藍子は完全にいじけてしまった。後から帰宅した喜子(荒井萌)も意外だという声をあげた。家族の誰からも祝福してもらえず、藍子の怒りには拍車がかかった。

 茂は、藍子を水木プロの跡取りにしたいのだ。現在のマネージャーの光男(永岡佑)は茂と2つしか年が変わらない。若い人材として藍子を活用したいと考えていた。
 表向きはそういうことになっていたが、布美枝には茂の本音も分かっていた。茂は娘が離れていくのを寂しがっているのだ。いつまでも娘を手元に置いておきたいという男親の心境もあるのだ。

 茂は、藍子に合格辞退させることを思いついた。そのことを布美枝に話しているところを藍子に聞かれてしまった。自分の人生を父に勝手に左右されそうになっていることに、藍子は猛反発した。茂は、常々「好きなことをして生きるのが一番」と言っているのに、どうして藍子がそうすることを許してくれないのだと、くってかかるのだった。

 布美枝は、藍子が一人になったところを見計らい、取り成しに行った。茂の本心は藍子と離れたくないという事だと教え、時間をかけてゆっくりと平和に話し合うよう勧める。
 しかし、藍子は聞く耳を持たない。昔から茂に夢を潰されてばかりだという。漫画家になりたいと言えば、地味な点描ばかりイジメのようにやらされた。アニメーターになりたいと言えば、アニメ会社が倒産した話を聞かされた。父に進路の相談はしたくないという。

 それに、自分は父の元を離れたいのだと訴える。地元にいては、自分は常に「水木しげるの娘」と見られる。周りから特別視されるような生活は送りたくないのだという。「村井藍子」という独立した個人として生きてみたいのだという。それが、家を離れて教師として自立したい理由なのだ。

 布美枝は、茂の気持ちも藍子の気持ちもよくわかった。それだけに、ますますどうしていいかわからなくなってしまった。

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『微視的(ちまちま)お宝鑑定団』を読んだ

 僕の大マイブームは東海林さだおだ。

 僕はメディアマーカーというサイトで読書記録を付けている。
 そのサイトで、自分がどれだけ東海林さだおを読んでいるか調べてみたところ、今日までに24冊だった(2010年9月11日現在)。
 本格的に読み始めたのが昨年の10月なので、平均すれば月に2冊ずつのペースだ(記録を見ると2008年になぜか1冊読んでいるが、これは無視する)。
 これだけ読んでいるのにまだ飽きることはないし、まだ読んでない本もある。基本的に彼のエッセイしか読んでいない。しかし、漫画(たとえば、毎日新聞の『アサッテ君』など)まで含めて全部読もうと思ったら、その営みがいつ終わるのかよくわからない。

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NHK『ゲゲゲの女房』第144回

 おかげさまで食あたりの件は、お粥をたっぷりと食べたり、コーラを少し飲んだり、散髪に行ったりする程度には回復してきた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第144回めの放送を見ましたよ。

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「人生は活動写真のように」

 少し具合の良い修平(風間杜夫)は、布美枝(松下奈緒)と話をしている。
 修平のおじは、絵かきをしていたが30歳くらいのころパリで夭折した。奇妙なことに、彼が亡くなった日に茂(向井理)が生まれた。修平は、茂こそおじの生まれ変わりではないかと考えている。絵の才能を引き継いだ証拠に、今は立派な漫画家になっていると言うのだった。

 布美枝が茶の用意をしている間に、修平は再び寝入ってしまった。

 修平は夢を見ていた。広い映画館の中に、自分ひとりだけが座っている。「第三丸の爆発」という題の無声映画が始まったのだが、活動弁士は若い頃の修平自身であった。映画の主人公も修平で、前半は自分自身の半生記であった。東京の大学に通ったのに映画や演劇に熱中したこと、境港に映画館を作ったこと、いつ書き上がるともしれないシナリオを書き続けている姿などが映し出された。いよいよ「第三丸の爆発」の本編が始まろうかというとき、”The end” という字幕と共に映画は終わってしまった。
 修平があっけに取られていると、場内が騒がしくなった。さっきまで無人だったはずの映画館は、いつの間にか満席になっており、割れんばかりの拍手が送られていた。見渡すと、修平の両親、パリで亡くなったおじ、旧知の活動弁士・一学(鈴木綜馬)など、古くに死に別れた人々ばかりがそこにいた。

 「なんだ、もう終わりか。あー、面白かったなぁ」
そうつぶやくと、修平は映画館の座席で眠り込んでしまった。

 数日後、修平は眠ったまま息を引き取った。

 修平の亡骸を前に、絹代(松下奈緒)が最初にしたことは隠していた香水の瓶を持ってくることだった。修平はこの香りが好きだったと言いながら、絹代は遺体にたっぷりと香水を振りかけた。家族はその行動の理由がわからなかった。しかし、その香水は、修平が川西一学の孫娘(入山法子)と出かける時にも使っていたもので、真相を知らなかった絹代が嫉妬して隠してしまっていたものだった。好きなだけ使わせてやれば良かったと、謝りながら何度も何度も香水を振りかけた。

 初七日の法要も終わった頃、絹代は茂に修平の形見を見せた。修平がシナリオ執筆に使用していた万年筆を茂に持っているよう命じた。その万年筆は、パリで亡くなった絵描きのおじからもらったものだという。修平はそのペンで傑作シナリをを書くと息巻いており、絹代も期待するところがあったのに、結局できなかったと寂しそうに言った。
 修平は茂がおじの生まれ変わりだと言っていたが、絹代は口では否定していた。しかし、絹代もそれはあながち間違いでもないと思うところもある。生まれ変わりの茂こそが、おじのペンを持つにふさわしいと考えているのだ。村井家の芸術の血筋を、おじ、修平を経て茂に伝えていくことこそ、修平の願いであると言うのだった。

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