初めて松本清張を読んだ。
彼の作品としては、映画化された『砂の器』だけはDVDで見たことがあった。胸を打つ作品だったし、見て良かったと思うし、名作だと信じる。ただし、未見の人にオススメするほどかと言われると、少々口ごもる。昭和中期が舞台で現代とは生活風俗が異なるし、疾病差別という重いテーマが背景にあるので、真剣に見ようと思ったらずいぶんと肩がこるのだ。
このように、僕の唯一の「松本清張・経験」は『砂の器』に集約されており、松本清張は肩こりの固まりみたいな存在としてしか認識されていなかった。だから、有名作家であることは知っていながら、これまで一度も彼の作品は読んだことがなかった。
ところが昨日、単なる暇つぶしのつもりで松本清張の『点と線』の文庫版を購入した。なんで松本清張を選んだのかはよく分からない。それでも、『点と線』をチョイスした理由は、彼の代表作であるという事を知っていたからだ。その上、「アリバイ崩し」もしくは「時刻表トリック」というミステリ・ジャンルにおいて、金字塔と目されていることも知っていたからだ。ミステリ方面に全く詳しくない当方ではあるが、一般常識としてこの作品は読んでおく必要があるかもしれないと、なんとなく思った次第なのだ。
僕は本を読むスピードの早くない人間だが、ほんの2時間くらいで読み終えられた。初めの数パラグラフは、少々堅苦しい文体に面食らいもしたが、ペースを掴んでくるとスルスルと読める。